※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

京都にある「東映太秦映画村」を運営している株式会社東映京都スタジオ。1975年から続く、時代劇のテーマパークである同施設は、インバウンドの受け入れを強化しながら新しいカルチャーを構築し続けている。

同社は、2025年に来る、東映太秦映画村の開業50周年を受けて、全面リニューアルの計画を立て、日本文化の魅力を発信する場所への改革を目指している。同社がこれから進もうとしている将来像について、代表取締役社長の鎌田裕也氏に聞いた。

京都を代表する時代劇テーマパーク「東映太秦映画村」とは

ーーまずは貴社が運営している「東映太秦映画村」の概要と独自の強みを教えてください。

鎌田裕也:
東映太秦映画村は、時代劇という日本の文化を象徴するエンターテインメントを基盤としたテーマパークです。時代劇の世界を肌で感じられるのが最大の特徴で、ここにしかない非日常の景色や経験を楽しめます。

具体的には、着物や時代劇衣装を身にまとって、侍やお姫様になりきる体験や、忍者屋敷やお化け屋敷などのアトラクション、本格的なちゃんばらショーや、弊社の俳優と一緒に巡るロケ地ガイドツアーなどがあります。

また、東映京都撮影所に隣接しており、映画製作という背景を活かし、職人やアーティストの技術を披露する場としても活用しています。衣装制作や木工細工、発泡スチロールでのセット制作など、映画製作の現場を実感できるのは、ここならではの魅力です。

開業50周年のリニューアルに向けて、社長として果たすべき役割に全力を注ぐ

ーー鎌田社長の経歴をお聞かせください。

鎌田裕也:
私は1991年に東映に入社し、今年で34年目になります。入社当初は分譲住宅や分譲マンションといった不動産部門に携わっていましたが、入社から約15年経った頃から、東映太秦映画村の不動産管理というポジションで関わるようになり、次第に経営方針やアトラクションの企画などにも関与するようになりました。

東映京都スタジオの代表取締役社長に就任したのは、コロナ禍が落ち着いた2022年のことです。コロナ禍明けという期待感とプレッシャーが入り混じった中で「何としてでも数字を上げなければならない」という気持ちでスタートを切りました。

今は、2025年の開業50周年を見据えたリニューアルに向けた舵取りを進めています。「東映太秦映画村を通じて、東映が持つ文化資産を次世代に繋げる」という、大きなミッションを達成するために、日々努力を続けています。

ーー会社を運営するにあたって、鎌田社長が大切にしていることは何ですか?

鎌田裕也:
「地域と共に歩みながら観光資源を再構築する」というスタンスを大切にしています。1975年〜1980年代頃、東映太秦映画村は、年間約260万人もの来場者を記録するほどの人気スポットでした。しかし、近年はさまざまな観光施設ができたこともあり、観光客の分散化によって、その数は100万人以下まで減少しています。これは弊社だけでなく、太秦地区全体の不利益だと考えています。

この現状を改善するために、弊社が掲げているのは「太秦地区全体の活性化」です。東映太秦映画村をかつてのような地域の活力源として復活させるための活動に取り組んでいます。

弊社が目指すのは、地域の歴史や文化を守りつつ、新たな観光資源としての価値を創出する存在です。嵐山や北部の世界遺産エリアとの連携を強化しながら、西の京都観光の拠点としての役割を担えるように、努力を続けていく所存です。

東映太秦映画村に新たな価値を付与するため、大胆な変革を計画

ーーリニューアル後は、どのような分野に力を入れて取り組んでいますか?

鎌田裕也:
飲食や物販、そして、文化体験の提供に力を入れています。特に飲食は力を入れている分野で、リニューアルを機に、地元の名店や協力的な飲食店と連携した「ここでしか味わえない本格的な京都の味」を用意する予定です。

また物販の面では、大人の女性がファッションとして楽しめるような洗練されたデザインの商品を企画しています。過去の時代劇衣装や伝統的なデザインを現代風にアレンジした紙袋やパッケージなども展開予定です。

東映太秦映画村は、ただ見るだけの場所ではなく、実際に体験しながら日本の文化や映画製作の魅力を感じられる場です。これをさらに深化させ、リニューアル後には、訪れるだけで「日本の良さ」を堪能できる場所として、新しい価値を提供したいと考えています。

そのためにも、今後は「イマーシブ(没入体験)」に力を入れたいですね。来場者が物語の登場人物になったような感覚を味わえるアトラクションを積極的に考案し、時代劇そのものに入り込んだような体験を提供できればと思っています。

ーー今後の採用方針についてお聞かせください。

鎌田裕也:
採用は今後さらに力を入れていきたい分野です。30代〜40代の層が少ない現状を踏まえ、新卒採用を継続するとともに、中途採用も随時行っていきます。特に求めているのが、海外からの来場者に対応できる語学力を持つ人材です。インバウンド需要を確実に獲得していくためにも、これは欠かせないスキルだといえるでしょう。

そして、応募いただく大前提として、「新しく生まれ変わる東映太秦映画村を共に作り上げたい」という熱意をぜひ持っていてほしいです。ここにしかない空間を活かして、一緒にワクワクする体験を生み出していきましょう。

東映太秦映画村の「日本文化を世界へ発信する拠点」への成長を目指して

ーー5年後や10年後、東映太秦映画村をどのような施設に成長させたいですか?

鎌田裕也:
現在の来場者はファミリー層が中心ですが、あまり来てもらえていない20代・30代の女性や、海外のお客様にも繰り返し楽しんでいただけるような施設へ変えていきたいと思っています。特に女性層は重要なターゲットで、将来的にはリピーターになってもらい、夜にもぶらりと立ち寄ってもらえるような、日常的な使い方をしてもらいたいと考えています。

また、西の京都観光の拠点になることも重要な課題です。弊社が目指す最終的なビジョンである「日本文化を世界へ発信する拠点」を実現するためにも、重要なマイルストーンとなるでしょう。

そしてゆくゆくは宿泊施設も整備し、衣食住すべてを網羅した、総合的な文化発信拠点に成長できたらと思っています。訪れるすべての方にとって特別な体験を提供できる場所になるために、東映太秦映画村独自の魅力を磨き続けていきます。

編集後記

東映太秦映画村が50周年を迎えるにあたり、日本文化を軸に、地域や職人と共に新しい価値を創出する会社へと変革を遂げようとしている同社。西京都の観光拠点化を目指すという大きな取り組みは、東映京都スタジオが単なるテーマパーク運営会社にとどまらない存在であることを示すものだ。リニューアルオープン後、東映太秦映画村がどのような形で私たちを驚かせてくれるのか、今から楽しみでならない。

鎌田裕也/1968年宮城県仙台市生まれ、中央大学法学部法律学科卒。1991年に東映株式会社に入社し、34年目を向かえる。2023年に同社常務取締役不動産事業本部長に就任。2022年に株式会社東映京都スタジオ 代表取締役社長に就任。2025年に50周年を向かえる東映太秦映画村のリニューアルに注力している。