※本ページ内の情報は2025年1月時点のものです。

2001年に設立された株式会社バウハウスデザイン。新築住宅の設計・施工からリフォーム、リノベーション、ガーデニング事業と幅広く手がけ、大手ハウスメーカーとは異なる魅力が支持されている。今回は、建築家によるデザインと高気密・高断熱の高性能省エネ住宅を融合させた新築住宅を提供している同社の代表取締役である東孝一氏に、創業の背景や事業の強み、今後の展望についてうかがった。

「クレームのない家を作る」ハウスメーカーのトップ営業を経て起業

ーー前職ではトップ営業として活躍されていたとうかがいました。

東 孝一:
三井系ハウスメーカーに勤め、150人近くいる営業担当の中で上位に入る成績をキープしていました。当時、仕事は教えてもらうのではなく、先輩の接客を「盗んで」覚えるという時代でした。私にとって一番の勉強方法は、「スキルの高い先輩の仕事を見て・聞いて」"盗んで"覚えることでした。もともとは、営業に向いているタイプではなかったため、新人の頃はいろいろな本を読むだけでなく、成績のいい先輩のセールスを現場で見聞きして覚えることに徹しました。

他社ハウスメーカーで常にトップセールスを誇る知人からは、「どんな商品であっても売る」という姿勢と「熱意に勝るものはない!」ということを教わりました。「明日から家じゃなくコップを売れ、と言われたらコップを売るのが営業の仕事」という知人の言葉は、経営者になった今でも力を与えてくれます。

ーー起業に至った経緯を教えてください。

東 孝一:
「クレームのない家を作りたい」という思いから独立しました。住宅産業において、建物の引き渡し後にクレームをいただくことはめずらしくありません。ハウスメーカー時代は、お客様に満足いただける完璧な建物を引き渡すつもりで営業を進める一方で、工事に着手してから図面の不整合による工事ミスや引き渡し後の対応ミスなど諸々の問題が起こるたびにやるせない気持ちになったことが度々ありました。

そこで、「クレームの無い家づくり」を実現するために退職し、欧米の資材や建築現場を視察して研究した結果、カナダからの輸入住宅の事業を始めることにしました。

カナダの住宅を建築ノウハウごと輸入。顧客トラブルを防ぐ「即応」の心得

ーー輸入住宅を始めたきっかけは何でしたか。

東 孝一:
独自に職人さんを探す過程で、カナダの住宅を見て回りました。そこで、カナダでは4~5人のカーペンター(大工)のみで1棟の建物を作っていることを知ったのです。日本では基礎工事に始まり、内装、外壁、電気・水道工事など、各専門業者が存在し、分離発注が基本です。

そこで、カナダのカーペンターを日本に呼び、基礎工事と上棟までを日本の職人さんが施工し、その後の工程は5人それぞれが複数の専門職種を持っているので、「今日は電気屋が来ないから天井を塞げない」といった滞りは一切なく、チームワークも優れているため、工期も比較的短縮できた上に色々なアイデアを出してより良い建物を引き渡すことができました。

しっかりと現地で面接したことにより、本当に真面目で熱心なチームに恵まれました。カナダと日本は気候が違うので、技術面も含めて彼らから教わったことはとても多かったですね。

ーー「クレームのない家づくり」も同時に実行されたのでしょうか?

東 孝一:
設計の勉強をしてから独立したので、当初は私が営業から設計、現場管理まで一貫して担っていました。お客様との打ち合わせで齟齬があればすぐに図面も訂正し現場に回しますので、引き渡し後にクレームをいただくことはほぼありません。日本の建築スタイルでは、クレームのない家を作ることはまず無理だったでしょう。

クレーム発生率0%は不可能でも、「いかにトラブルをなくすか」「お客様をお待たせしないか」を考えることが大切です。弊社では、引き渡し後のフォローやメンテナンスにおいても「即応」の体制が取れるシステムを構築しています。

気密・断熱性能を自社で実験。「ずっと住み続けたい」という人の思いを大切に

ーー事業の強みをお話しいただけますか。

東 孝一:
創業から25年にわたって、気密性能・断熱性能に特化した建物をつくり続けてきました。材質へのこだわりも強みであり、自分の目で見て納得できた会社の素材や建材だけをチョイスしています。

建物の気密性能は「C値」で表し、値が小さいほど気密性が高いと言えます。C値1.0㎠/㎡以下で「高気密」と謳う住宅も見かけますが、C値が1.0以下程度では、部屋の空気は50%程度しか換気がされません。弊社では「C値=0.3㎠/㎡以下」を基準として約束しています。ここ数年は、平均的なC値が0.1㎠/㎡台です。この数値が出せるのは熟練の職人による施工技術があるからこそ、なせる業です。

外壁に複数の穴を開ける必要がある工事では、より丁寧な施工をする為、電気工事技師は内製化しております。お客様から見えない場所にこそお金をかけて、いかに丁寧に施工するかが信頼を得るための一番のポイントだと考えております。

ーー気密・断熱性能については独自に研究されているのでしょうか?

東 孝一:
世の中にはさまざまなサッシや断熱材がありますが、私は人から勧められたというだけでは、採用しません。材料と共に重要なのが、施工する精度です。会社から近い場所に、築50年の中古住宅を実験用に購入し、新しい材料の施工工事の実験を繰り返しています。ここで試行錯誤を重ねて施工のノウハウにしています。大切なお客様の建物で初めての材料をテストすることはできません。実験用の建物ならば、失敗してもやり直しができます。実用化できるまでテストと検証を重ねていきます。

近年では、築後30年を経過した家も増えており「住んでいて寒い・暑い」という相談が増えてきました。弊社では新築の技術を応用して、古くなった家の気密・断熱性を高める「断熱リフォーム」も行っています。築後30年〜50年となると、白アリ被害や雨漏りでかなり傷んでいるケースもありますが、住人の方には愛着があります。建て直した方が安価なケースもありますが、弊社としては「愛着があるから残したい」というお客様の気持ちを大切に考え「住み始めた頃の快適さ」を取り戻していきたいのです。

ーー今後の展望をお聞かせください。

東 孝一:
私は「家のどこにいても快適な温度で暮らせる住まい」を提供したいと考え、特に寒い冬を乗り切るための断熱性能やヒートショックの防止を重視してきました。

これからは寒さ対策に加え、温暖化と異常気象で最高気温40度を容易に越えていくことも見据えた猛暑・酷暑の「夏場の対策」が住宅の大きな課題になると見ています。弊社で提供している高気密高断熱住宅は一年中、快適な室温を保てますが、このような建物が、世の中からより一層求められる時代になってくるのではないでしょうか。

国は2030年に太陽光発電によりエネルギー収支をゼロにする「ZEH(ゼッチ/ゼロ・エネルギー住宅)」を住宅の標準にする目標を掲げていますので、併せてお客様に提案していきたいと思います。

編集後記

大手ハウスメーカーのトップ営業に上りつめた経験を持つ東社長。自分の成績だけでなく、仕事が終わった後にまで目を向けた結果、「クレームのない家を作りたい」という思いが芽生えた。「安心して住める終の棲家」という願いを託す相手として、十分に信頼できる会社だと言える。

東 孝一/1950年、鹿児島県生まれ。三井系のハウスメーカーに入社し、注文住宅のトップ営業として活躍。各界著名人の住宅建築に携わる。独立後、2001年に株式会社バウハウスデザインを設立、代表取締役に就任。