※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

2011年に設立された株式会社ハイブ。内装工事業者として、多様な店舗のデザイン・施工を手がけるほか、発酵をキーワードにした自社店舗「85[ハチゴウ]」を展開し、健康や環境に配慮したライフスタイルを提案している。代表取締役社長の嶋津和久氏に、起業した経緯や事業の特徴、今後の展望についてうかがった。

体調不良をきっかけに「自分のスタイルで働ける内装工事会社」を設立

ーー独立した経緯をお話しいただけますか?

嶋津和久:
デザインの専門学校を卒業し、株式会社ア・ファクトリーにて13年ほど店舗の内装業務に携わりました。計画的に独立したわけではなく、体調や家族との関係が崩れていく中で「なんのために仕事を続けるのか?」と、今後について考えるきっかけがありました。

ぬか漬けづくりを通して体調が改善したこともあり、退職後は恩師から誘われていた食育事業をやっていきたいと考えていました。しかし、2011年3月に発生した東日本大震災により、事業計画が頓挫してしまったのです。

非常に困っていたところ、お世話になっていたお客様から内装事業を始めるチャンスをいただきました。ありがたいお話ではありますが、同じ業界で独立するとなると、前職の社長にも相談しないわけにはいきません。当時の社長は「元社員が食べていけないのは辛い。ぜひチャレンジすると良い」と背中を押してくださり、晴れて内装工事会社の設立に至りました。

「理念」と「事業の強み」を形にした店舗展開

ーー現在の事業内容を教えてください。

嶋津和久:
内装事業として、店舗におけるデザイン・設計・施工のワンストップサービスを提供しているほか、自社店舗の開発・運営事業、建築現場の管理事業を展開しています。内装の実績としては、全国展開のウエディング施設やコスメ・アパレル、外資系ハイブランドなど、大手企業様の店舗を多数手がけてきました。

中でも、本国の規定に沿った店舗づくりが求められるインターナショナルブランドの案件では、スタッフの能力と対応力が高い評価を得ています。また、デザインコンペで案件を獲得できる「デザイン性の高さ」と、20数名という小規模体制ゆえの「機動力」も大きな強みに感じています。

現在、都心部に3店舗を展開中の「85[ハチゴウ]」は、環境や健康に優しい暮らしにまつわるモノ・コトを提案するライフスタイルショップで、弊社の大きな特徴といえます。

「85[ハチゴウ]」の目的は、「人を想い、自然を想い、豊かに健やかに共栄できる環境の創造」という企業理念の実現、店舗運営を通して培った運営ノウハウを適切に事業クライアントのお店づくりに活かすこと、魅力的なサービスとお客様との関係構築により見失われつつあるリアル店舗の価値創造、といった3つです。

ーー「85[ハチゴウ]」の利用者はどのような方が多いでしょうか?

嶋津和久:
ブランドを立ち上げるにあたって、最初に設定したターゲットは子育て世代の女性でした。ライフスタイルが変化するタイミングを考えた時に、生まれた子どもの成長を思って暮らしを変える「お母さん」が思い浮かんだのです。

店舗運営を始めてからは、ルクア大阪店は10代・20代、二子玉川ライズ店は30代・40代、COREDO室町テラス店は50代・60代というように、ロケーションによって利用者の年齢層が分かれていきました。

考えるペルソナ(顧客像)は「自立した女性」であり、お客様の9割強が女性です。従業員の中には「85のファンだから働きたい」と、入社してくれた主婦の方も多くいます。

「環境保全の大切さ」を広めながら企業の存在感をアピール

ーー人材育成や採用の方針もうかがえればと思います。

嶋津和久:
コロナ禍を経て、「あらゆる状況下でも必要とされる会社」を目指すようになりました。「熱意に勝る力なし」として、人材の「主体性」を育てることを意識しています。自分で考えてチャレンジしていく熱意やスタイルを持つ人が集まり、その挑戦を応援できる会社でありたいですね。

人材を獲得するためには、仕事そのものに魅力があるだけでなく、ワークライフバランスを保てる企業であることも大切です。働き方には改善の余地があるので、事務作業や現場管理のDXを進めていけば、あらゆるポジションで「場所を選ばない働き方」も実現できると思います。

ーー今後の展望をお聞かせください。

嶋津和久:
2023年に北海道中川町で食品加工施設を開設しました。手つかずの豊かな自然が近い中川町は、自然の力強さを感じる個性的な山菜が多く採れる場所でもあります。

Soup Stock Tokyoを展開している株式会社スマイルズ様と協力し、地元の恵みを生かした山菜ピクルスの開発を始めたことで地域に雇用も生んでまいります。

地球が生物にとって住みづらい場所になれば、企業として輝かしい未来づくりに貢献する意味もありません。企業の永続性・優位性を持ちながら、環境保全に貢献していくことが第一です。

サステナブルな活動やライフスタイル、日本ならではの食育・発酵食文化を広めるには、「大きな声で情報を届けられる存在」になる必要もあるでしょう。これからもコンセプトに沿ってブランドの価値を上げ、会社の存在感を大きくしていきたいと思います。

編集後記

内装事業や自社店舗・ブランドの運営において、多くの顧客とファンを獲得してきた株式会社ハイブ。多彩なデザインの中に企業の「芯」があるからこそ、モチーフやコンセプトが明確に伝わり、共感を生むのだろう。ハイブの声がより大きなものとなり、思いが伝わる先が増えれば、同志がさらに同志を呼んでくるはずだ。

嶋津和久/1976年生まれ。アーバンデザインカレッジを卒業後、株式会社ア・ファクトリーに入社し、店舗内装業務に13年間携わる。2011年に株式会社ハイブを設立し、取締役社長に就任。「自然との共栄」を理念に、店舗を軸とした複数事業を展開している。