※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

山梨県に本社を置くリバーエレテック株式会社は、自動車やスマートフォンなど、あらゆる電子機器を動かすために必要な「水晶デバイス」を開発・製造する会社だ。

創業以来、「軽薄短小」という概念のもと、世界最小の水晶デバイスの開発にも成功し、小型市場では世界トップクラスのシェアを誇る。常に業界をリードする同社の代表取締役社長の萩原義久氏に、会社の歩みと今後の展望について聞いた。

開発現場からトップへ。技術畑出身の社長が描く水晶デバイスの未来

ーー社長就任までの経緯をお聞かせください。

萩原義久:
大学では工業化学を学び、大学を卒業後に弊社に入社しました。当時の社名は富士産業株式会社で、主に抵抗器を扱う会社でした。しかし、私が入社した1982年頃から抵抗器の需要は縮小し、代わりに水晶デバイスの需要が伸びました。それにともなって、会社の主力事業も水晶デバイスへとシフトしたのです。

私自身も当初は抵抗器の部署でしたが、入社から5年ほどで水晶デバイス部門へ異動し、20年近く開発業務に携わりました。その後、製造を担う子会社「青森リバーテクノ株式会社」に出向して、技術習得とマネジメントの経験を積み、2009年に同社の社長に就任したのです。2017年に本社に戻ってからは、役員として経営に参画し、2023年に代表取締役社長に就任しました。

ーー水晶デバイスの特徴と、開発における技術的課題を教えていただけますか。

萩原義久:
水晶を薄く切り、電気を流すと振動が発生する性質を利用し、この振動の周波数を特定の値に調整して電子部品として活用できるようにしたものが水晶デバイスです。水晶デバイスの歴史は、小型化の歴史といっても過言ではありません。特に部品が多い高度な機器では各部品の小型化が機器全体の小型化にもつながります。

水晶デバイスの開発において重要な技術は、大きく分けて3つあります。水晶片そのものの精密な加工技術、水晶部分を真空状態に封入する技術、周辺の微細加工技術です。弊社では、他社と協力しながら、半導体製造で培われた技術も積極的に活用して、小型化開発を進めているのです。

独創的な社風が生む競争力

ーー貴社の社風について教えてください。

萩原義久:
弊社は1949年に、現在の本社所在地である山梨県韮崎市で創業しました。田畑が広がる小さな町で「新しいことに挑戦しながら、現金収入を得られる仕事をしよう」と、志を同じくする人々が集まったことが始まりです。地方ならではの強い一体感と、新しいことに挑戦する独創性を重んじる気風は、今も受け継がれています。

社内ではトップと現場の距離が近く、役職に関係なく誰もが自由に意見を言える環境があり、「とにかくやってみよう」「まず挑戦してみよう」という精神が根付いています。

この文化のもと、ミドル層や現場のスタッフからも独創的なアイデアが次々と生まれ、それが技術力の向上につながり、これまでに数十件もの特許を取得してきました。創業以来受け継がれるこのような社風と、それを支える従業員こそが、弊社の最大の財産だと考えています。

高周波数化で新たな市場創出へ

ーー今後の事業計画についてどのようにお考えですか?

萩原義久:
水晶デバイスには、材料となる水晶のカット方法によっていくつかの種類があり、それぞれ発生する振動が異なります。現在の主力はその中でもメガヘルツ帯の振動を発生する「ATカット」製品とキロヘルツ帯の振動を発する「音叉型」製品です。

しかし今後は、自社で開発した、300メガヘルツ以上の高周波数を発する「KoTカット(コーティーカット)」を新たな柱として成長させるべく、さらなる製品開発に注力する計画を進めています。

事業は30年ごとに大きな転換期を迎えるといわれますが、弊社も水晶デバイスを主力にしてから約30年ほどの節目を超えたところです。これまでの小型化追求から、高速かつ大容量通信に対応する高周波数化への、移行期に差し掛かっていると感じています。

ーー新たな製品を事業の柱に据えるにあたり、どのような取り組みを予定していますか?

萩原義久:
高周波数製品は、データセンターのような大容量データ通信が求められる環境での活用が期待されます。従来の水晶デバイスの顧客層とは異なる新たな市場です。

つまり、「KoTカット」の高周波数帯製品がもたらす革新的な性能は、これまで水晶デバイスの導入を考えてこなかった企業にも、新たな可能性をもたらすと考えています。今後は、こうした新たなターゲット層に向けて積極的にアプローチし、「KoTカット」を前提とした機器設計を提案しながら、市場創出を目指したいですね。

弊社の高周波数帯技術にはすでに、アメリカの企業や航空宇宙関連分野からの問い合わせがあり、需要は十分にあると確信しています。これからは大容量通信の需要に応え、さらなる高周波数化と製造プロセスの効率化に向けた研究開発を推進する一方で、従来型製品の小型化にも引き続き注力していきます。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイス市場の需要にも対応していきたいです。

世界市場を切り拓くための人材戦略

ーー人材戦略と求める人材像についてお聞かせください。

萩原義久:
営業人材の確保と育成を特に強化したいと考えています。現在、売上の約8割を占める海外市場で、グローバルな視点で営業活動を展開できる人材が不可欠です。近年、海外製品との価格競争が激化する中、弊社の強みである製品の高品質さや技術的優位性を訴求できる、より高度なコミュニケーション力を備えた営業スタイルが重要になっています。

そうした営業戦略を推進しつつ、社員が働きやすい環境を整え、独創的な開発を継続できる企業文化を維持していきたいですね。弊社は、与えられた課題をこなすだけでなく、自ら新しい挑戦を提案し、実行に移していく姿勢を重視しており、そうした積極性を持つ方にとって大いに活躍できる場になると思います。

編集後記

開発の細部にまで精通し、自らの言葉で語る萩原義久社長の姿勢に、技術者としての誇りと経営者としての使命感がにじんでいる。単なる部品メーカーではなく、独創性と挑戦精神を武器に市場を切り拓く企業であることが明確に伝わってきた。高周波数化という新たな挑戦が、業界にどのような変革をもたらすのか。リバーエレテック株式会社の未来が、これまで以上に楽しみだ。

萩原義久/1956年、山梨県甲府市出身。千葉大学工学部工業化学科卒業後、1982年に富士産業株式会社(現:リバーエレテック株式会社)入社。開発を手掛ける商品開発部門に20年在籍した後、技術部長として製造子会社の青森リバーテクノ株式会社に出向。2009年同社代表取締役社長に就任。本社に戻り2017年常務取締役、2019年専務取締役を経て、2023年、代表取締役社長に就任。