
女性向けの全身脱毛サロン「Rin Rin」と、男性向けの脱毛・ヒゲ脱毛サロン「REGULUS ZERO(レグルスゼロ)」を運営する株式会社リンリン。東海地方を中心とし、関東や近畿にRin Rinは46店舗、REGULUS ZEROは8店舗を展開している。
また、株式会社リッシュプラスは、サロンで施術に使われている脱毛機器「VERTEX(ウェルテクス)」の開発と販売を行っている。泊剛史氏は、2024年にこの2社の代表取締役に就任した。
広告に頼らず集客につなげる秘訣や、美容業界=低賃金・長時間労働のイメージを変える労働環境の整備などについて、泊氏にうかがった。
脱毛サロンと美容機器メーカーの経営者になるまでの経緯
ーーまず泊社長のご経歴についてお聞かせください。
泊剛史:
海外にある日系企業や外資系コンサルティングファームで、経営戦略の立案やプロジェクトマネジメントに携わってきました。こうして経営に関わる仕事はしていたものの、最終的な判断を下すのは私ではなく経営者です。
そこから次第に自分で意思決定をする立場になりたいと思い、経営者を目指すようになりました。そのタイミングで、eコマース事業を行う日本とドイツの共同出資会社から声がかかり、社長に就任したのです。
そこでは約3年半代表を務め、創業時から売上を5倍に伸ばすことができました。そして次のステップとして、以前から興味があった地方創生、特に地方企業の活性化に携わりたいと思うようになったのです。
ちょうどその頃に、東海地方を中心に脱毛サロンを展開するリンリンの親会社から事業継承の話があり、美容機器メーカーのリッシュプラスと兼任で代表に就任しました。
口コミによる集客で大幅なコストカットを実現。高品質なサービスを低価格で提供

ーー貴社の事業内容について教えていただけますか。
泊剛史:
株式会社リンリンは、女性向けの全身脱毛サロン「Rin Rin」と、男性向けの脱毛・ヒゲ脱毛サロン「REGULUS ZERO」の運営会社です。株式会社リッシュプラスでは、脱毛機器「VERTEX」の企画・開発、販売を行っています。
VERTEXは、レーザーを効果的に照射でき、照射面をマイナス8度まで冷やすため、肌への負担を軽減できるのが特徴です。脱毛機器でありながら、フェイシャルケアとして使用できるのが大きなメリットですね。
また、ドクターズ・スキンケア商品「Soye’ux(ソワユー)」の開発と販売も行っています。Soye’uxは天然成分を配合しており、お肌の悩みに合わせて医師監修のもと商品展開しているのがポイントです。なお、美容機器と化粧品は、外部への販売も行っています。
ーー他社との差別化ポイントをお聞かせください。
泊剛史:
弊社の特徴は、広告に頼らないビジネスモデルを構築している点ですね。多くの美容サロンでは、集客のために多額のマーケティング費用を投じています。その結果、広告費にコストがかかり過ぎてしまい、自転車操業に陥っている事業所が少なくありません。
一方で弊社は、新規のお客様の多くが既存のお客様の紹介によるものです。そのため、マーケティング費用をかけることなく集客ができ、利益の確保につながっています。
実際に平均顧客満足度は4.8と高く、今年度の第1四半期の売上高は、すでに前年を上回っています。また、全身のメンテナンスができる美容機器の開発や、オリジナル化粧品の外販など、新しい取り組みを行っていく予定です。このように、常に進化し続けることで他社との差別化を図っています。
業界トップ3になるための経営戦略と労働環境の改善
ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
泊剛史:
現在10〜11位のところから、5年後を目途にまずは業界トップ3に入ることを目指しています。そのためには、単なる脱毛サロンではなく、フェイシャルケアやコスメの販売など、トータルビューティーを叶える場所にしたいですね。自社開発コスメや海外から仕入れたコスメを、インフルエンサーマーケティングでの直販、百貨店などでの店舗展開を行い、物販にも力をいれようと構想を練っているところです。
弊社はサービス業なので、お客様に良いサービスを提供するためには、従業員が精神的にも安定した良い状態でいることが必要です。そのため、従業員の満足度を高め、働きやすい職場づくりに努めていきたいと考えています。
美容業界はブラックな労働環境というイメージを払拭するために、本社でデジタル化を積極的に進め、残業の削減を徹底しています。また、店舗でも顧客カルテの電子化を進め、業務の効率化を進めています。
それに合わせ、人事評価制度の見直しも行っているところです。自分がどのレベルなのか、次のステップに進むには何が必要かを可視化できる仕組みを整えています。主な評価項目は、売上目標の達成状況やスキル、マインドなどです。なお、マインド面の評価基準を明確にするため、ミッション・ビジョン・バリューの策定も進めています。
また、従業員のモチベーションアップのため、給与改定を行いました。「このスキルを伸ばせば昇格でき、これだけ給与が上がる」と明確にすることで、従業員のやる気を引き出していきたいですね。
スタッフのスキルの向上によりサービスの質を高め、顧客満足度の向上につなげたいと思っています。
さらに、Instagramのフォロワー数を1万人を達成した店舗にSNS賞を授与するなど、表彰制度の導入も検討しています。
「多くの人に社長になってもらいたい」に込めた思い
ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
泊剛史:
これからの日本を背負うみなさんには、社長業を経験してほしいと思っています。経営者は単に売上を追求するだけでなく、社員のモチベーション向上や組織づくりなどを考えなければいけません。
また、従業員に「この人についていこう」と思ってもらうために、人としての成長が求められます。そのため、自ずと人間性が磨かれるといったメリットがあります。
地方では後継者の不在が深刻な課題となっています。今こそ20代、30代の方が名乗りを上げ、事業を継承していってほしいですね。地域の活性化につながり、日本経済に良い影響を与えるため、キャリアの選択肢として考えてみてください。
編集後記
これまで数々の企業を渡り歩き、組織の中枢部で経営に直結する仕事に携わってきた泊社長。この豊富な経験を活かし、競合がひしめく美容業界でトップ企業となる夢を現実にすることだろう。共に働く仲間を大切にする株式会社リンリン・株式会社リッシュプラスは、お客様に高品質なサービスを提供し、さらなる成長を遂げていく。

泊剛史/1979年長崎県生まれ。大学卒業後、大手日系メーカー、外資系コンサルティングファーム、外資系事業会社などを経て、2021年日本企業と海外企業の共同出資会社の代表取締役に就任。2024年から美容機器・化粧品メーカーのリッシュプラスと美容エステサロンのリンリンの代表取締役に就任。