※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

株式会社プライムは1990年に設立され、今では関東圏で26店舗の調剤薬局チェーン「プライム薬局」を運営している。社長をはじめ職員全員が大切にしているのは、目の前の患者様から丁寧にヒアリングする姿勢だ。事業も順調に拡大しており、2025年には医療従事者向けのマッチングサービスを開始予定と、新規事業にも意欲的な企業である。

設立間もない株式会社プライムに入社し、代表取締役になった今でも社内外で「大久保さん」と親しみを込めて呼ばれる大久保氏に、これまでの経緯や、仕事をする上で大切にしている「ご縁」について、今後の展望などについてお話をうかがった。

アルバイトから始まった「医療業界」とのご縁

ーー株式会社プライムに入社されるまでのご経験について教えてください。

大久保和一:
大学時代、医療機器関係の会社でアルバイトを始めたのが私と医療業界とのご縁の始まりです。病院に出入りし、日々のご要望をうかがう中で、病院全体で必要なものについて少しずつ学んでいきました。当時に出会って、40年以上経った現在もお付き合いのある方がたくさんいらっしゃいます。

その後、アルバイトをしていた医療機器会社にそのまま入社しました。そこでさまざまなご要望をおうかがいする中で何度も話題にのぼったのが「開業したいんだけど、クリニックの作り方は分かる?」という医師の先生からのお話です。

当時の私は、医療機器の知識はあっても、開業に必要な不動産関連の知識はないという状態でした。当初は不動産会社に自分で聞きにいっていたのですが、そのうち「自分が不動産に関する知識をつければ、ワンストップでお悩みに応えられる」と思うようになり、不動産会社に転職したのです。

不動産会社では宅建の資格を取得し、主に事業用地の賃貸・売買について学びました。特に開業用の事業用地について学びたいと思って入社したので、良い経験ができたと思っています。

医師が開業するためには、まず土地を探さなければなりません。そして、希望の場所を見つけたら、持ち主である地主さんのところへ行って交渉する必要があります。私は元から人と話すことが好きでしたので、どんなことも楽しみながら取り組むことができました。

また、不動産会社に転職してからも「大久保さんに聞きたいことがあるんだけど……」と連絡をくださる先生もいらっしゃいました。私がどの会社にいるかではなく、私自身を頼ってご連絡をくださるのが嬉しかったですね。

ーー株式会社プライムに入社されたきっかけと、その後の歩みについて教えてください。

大久保和一:
創業間もないプライムから「これから薬局を作り、増やしていきたい」と声をかけられたことがきっかけです。医療機器と不動産の知識があるので、私の経験を活かせると思い入社しました。2003年に取締役になり、2017年に代表取締役になりましたが、今でも「相談しやすい人」であるために、社内外で「社長」ではなく「大久保さん」と呼んでもらっています。長い付き合いの方の中には「大久保ちゃん」と呼んでくれる人もいますね。

26店舗もの調剤薬局を運営する上で大切にしているのは「相手に寄り添う姿勢」

ーー社員の皆様にも「大久保さん」と呼ばれているのですね。

大久保和一:
「社長」というと、なんだか距離の遠い、偉い人のような気がしませんか?社員にとっても同じことで、「社長に相談する」というと高いハードルがあるように感じますが、「大久保さんに相談する」なら気軽に話しかけられる気がして、そうしてもらっています。それは社員が100名以上になった現在でも変わりませんし、今後も変えようと思っていません。

ーー「大久保さん」が、職員の方々に日々伝えていることについて教えてください。

大久保和一:
調剤薬局にいる職員にも、「話しかけやすい姿勢」を大切にするように伝えています。私たちは「はい、お薬です。1日3回飲んでください。以上です」と一方的に伝えるのではなく、目の前の方の表情を見て、よくお話を聞くことを大切にしています。そうすることで、身体の調子が悪くて薬局に来られた方も安心でき、「この人であれば話せる」「お薬について分からないことがあるから、聞いてみよう」と思えるでしょう。薬剤師から「きちんと眠れていますか?」「他にどのようなお薬を飲んでいますか?」と患者様に語りかけることで信頼関係が出来上がり、次回以降の来店や良い口コミなどにつながっていくのです。

