※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

HOMAG(ホマッグ)は、全世界で7,000人以上の従業員を抱え、グローバルシェア30%以上を誇る、木材加工機械業界のリーディングカンパニーだ。その日本法人であるホマッグジャパン株式会社は、国内を中心に木材加工ニーズに応える最先端のソリューションを提供している。

木材資源が豊富な日本において、同社はどのような役割を果たしているのか。代表取締役社長の鈴木氏に、会社の強みや将来像や可能性、日本の現状を世界の視点からどのように見ているかなどを聞いた。

語学力がきっかけでグローバル企業へ。社長を意識するようになったきっかけとは

ーー鈴木社長の経歴をお聞かせください。

鈴木直:
私は大学でドイツ語を専攻しており、卒業後は、そのスキルを活かして日系の商社に入社しました。そこではドイツ製の木工機械や金属加工機などを販売する際の通訳・翻訳を担当し、ホマッグの取引窓口も担当していました。

その後、ホマッグが日本の現地法人であるホマッグジャパンを立ち上げるタイミングでオファーをいただき、ホマッグへ移籍することになったのです。ホマッグに移ってからは、優秀な上司に恵まれたことで、機械を提供する者としての責任や、そのために製品技術や業界知識など、幅広い知識が大切なことなどを学びましたね。

社長という立場を意識するようになったのは、東日本大震災が起こった際に、工場から機械がすべて流されてしまったお客様の、工場復旧をお手伝いしたのがきっかけです。

私は困り果てるお客様に何かできないかと模索し、世界中の子会社に支援を求めるメールを送りました。すると、中国の子会社が機械を提供してくれることになり、無事、事業を再開できるようになったのです。

この出来事以降、私は、自分の行動の一つひとつが、人々の生活につながっていることを知り、会社を経営することの意義を考えるようになりました。その後、2024年に代表取締役社長就任しましたが、この道を歩んでこれたのも、震災時の経験から自分なりの判断軸が形づくられたからではないかと思っています。

大手企業だからこそ叶えられる、市場における影響力の大きさが強み

ーー貴社の事業概要と独自の強みをお聞かせください。

鈴木直:
ホマッグジャパンは、世界的な木材加工機械メーカーであるホマッググループの一員です。主軸事業は木工機械の製造・販売で、カラーボックスやシステムキッチン、学校や病院の家具など、多岐にわたる製品を製造するために、日本のあちこちで使われています。

その事業規模の大きさは、弊社の大きな強みにもなっています。木工機械メーカーは特定の製造工程に特化して機械をつくるのが一般的ですが、弊社は木材加工に関わるすべての工程をカバーできるので、総合力が高いメーカーとして顧客が抱える多くのニーズに対応できます。

さらに、弊社の機械には必ずパソコンが搭載されているため、トラブルの際に迅速に対応できる安心感も兼ね備えています。コールセンターで即座に対応し、速やかにエンジニアを派遣できるというのは、メーカーを選ぶうえで大きなアドバンテージだといえるでしょう。

ーー貴社における仕事のやりがいや楽しさは、どのような部分にありますか?

鈴木直:
まず挙げられるのが、広範囲のものづくり業界を裏方から支える影響力の大きさです。弊社の製品は幅広い分野で使用されているため、自分が手掛けた機械やシステムを使ってつくられた製品を見る機会も多いです。実際に形となったものを目の当たりにすると、多くの人々の生活に貢献している実感が湧いてきます。

また、さまざまな技術や文化を持った社員が活躍できる環境も魅力の一つです。たとえば、弊社ではソフトウェア分野も手掛けているため、木工だけでなくデジタルの分野からも家具製作に携われます。さらに、グローバル企業ならではの、各国の文化に基づいた意見が飛び交うのも、アイデアを刺激される面白いポイントです。

私は、多様性とはより豊かなものづくりの可能性を広げる要素だと考えています。社員ひとり一人が持ち味を活かして、広い社会に貢献することができれば、それが会社全体のやりがいへとつながるのではないでしょうか。

日本のポテンシャル解き放つために、今、注力すべきこととは

ーー今後、どのようなテーマに注力していきたいとお考えですか?

鈴木直:
既存事業の強化と持続可能性の追及、さらには新たな市場の開拓が必要と考えており、それらを実現する場として、国内の住宅市場に注力するつもりです。

この分野は、弊社の製品の一つである、住宅構造材の製造機械を広げていくための将来性が高いと見込んでおり、国内メーカーへのアプローチを強化したいと考えています。

この分野では、震災復興住宅や公共建築といった急速に需要が高まる分野への対応も欠かせません。日本は災害が多いので、スムーズに機械を供給できる体制を整え、製造機械の分野から社会貢献に寄与できればと思っています。

また、国内で対応できるメーカーが減っており、木材の2次加工機械にも注目しています。この分野は、世界から日本の木材や家具が評価され始めている今がはじめ時です。将来的な需要の高まりを見込み、5〜10年計画で、製品の供給体制を整えていきます。

ーー鈴木社長が事業を通じて叶えたい「思い」を教えてください。

鈴木直:
私が日々強く感じているのが、日本のものづくりをより強く発信し、次世代へつなげていきたいという思いです。最近ではロボットやAIなどが注目されることが多いですが、日本にある豊富な木材資源に目を向けないのはもったいない話です。これらを世界へ届けられる仕組みさえ用意できれば、内包された可能性はもっと評価されることでしょう。

世界から日本を見てみると、日本は良い製品を持っているにもかかわらず、積極的に輸出を進めていないことが不思議に思えてきます。インバウンド需要の高まりが背を押してくれているとはいえ、認知度が不十分だと感じることも少なくありません。弊社で日本の製品に触れられる機会を増やすお手伝いができたらと思います。

編集後記

ホマッグジャパンの業務に向き合う姿勢は、製造機械メーカーという枠にとどまらず、持続可能性や日本の持つ可能性など、社会的な課題にも向けられている。中でも、鈴木社長の日本の木材資源が持つポテンシャルを活かせていないという発言は、強みを再認識すべきことを思い出させてくれる。今後、鈴木社長をリーダーに、同社が日本の木工業界を元気にしてくれるのではないか。そんな期待に胸が高まるのを感じた。

鈴木直/1974年宮城県生まれ。1997年商社に入社し、同社渉外部、営業部を経て1999年ドイツの取引先HOMAGの現地法人ホマッグジャパン株式会社を立ち上げる。2014年に同社営業部長、2021年に専務取締役、2024年に代表取締役社長に就任。日本輸入木工機械協会の活動にも注力している。