※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

株式会社西日本ロジスティクスは、貨物運送からドライバー派遣、3PLサービスまで幅広く手がける企業だ。代表取締役社長の竹中領氏は、同社設立前は和食の板前として修業を重ねていた異色の経歴を持つ。竹中氏に会社設立の経緯や同社の強み、取り組みについてうかがった。

料理の道から飛び込んだ会社経営

ーー社長就任までの経緯をお聞かせください。

竹中領:
父親が運送業を営んでいたのですが、兄が後を継いでいたため、私は大学卒業後10年間、和食の板前として修行していました。しかし、自分のお店を出そうか考えていた矢先、兄が病気で亡くなってしまったのです。

大学時代にアルバイトでトラックに乗っていたことはありましたが、経営はまったくの素人です。会社を畳むこともできましたが、残された従業員の方々の今後を考えると、自分がここで踏ん張らないといけないと感じました。

そこで調理師の夢を諦め、事業承継や会社分割を経て、2009年に弊社を立ち上げたのです。当時は、人に対する思いが1番強い原動力だったと思います。

ーー社長就任後は、社内改革に取り組まれたそうですね。

竹中領:
当時は社員の意識の低さが課題となっていました。そこでまず、おざなりになっていた数字の把握をきっちりと行い、不採算部門を採算性の高い部門に変えていくなど、事業内容の整理を行いました。

弊社は24時間365日、お客様の物流を担える点が強みです。それゆえに、社員が一堂に会する機会がありません。ドライバー同士の横のつながりも薄くなりがちです。

そこで、1年に1回、全社員と社長面談を行うようにしました。社長面談では会社の現状や方向性、取り組んでいることを社員全員と共有します。イメージを共有すると、今まで非協力的だった従業員が非常に強力的になったりと、社員の意識が目に見えて変わりました。

社員の考え方が徐々に変わるにつれ、業績も右肩上がりになり、そこから一気に仕事が回り出しました。2009年の設立から2024年で16期目ですが、1期目から15期目まで、一度も売上が落ちたことはありません。

長所を伸ばし、信頼される人材を育てる企業風土

ーー貴社の強みについて教えてください。

竹中領:
弊社が取り扱う荷物は、温度管理が必要なものが全体の9割を占めているため、一定の温度を保って輸送することに関して、豊富なノウハウがあることが強みの一つです。また、自社の修理工場を持っていますので、常に整備されたトラックで安全安心な配送ができる点も強みですね。

さらに、突発的な依頼に対応できる機動力や、配車システムにも自信があります。たとえばコンビニなどで予想以上に売れた商品があると、前日に追加輸送の依頼が入ることが少なくありません。弊社は余裕を持ってトラックと人員を配置しているため、急な追加配送の依頼にも柔軟に対応可能です。

ーー採用にも力を入れているとお聞きしました。

竹中領:
はい。ただし、人手不足というよりも、増加する仕事量に対応できる社員が足りていない状態ですね。将来を見据えて、会社に長く在籍してくれる若い方や、女性の方にも来ていただきたいと考えています。

採用に際して、過剰にふるいにかけるようなことはしません。苦手分野があれば、弊社で教育して一緒に改善していけば良い話です。そういう意味では、社員の成長を長い目で見られる会社だと思います。

人の短所を長所にするのは難しいです。社員には、短所をゼロに近づけてフラットにし、その分、良いところを伸ばしていこうと伝えています。その方が成長速度も速いと思うのです。

そういった教育体制だからか、弊社の社員には前向きで明るい者が多く、既存の取引先の方からよくお褒めの言葉をいただきます。社員の仕事に対する姿勢や態度などが評価され、お客様から大きな仕事をいただくことも少なくありません。

運送を通して交通安全意識の向上にも注力

ーー「こどもミュージアムプロジェクト」について教えてください。

竹中領:
「こどもミュージアムプロジェクト」は、社会全体から交通事故をなくし、安全意識を高めるため、子どもたちの描いた絵をラッピングした車を走らせようというプロジェクトです。

子どもが交通安全を願って描いた絵がトラックの後ろに貼ってあると、煽る気も起きませんよね。また、ドライバーも、危険運転しようとは考えないでしょう。弊社からは15台のトラックが参加しており、プロジェクト全体では290社、980台以上の車がラッピング車として走っています。

このプロジェクトがもたらす効果や弊社のドライバーたち、描いてくれる子どもたちのことを考えると、非常にやる意義があると考えています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

竹中領:
数字の目標はもちろんありますが、それ以上に1人でも多くの社員を明るく、笑顔にしていきたいですね。そういった、数字以外の部分で価値を見出せる社風を築き上げることも目標です。その中で、拠点数を増やし配送エリアを広げていくことは必要ではないかと考えています。

また、現在は営業部門の創設や幹部の育成、管理部門の体制強化にも取り組んでいます。設立15年目を迎え、利益のためにがむしゃらに進んできた時期から、永続的な発展に必要な会社の根幹部分の整備を行う時期へ変わってきていると感じます。一気に変えられるものでもないので、時間をかけてじっくり進めていきたいですね。

編集後記

竹中社長からは、運送を通して社員や社会全体に良い影響を与えていこうという気持ちが感じられた。人々の生活に欠かせない物流を支えているのは、こうしたあたたかい心なのだろう。さらなる成長を続ける同社から目が離せない。

竹中領/1974年兵庫県生まれ。大阪産業大学経営学部卒。10年間和食の板前として修業したのち、親族の死をきっかけに運送業に転身。2009年西日本ロジスティクスを設立。