※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

岐阜県の名所である金華山を間近に望む、ぎふ長良川温泉ホテルパーク。このホテルを経営している株式会社ホテルパークは、2024年に創業130周年を迎えた歴史ある企業だ。同社の代表取締役社長である山岡利安氏は、ホテルパークと共に育ち、ホテルのことを考えながら社員時代を過ごし、そして今もホテルの未来を考えて日々業務にあたっている。

山岡社長はこの歴史あるホテルをどう成長させていきたいのか。これまでの取り組みや、これから目指すべき姿などをうかがった。

ホテルと共に育ち、ホテルの未来に本気で向き合ってきた社長の歩み

ーー山岡社長の経歴をお聞かせください。

山岡利安:
ホテルパークは我が家が代々家業として引き継いできた会社で、私も幼い頃から館内のゲームコーナーで遊んだり、食堂で食事をしたりと、多くの時間を旅館で過ごしました。そのため、跡を継ぐことも自分の中では自然なことだったのです。

大学卒業後は会社を経営する基礎的な力を身に付けるために、アメリカ留学へ行ったのち、熱海にある老舗旅館の熱海大野屋で修業をしました。熱海大野屋ではフロント業務からバンケット業務、さらには調理部門などを担当でき、幅広い仕事を経験できる環境でした。

その後、家業であるホテルパークに戻ってきてからは、社員のころからフロントにおける館内オペレーションの最適化や旅行会社とのBtoBの関係構築など、ホテルを根底から改善・成長させる取り組みに着手しました。

そして、2005年に社長に就任し、それ以来、約20年間にわたって旅館業界の変化と向き合いながら、ホテルパークの発展に努めています。

ーー社長に就任してから、力を入れてきた取り組みを教えてください。

山岡利安:
就任後にまず取り組んだのは、団体客に依存した経営からの脱却です。私が社長に就任した2005年は、インターネットの普及により、個人が気軽に宿泊施設を予約できるようになったころでした。これによって、それまでの主な顧客だった団体旅行客に加えて、個人客を増やす戦略が必要になったのです。

そこで私は、宿泊プランや料理といったソフト面はもちろん、思い切って、客室やロビー、大浴場などのハード面にも手を入れました。その過程では金融機関との折衝や先代との調整など多くの衝突が起こりましたが、この大胆な行動が功を奏し、弊館を繰り返し訪れてくださるファンのお客様が増えていったのです。

会社の地盤に関わる大胆な取り組みでしたが、当時は痛みをともなってでも変化が求められる状況でした。おかげで毎年多くのお客様にご利用いただいており、この反響に応えるためにも、日々柔軟にホテルをアップデートしていきながら、経営を続けています。

恵まれたロケーションと真心のこもったおもてなしが最大の魅力

ーーホテルパークはどのような魅力を持ったホテルでしょうか?

山岡利安:
ホテルパークの魅力は、長良川温泉を代表する名所である長良川と金華山の雄大な景観に囲まれた、恵まれたロケーションにあります。長良川が目の前なので、川の流れを見ながらゆったりとした時間が過ごせるほか、春には堤の桜を楽しむこともできます。さらに、金華山はホテルに隣接しており、徒歩2〜3分のところにあるので、森林浴を楽しみたい方にもぴったりです。

また、金華山の山頂にそびえたつ岐阜城に近いことも大きな特徴です。ホテルパークは岐阜城に最も近い露天風呂があるホテルで、アクティブに観光を楽しんだ体を休ませるのに適しています。

そしてサービス面では、飛騨牛を贅沢に楽しめる食事付きプランや、小さなお子様がいるご家族でも泊まりやすいファミリープラン、おひとり様専用のプランなどを用意しています。一人でも多くの方が弊館でおくつろぎいただけるように、幅広いニーズに応えられるよう努めております。

130周年という節目を迎え、これからの成長に必要なこととは

ーー貴社ではどのような人材を求めていますか?

山岡利安:
弊社が求めているのは、人と接することが好きで、温かい心を持った方です。お客様が当館で心からくつろぎ、満足して帰っていただけるように、すてきな笑顔と親しみやすい雰囲気で接していただければと思います。それに加えて、こまやかな要望に応じられる臨機応変さが備わっていたら最高です。

最近は、旅館業界の人材不足も相まって、労働環境を心配する方もいるかと思いますが、弊社ではその懸念を払しょくするために、休日を増やすための休館日の実施や、スタッフの負担を減らすための宿泊プランの見直しなど、具体的な改善に向けた取り組みを段階的に進めています。

また、外国人スタッフも積極的に採用しており、あらゆる手を駆使して快適に働ける環境の実現を目指しています。お客様に喜んでいただくには、まず従業員が笑顔で働けることが必要なので、今後も人材の育成と労働環境の改善を両輪にして進めていきます。

ーー今後、ホテルパークをどのように成長させていきたいとお考えですか?

山岡利安:
今後は、ホテルパークのあり方を改めて見つめ直し、自社ブランディングの強化を進めていきます。ありがたいことに、弊館は2024年に創業130周年を迎えました。これを一つのターニングポイントと捉え、記念ラベルワイン制作や記念プランの実施、SNSによる情報発信強化など、弊館の魅力を広げる取り組みを始めました。最近では、「川端康成ゆかりの宿」という歴史的な側面を活かしたオリジナリティの追求も行っています。

また、売上を伸ばすためには外国人旅行者へのアプローチが大切だと考えています。岐阜市は高山や下呂温泉と比べると外国人旅行者が少なく、その割合はわずか10%程度にとどまっています。この課題を解決するには、行政や観光協会と連携して、広く情報を発信することが欠かせません。お客様を待つ状態から、積極的に招き入れる状態へと変わっていければと思います。

そして長期的には、価格で選ばれるホテルから、品質で選ばれるホテルへの転換を目指します。一度訪れた方が、何度も繰り返し足を運びたくなるホテルに変わっていければ、それに越したことはありません。

いずれは、弊館が長良川温泉エリア全体の魅力をけん引していけるような存在になれたら嬉しいですね。

編集後記

ホテルパークは130年以上続く歴史ある会社だが、その内部にはハード面にも惜しまず手を入れるチャレンジングな社風がある。その象徴ともいえる山岡社長なら、ホテルパークだけでなく長良川温泉エリアの未来に恐れず挑戦できるはずだ。多くの名所に育まれた同ホテルが、エリア一体を育てていく姿が目に浮かぶようだ。

山岡利安/1963年岐阜県生まれ、獨協大学卒業。米カリフォルニア州立大学に留学後、熱海大野屋で修業。1991年にホテルパーク入社、2005年代表取締役社長に就任、現在に至る。公職として岐阜県旅館ホテル生活衛生同業組合理事長、岐阜県観光連盟副会長を務める。