
平和精機工業株式会社は、1951年にカメラ用三脚の製造・販売を行う会社として創業された。同社の商品は「Libec(リーベック)」ブランドとして世界各国で高い支持を得ている。どのような背景と戦略がこの成功を支えているのか。そして、グローバル市場で競争に挑む同社の未来展望とは何か。平和精機工業の成長を牽引してきた代表取締役社長の山口宏一氏に、その秘訣について詳しく話をうかがった。
「世界を股にかける」真の海外人材
ーーまずは社長のこれまでの経歴をお聞かせください。
山口宏一:
父の仕事の関係で、12歳までニュージーランド、イスラエルやシンガポールなど、海外で暮らしていました。また、アメリカにも1年間留学した経験もあり、将来はグローバル企業の営業職として、世界を舞台に活躍することを目指していました。
大学卒業後は、日本電産株式会社(現・ニデック株式会社)に入社しましたが、この企業を選んだ理由は、単にグローバル企業であるからだけではなく、創業者の永守重信氏の本を読み、その経営理念に深く共感したからです。永守氏が提唱する「知的ハードワーキング」という考え方は、戦略的な頭脳を使いつつ、PDCAサイクルの「Do」の部分では泥臭い努力も惜しまないという精神を意味します。
この「知性」と「体育会系の精神」を両立させる生き方に衝撃を受け、私もこの方針に従って挑戦していきたいと思ったのです。実際、社風は肌に合い、好きな会社で、社内での将来も開けていると感じましたね。
しかし、3年間勤めた頃、祖父が創業した弊社から「海外営業を担当してほしい」と声がかかりました。学業を支援してくれた祖父に恩返しをしたいという思いもあり、転職を決意し入社しました。そして、2018年に私が会社を継ぐことになったのです。
ーー山口社長が大切にしている考えはどのようなものでしょうか?
山口宏一:
私は「会社は利益を生み出す機械である」という考え方を大切にしています。会社である以上、利益を生み出すことは必須ですし、それは従業員の生活を支えるだけでなく、利益に応じた適切な納税を通じて社会に貢献する責任があるからです。
また、QCD(品質・コスト・納期)を重視し、コストを抑え、高品質な製品を提供することにエネルギーを注いでいます。こうした理念の象徴が、2023年に完成した新社屋です。この社屋は、理念を具現化し、企業の強みを最大限に活かせるよう、効率的な動線を考慮して設計されました。
日本ならではの方法での「コスパ」実現

ーー事業内容と強みを教えてください。
山口宏一:
弊社は「Libec」ブランドを中心に、ビデオカメラ用三脚などの放送・映像機器を開発・製造しています。製品の価格帯は数万円から100万円以上と幅広く、特定の主力製品を定めず、多様なニーズに対応が可能です。主な顧客は映像機器販売店などで、BtoB営業が中心です。
開発は日本国内で行い、製造は国内工場と台湾にある100%子会社の工場の2か所で行っています。売上構成は国内3割、海外7割を占め、エンドユーザーは世界100か国以上に及ぶなど、小規模ながらもグローバルメーカーとしての地位を築いています。
弊社の強みは、ブランド力と開発から販売まで自社で一貫して行う体制です。「Libec」ブランドは特にコストパフォーマンスの高さで定評があり、欧州ブランドの製品と同等の品質を提供しつつ、価格を抑えています。また、日本ならではのきめ細かなアフターサービス体制も整えており、これが他社との差別化ポイントとなっています。
100周年をゴールに置いて、道を見つける

ーー今後、どのような分野に特に力を入れていく予定ですか?
山口宏一:
経営幹部育成・採用強化・製品開発の3つに注力していく計画です。私が社長に就任した当初、会社は赤字体質であり、組織の脆弱性も明らかでした。そのため、改革を進めるにはある程度トップダウンで理想的な姿を示し、それを文化として浸透させる必要がありました。その結果、2021年には過去最高収益を達成し、企業文化も安定してきました。今後は、価値観を共有できる中間管理職を育成し、組織全体のガバナンスを強化していきます。
さらに、中途採用も積極的に行っており、毎月のように新しい人材が加わっています。採用にあたっては人材の多様性を重視しており、年齢、経験、性別を問わず、幅広い背景を持つ人々に入社してもらいたいと考えています。求める人物像は、キャリアの全体像や取り組みたい目標を持ち、情熱をもって仕事に取り組める人ですね。
ーー近年、競争が激化している映像機器業界において、新製品開発にはどのような視点で取り組んでいますか?
山口宏一:
現在、中国メーカーが台頭しており、技術力の向上と低コストの製造を武器に世界市場で存在感を高めている状況です。これらの競合に対抗するためには、品質や納期に対して地道に努力を重ね、優れた製品を提供することが基本となるでしょう。さらにコストパフォーマンスにおいても競争をリードすることが不可欠です。加えて、映像業界では自動化が進み、電子機構を取り入れた製品が登場しています。
電子製品の開発とコストパフォーマンスの向上を両立する基礎研究に力を入れることで、こうした時代の流れに対応し、顧客ニーズに応える製品を継続的に生み出していきたいと考えています。
ーー最後に、会社として掲げている長期的な目標について教えていただけますか?
山口宏一:
創業100周年を迎えることが目標です。この目標は社内でも「合言葉」のように共有されています。弊社が100周年を迎えるのは2051年ですが、そのとき、会社が存続し続け、社員が誇りに思える企業であることをゴールに据えています。この長期的な目標を掲げることで、その実現に向けた道筋が明確になり、日々の取り組みの指針となっているのです。
編集後記
山口社長が語る「本当に好きだった」という日本電産での経験は、同氏のキャリアと経営哲学の原点であるように思えた。日本電産で学んだ経営哲学を糧に、今や国際舞台で平和精機工業株式会社を率いる姿は「世界を股にかける人材」としての成長そのものだ。同氏の豊富な海外経験と情熱が、同社を次なる飛躍へと導くだろう。100年企業を目指す中で、どのような新しい価値が生まれるのか。その挑戦の先に見える未来に、心から期待している。

山口宏一/1987年東京都生まれ、2歳から12歳まで海外で過ごし、創価大学在学中に米国へ留学。新卒で日本電産株式会社(現:ニデック株式会社)に入社。2014年、平和精機工業株式会社入社し、2018年、同社代表取締役社長に就任。