
昭和建設工業株式会社は、1949年に熊本県天草市で創業し、2025年で76周年を迎えた老舗企業だ。総合建設業として幅広い事業を展開し、建築工事から不動産管理まで手がけている。同社の5代目で、代表取締役の佐々木淳一氏に、これまでの経緯や今後の展望などについて話をうかがった。
4代目の急逝により、入社1年で社長に
ーー昭和建設工業株式会社の代表取締役に就任された経緯を教えてください。
佐々木淳一:
私は大学院を修了したあと、キリンビール株式会社(後に協和キリン株式会社に転籍)に長年勤めていました。故郷の天草市に帰るきっかけは、父からの「そろそろ地元に帰ってきたらどうだ」という一言でした。正直、迷いもありましたが、地元に貢献したいという思いが強まり、帰郷を決意しました。その後、家族会議を経て昭和建設工業株式会社に入社することとなりました。
建設業界での経験はなかったため、当時の社長であった叔父のもとで仕事を学びながら3年ほどかけて会社の代表として必要なスキルを習得する予定でした。しかし、入社直前に叔父が癌を患っていることが判明し、余命宣告通り1年後に叔父が他界。結果として、入社からわずか1年で、十分な引き継ぎもないまま代表取締役に就任することとなりました。
ーー代表取締役に就任してから、苦労したことはありますか。
佐々木淳一:
弊社に長く勤めている社員からどう思われるかを気にしたり、建設業界についてほとんど知識がない状態だったりと、不安要素は多くありました。社長業務についても十分に理解しないまま就任したため、戸惑うことは少なくありませんでした。
しかし、叔父は生前、「昭和建設工業を100年企業にしたい」と常々語っていました。その言葉を胸に、あと二十数年で何をすべきかを考え、一つずつ実行に移してきました。
100年企業を目指すための戦略は「人脈形成」と「採用」

ーー具体的にはどのような取り組みを行ったのでしょうか。
佐々木淳一:
まずは事業拡大を見据え、「人脈形成」と「採用」の2つに取り組みました。人脈形成について私は建設業界の知識も経験も不足していたため、まずできることから始めようと考え、勉強会の参加を軸に人脈形成に取り組むことにしました。
具体的には、あまくさ未来創造スクールへの参加、天草経済開発同友会への入会、熊本イノベーションベース(KUIB)への参加などを通じて学び直しながら、人とのつながりを広げていきました。新たな取引先を探す前にまずは人脈を築くことが近道だと考え、積極的に行動したのです。
採用について、弊社が100年企業を迎えるまでには、あと20年以上あります。その間に、現在の社員の多くが退職することが予想されるため、新たな人材を採用・育成することが不可欠だと考えました。この「採用・育成」は、私が代表に就任して以来、最も注力している分野です。
また、熊本県天草市をはじめとした地方では、以前から「高校卒業後に進学や都市部での就職のために地元を離れる」という傾向が強くあります。私は、弊社の成長だけでなく、これまでお世話になってきた地元への地域貢献の観点からも、雇用を生むことで地方創生の一助となれないかと考えるようにもなりました。
そこで現在は、高校新卒者はもちろん、一度地元を離れて進学・就職している方、親御さんの介護のために早期退職をされた方、さらには熊本・天草に魅力を感じる方のUIJターン(※)先にもなれるようにSNSなどを活用した広報活動にも力を入れています。
(※)UIJターン:Uターン・Iターン・Jターンの総称で、多くの場合、大都市圏から地方への移住を指す。
オーナー様から好評のマンション事業。意欲ある方を採用し、共に成長していきたい
ーー貴社の事業について教えてください。
佐々木淳一:
弊社の強みの一つに公共工事があります。主に熊本県や天草市の案件を多数手がけており、学校や道の駅、最近では「御所浦恐竜の島博物館」の建築など多くの実績を積んできました。
また、弊社は「ユーミーマンション」というフランチャイズ事業に参画しており、マンション建設を検討されているオーナー様に対し資産形成のご提案を行っております。具体的には、土地をお持ちの方には資産活用のご提案を、土地取得から資産形成をお考えの方にはプランニングを行い、その後の設計、建築、賃貸管理、アフターフォローまでを一貫して提供しています。
不動産会社・建設会社・賃貸会社の役割を弊社1社で完結できる点に魅力を感じてくださるオーナー様も多く、これまでに78棟を建築してきました。
ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
佐々木淳一:
まずは、ユーミーマンションの案件をさらに増やしたいと考えています。弊社では管理やアフターフォローまで一貫して対応しているため、高稼働率を強みとして打ち出していきたいと思います。
実際に、弊社が管理しているユーミーマンションの入居率は98%に達しており、これは他のマンションと比較しても非常に高い水準です。今後も、しっかりと管理に責任を持ち、新規のお客様の獲得はもちろん、現在のオーナー様からのリピートやご紹介につなげていきます。
また、弊社は天草市のほかに宇城市にも拠点を構えており、工事現場はさらに広範囲にわたります。社員の働きやすさを考慮すると、天草からの出張に頼るのではなく、各エリアに通いやすい人材を採用し、それぞれの現場を担当してもらうのが最適だと考えています。
100周年は「みんなで、笑顔で」迎えたい。そして、100年を超え、その先の未来も一緒に築いていきたいと思っています。これから経営理念・事業計画をさらに整えていく予定ですので、意見を出し合いながら共に成長できる仲間を求めています。
編集後記
70年以上の歴史を持つ昭和建設工業株式会社。佐々木社長は100周年を見据え、フラットな視線で同社に必要な改革に次々と着手している。事業について、人材について、そして未来について。同社だけでなく熊本県や天草市を活性化することまで考える佐々木氏が率いる同社は、これからますます成長していくことだろう。

佐々木淳一/1974年熊本県生まれ。熊本大学大学院修了後、キリンビール株式会社に入社し、医薬情報担当者として従事。2022年に昭和建設工業株式会社へ入社。2023年、先代の急逝を受け同社代表取締役に就任。