
パス株式会社は6つの子会社を持ち、7つの事業を展開している上場企業だ。2025年の創業35周年を機に、中期経営計画を策定した。100年存続する企業を目指し、「この地球(ほし)の未来を、笑顔で満たす。」をテーマとして次々に新しい事業を展開し、絶えずチャレンジと成長を続けている。同社代表取締役である高橋勇造氏に、事業の詳しい内容と今後の展望を聞いた。
百貨店の社員からベンチャー企業の経営者に転身
ーー社長に就任するまでの経緯についてお聞かせください。
高橋勇造:
百貨店の楽しそうな雰囲気に魅了され、新卒で丸広百貨店に就職し、主に商品の仕入れや販売企画を担当していました。
その後、30年来の友人から「会社を設立するから手伝ってくれないか」と誘いがあったのをきっかけに2016年に株式会社Dr.リボーンの創業メンバーに加わり、美容業界に転身しました。当時は営業も管理部門も全て自分で対応していましたね。さらに、インターネット通販に挑戦したいという思いが強くなり、株式会社リガードを設立しました。
そのタイミングで、知人から「パス株式会社を盛り上げていきたいから手伝ってくれないか」という打診があったのをきっかけに、2021年にパスの代表取締役に就任しました。
人々の2大テーマ「美容と健康」を軸に多角的な事業を展開

ーー貴社のコア事業について教えてください。
高橋勇造:
パス株式会社は持株会社であり、子会社がそれぞれ事業を行っており、弊社がグループ全体を統括しています。
弊社のコア事業は、コスメとビューティ&ウエルネスです。コスメ事業は、株式会社マードゥレクスが展開しています。地上波テレビがアナログからデジタルに移行するときに、女優さんが高画質のテレビでもきれいに見えるように、シミやシワを目立たなくする「カバー力(りょく)」に特化したベースメイク商品を開発しました。
ビューティ&ウエルネス事業は、株式会社ジヴァスタジオが展開する事業であり、ビューティ雑貨、ヘルスケアグッズの企画製造、販売・卸売をしています。最近、注力しているのが、微弱電気で刺激して筋肉を鍛えるEMSを活用した商品開発です。
最近では株式会社RMDCの展開する再生医療事業にも注力しています。目的は、人体の幹細胞を培養し、医療やスキンケアなど幅広い分野に応用することです。実際にRMDCとマードゥレクスが共同でスキンケア商品の開発を進めています。
最先端分野にもチャレンジし、地球にも美と健康を
ーー特に注力している事業は何でしょうか。
高橋勇造:
地球環境保護を目的としたサステナブル事業です。「藻類培養」と「バイオマス発電」という2つの軸で展開しています。藻類培養においては、株式会社アルヌールが手がけており、海の中の藻類を活用したCO2削減が目的です。CO2を吸収して増殖する藻類をさまざまな分野に応用することが、地球環境を保全する一つの切り札であると捉えています。その一例として、藻類である「カギケノリ」を飼料に混ぜることで、牛のゲップに含まれるメタンガスの軽減が実証されました。
バイオマス発電事業では、化石燃料を使わずに木のチップを利用することで、木質燃料の使用量を従来の1/10以下に削減可能な新技術を採用しています。
さらに、再生可能エネルギー分野の事業者に投資するインベストメント事業も積極的に展開したいと思っています。
ーー幅広い領域で事業を展開しているのですね。
高橋勇造:
一見すると美容と健康、地球環境保護という、まったく違う分野に取り組んでいるように見えるかもしれません。しかし、決してやみくもに手を広げているわけではありません。いずれの事業においても、ヒトと地球に美と健康をもたらしたいという思いのもと、すべてが密接に連動しているのです。
他にもインフルエンサーやライバーを育成して、自社または他社の商品・サービスをプロモーションするマーケット・エクスパンション事業も展開中です。さらに、先日、子会社化した株式会社三和製作所が展開するAI・テクノロジー事業では、AI画像処理技術とロボティクスを応用して、食品加工の自動化や原子力発電所の安全稼働への貢献を目指しています。
100年会社が存続するために。この5年、10年が勝負
ーー最後に、貴社の目指す最終ゴールを教えてください。
高橋勇造:
私たちがこの世にいなくなっても、100年後も会社が存続し、地球に住んでいるすべての方たちの「美と健康」に貢献し続けるということです。
弊社には「企業は社会の公器である」という基本的な経営理念があります。今回、中期経営計画を策定した際に、この理念をベースとして「100年先も、ヒトと地球に、美と健康を。」というミッションを新たに設けました。
この5年、10年の間が本当の勝負だと思っています。各事業の基盤を整えて、100年後にもグループが存続できるような強固な体制をつくっていきたいですね。
編集後記
非常に多くの事業を積極的に展開し、成長し続けているパス株式会社。コスメからバイオマス発電、AIまで、非常に手広い印象があるが、実は全ての事業がリンクすることで、「美と健康」の実現という共通のゴールへとつながっている。同社の各事業が、これからどのような展開でゴールに到達するのか、そして、今後どのような挑戦をするのか、期待が膨らむ。

高橋勇造/1970年生まれ。埼玉県出身。1988年、株式会社丸広百貨店入社。2016年、株式会社Dr.リボーン設立メンバーとして美容業界に転身。2018年、株式会社リガード代表取締役、2021年、パス株式会社の代表取締役に就任するとともに、同グループにおいて、2021年、株式会社アルヌール取締役、2022年、株式会社ジヴァスタジオ取締役、2023年、株式会社RMDC代表取締役、2024年には株式会社マードゥレクス代表取締役、株式会社RIDOS代表取締役に就任。