※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

あらゆる業界・企業で職人不足が問題となっている昨今。協力工事店の職人の育成に力を入れることで、他社との差別化に成功しているのが、環境システム設備機器株式会社だ。同社は、住環境設備機器の販売・設計・施工・メンテナンス・リフォームをワンストップで手がける会社である。代表取締役の仲西聖治氏は住友林業で6年間営業経験を積んだ後、1999年に同社に入社し、2015年に代表取締役に就任した。今回、仲西社長に同社の事業の強みや、注力する人材育成への取り組みについて聞いた。

社員の意識改革に尽力し、営業会社ではなく「工事会社」だという認識を浸透させた

ーー社長就任後の取り組みについて聞かせてください。

仲西聖治:
まず取り組んだのは、全館空調システムの受注拡大・リフォーム部の推進・新規開拓の3つです。また、「弊社は営業会社ではなく工事会社である」という認識を社内にしっかり根付かせることにも注力しました。

たとえば何か工事のトラブルが発生した時、本来であれば工事の際にどのようなことが良くなかったのかなど、問題点を分析し、根本的な解決を図ることが求められます。しかし、当時は「うちの会社は営業会社だ」という認識が強く、営業の視点から問題を解決しようとする風潮がありました。

工事の課題を解決し同じトラブルを繰り返さないことが、ハウスメーカーからの信頼獲得となり、結果的に営業力の強化にもつながります。だからこそ、私には、社員一人ひとりに弊社が工事会社だという意識を持って、業務に取り組んでほしいという思いがありました。

工事会社でありながら修理やメンテナンスの部門を持っていることが強み

ーー事業内容について教えてください。

仲西聖治:
弊社は新築の注文住宅やアパートに、エアコンや床暖房、給湯器などの住環境設備を販売・施工する事業を行っています。顧客はハウスメーカーで、空調プランの提案から、配管ルートの設計、施工管理、メンテナンス・修理、リフォームまで一貫して請け負っています。

現在は、「新築」「メンテナンス・修理」「リフォーム」の3つに事業が分かれていますが、もともとは先代の社長が松下電器産業から独立し、修理・メンテナンス事業からスタートした会社です。他社では修理やメンテナンスの部門を持たないケースが多い中、弊社はこの部門を強みとしています。修理やメンテナンスで培ったノウハウを新築工事に活かせるため、施工品質向上につながっています。

また、ダイキン・日立・東京ガス、デンソーなど、多くのメーカーの商品を取り扱っているので、ハウスメーカーの多様なニーズに対応することが可能です。加えて弊社に依頼することで複数のメーカーの見積りを一括取得できる利便性も評価いただいています。中でもダイキン工業との取引実績は、毎年、全国トップクラスの仕入高(4〜5位)で住宅用エアコンの販売台数では全国1位となっています。

ーー取引先から長年信頼されている理由は何だと思いますか。

仲西聖治:
弊社の協力工事店の職人の多くが、エアコンから床暖房まで幅広い設備の工事や修理に対応できることが一つの理由だと思います。すべての機器に対応可能な職人を多く抱えているため、ハウスメーカーは安心して弊社に業務を任せてくれます。また、弊社の扱う商品数の豊富さや空調プランの提案力、スピーディーな見積もり対応力なども信頼される理由といえるのではないでしょうか。

教育環境が整っているから未経験者でも手に職をつけられる

ーー貴社で採用している人材は経験者が多いのですか。

仲西聖治:
ほとんどの社員が未経験からのスタートです。今年は中途採用で10名を迎えましたが、経験者は1名のみでした。施工管理やメンテナンスの先輩社員が指導し、協力工事店の職人のもとで研修することで、未経験でも現場に対応できるようになります。研修期間は半年から1年程度とし、個々の成長に応じた教育を行っています。

弊社の社員は後輩たちから「優しい」と言われることが多く、直接の後輩だけでなく誰に対しても丁寧に指導してくれる人が多いのです。弊社の社風に合った人材が集まってきてくれているのだなと感じています。

また、弊社の事業は、実際に工事を担う協力工事店の技術力も重要となるので、協力工事店の若手職人の育成にも力を入れています。研修期間の費用を弊社で負担するといった取組みを通して、将来的には独立して弊社の協力工事店として活躍してもらうことを目的としています。

現在、業界全体で職人の高齢化が進んでおり、若い職人は貴重な存在です。協力工事店が若い職人を多く抱えられるように投資をし、施工力を高めることで、自ずと仕事が舞い込んでくるようになると私は予想しています。今後、業界全体で工事を担う人材が不足する可能性が高まる中、他社が人手不足で対応が難しくなった際は、「うちなら対応できます」と、自信を持って言える体制を整えていきたいと考えています。

ーー今後の目標や展望について教えてください。

仲西聖治:
お客様に関するあらゆる情報を一元管理するために、2023年に基幹システムを刷新しました。これにより、誰でも業務の状況を一目で把握できるようになりました。また、従来は紙ベースで管理していた図面をデジタル化することで、業務効率の向上とコスト削減を実現しました。

そのほかの展望としては、支店を出したいと思っています。売り上げ50億円を達成した時点で、アクセスのよい立地に新しい事務所を構えたいですね。

編集後記

若い社員や協力工事店の職人を増やすことで、会社の持続的な発展を目指す環境システム設備機器株式会社。営業力のみに頼ることなく、事業領域を拡大することに余念がない仲西社長の姿に、技術力の向上に妥協しない「工事会社」としての矜持が垣間見えた。

仲西聖治/1970年生まれ。立教大学卒業。住友林業株式会社で6年間営業として従事。1999年に環境システム設備機器株式会社に入社。基幹システムの開発、営業、施工管理を担当した後、2015年に代表取締役に就任。城南信用金庫の若手経営者や経営後継者向け講座である未来塾でのアシスタント活動にも従事している。