来店される患者様にとって「プライム薬局だから行こう」ではなく、「親切な薬剤師さんがいるから行こう」と思っていただけるのが一番ですね。プライム、という看板はあまり重視しておらず、私たちは薬剤師・医療事務一人ひとりが看板だと考えています。

ーー「話しかけやすい姿勢」を大切にするために、職員の方々には接遇研修などを行っているのでしょうか。

大久保和一:
実は、弊社では「接遇・マナー研修」などの研修は行っていません。なぜなら、型通りではなく、心からの思いやりを持って患者様に接してほしいと考えているからです。研修などで習った通りに対応しても、来店される方が心を開いてお話してくださるとは限りません。「どこかに不調を抱えて来店される方」ですので、モノを売買するような接客マナーとは少し異なるコミュニケーションが必要だと感じています。

ーーそうすることで店舗数を順調に拡大されてきたのですね。

大久保和一:
はい。現在26店舗で、2024年10月にできた「つくば高見原店」が一番新しい店舗です。実は、私たちが初期に手がけた山梨の「ふなつ薬局」と同じく、農家さんの所有地をお借りして開業しました。薬局を新築するために畑を借りることになったため、私が学んだ不動産の知識が今でも役立っています。法律のことや税金のことまで、実際に借りる私たちからご説明できると、話が進みやすく、何より安心していただけるんですよ。そうすることで、私たちはこれまで店舗を増やしてきています。

ーー職員の方に対する思いや、働く環境について教えてください。

大久保和一:
弊社には勤続20年以上の職員がたくさんおり、各薬局で日々頑張っています。中には一度退職して、また弊社に戻ってきてくれる職員もいるんですよ。そうした時はやはり嬉しいもので、「おかえり!」と言って、つい飲み会に誘ってしまいます。一度一緒に働いた職員はみんな仲間。私は大好きだし、職員にもそう思ってもらえていたら嬉しいです。

事業を拡大することができたのも、長く勤めてくれている職員が多いのも、全ては「ご縁」だと思います。弊社や私はご縁に恵まれて、今日まで薬局運営を続けることができました。これからもご縁を大切にすることで会社を大きくしていくことができると信じています。

病院や地域の方々のために、運営薬局を増やしたい

ーー今後の事業展開について教えてください。

大久保和一:
現在の主力事業である調剤薬局を関東圏で拡大していくことが第一の目標です。「さあ、店舗を作ろう」「M&Aしよう」という大げさなものではなく、これからも声をかけてくださる方を大切に、私たちが持てる知識と力を活かして新規出店を行いたいと考えています。私たちが「ここに薬局を出したい」というのではなく、これまで通り病院や地域の方の声を重視した出店を続けていく方針です。

事業拡大に伴い、弊社ではこれからも採用活動を続けていきます。「薬学の知識を活かしながら、薬局での実務を通じた患者様とのコミュニケーションについても、前向きに学んでいきたい」と考えている方と一緒に働けると嬉しいです。

また弊社は、医師をはじめとした医療従事者の方のマッチングサービスを2025年に開始します。「他の病院で働いてみたい」「働き方を変えたい」「定年退職したが、やはり医療に携わりたい」といった方々のために、新たな勤務先をご紹介できるネットワークを現在構築中です。

また、弊社は「キャプテン翼」原作者の高橋陽一先生率いる「南葛SC」を設立時よりスポンサーとして微力ではございますが協賛しております。Jリーグを目指して躍動する南葛SCを、応援よろしくお願いいたします!

編集後記

取材陣も自然と「大久保さん」と呼んでしまうほど気さくであたたかな人柄の社長は、社内外の関係者とのつながりを大切にすることで事業を拡大してきた経営者である。ただ事業を拡大するのではなく、各店舗の職員や病院関係者を尊重しながら、患者様が「また来よう」と思える場所づくりを推進する姿勢が印象的だった。株式会社プライムでは、どんなことでも話しやすい「大久保さん」が中心となり、取引先の病院や薬局に来店される患者様などに誠実に向き合い、行動している。

大久保和一/1958年埼玉県生まれ。1981年駒澤大学法学部卒業。その後医療関係を経て、1990年株式会社プライム入社。現在に至る。