※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

神奈川県横浜市を中心に牛乳の宅配サービスを展開している、株式会社ケー・エス・エフ・サービス。同社は牛乳以外にも食料品や雑貨、書籍など、幅広い商品を取り扱っており、さらには管理栄養士による栄養指導サービスも行っている。そんな同社を支える、代表取締役社長の小林康太郎氏はどのような価値観の持ち主なのか。事業にかける思いや会社の将来像などをうかがった。

設計者からキャリアチェンジ後、わずか2年半で社長に就任

ーー小林社長の経歴をお聞かせください。

小林康太郎:
私は大学、大学院と機械工学の研究を行っており、卒業後は精密部品メーカーで、13年間設計の仕事に携わっていました。

そこからケー・エス・エフ・サービスに転職したのは、創業者であり、前社長である父から誘われたためです。分野がまったく違うので最初はためらいましたが、父の熱意に押され、自分の実力を試す意味も込めて入社を決めました。

こうして家業に戻ってきたわけですが、なんと入社して約2年半後に父が亡くなってしまうという出来事が起こりました。私はそのまま社長を継ぐこととなり、キャリアが少ないまま社長に就任することになります。

社長就任当時は右も左も分からない状態でしたが、社員のことを考えると立ち止まってはいられません。多くの本から学び、社員と積極的にコミュニケーションを取り、自分なりに試行錯誤を続けました。

その一環として力を入れたのが、社員一人ひとりが自主的に行動できる、ボトムアップ型の組織変革です。これは現在も継続していますが、あえて社員たちに発言の機会を設けることで意見することに慣れてもらい、そうやって組織の層を厚くしながら、今日まで会社を成長させてきました。

ーー小林社長が大切にしている思いや価値観は何ですか?

小林康太郎:
弊社の根底にあるのは、良き隣人として必要とされる会社を目指すという思いです。高齢化が進む昨今において、宅配という、コミュニケーションの機会に恵まれたスタイルをどう活用できるのか、どうすれば地域社会に貢献できるのかを考えながら事業を成長させています。

そこで大切になってくるのが、素直であること、そして謙虚であることです。弊社は基本的にお客様と長期的なお付き合いになるので、その中でお客様と良好な関係を築くためにも、この2点が大切になってきます。

牛乳の宅配ルートを活用し、地域の高齢者を支えるサービスを展開

ーー貴社の事業内容と、貴社独自の強みを教えてください。

小林康太郎:
主な事業は株式会社明治の牛乳やヨーグルトの宅配です。また、お客様に多いご高齢の方に便利にご利用いただけるよう、お米や産地直送の農産物といった食料品や、まとめて買うと重いミネラルウォーター、さらには日用品や書籍も取り扱っています。また、健康への配慮として、常駐している管理栄養士による健康状態や食生活のアドバイスも行っています。

ご高齢の方の使い勝手に焦点を当てたこのサービスこそ、弊社の強みになっている部分です。弊社には牛乳の宅配で培った宅配ルートがあるので、取り扱う商品を増やしても一緒にお届けすることができます。高齢者のお客様からすれば「買い物に行くのが大変」という悩みを解決できるわけです。お客様の利便性と弊社の売上拡大や地域貢献を同時に達成できるWin-Winなことで、まさに強みだといえるでしょう。

ちなみに、宅配以外の事業として、自治体と連携して地域の見守り活動や健康セミナーといった地域貢献活動も行っています。これらの取り組みは、自然な形で地域の方と信頼関係を構築できるので、お客様のお宅に直接うかがう弊社にとっては欠かせない活動になっています。

地域貢献活動に力を入れて気づいた、この事業ならではの特徴とは

ーー地域貢献活動を積極的に行っているのはなぜでしょうか?

小林康太郎:
弊社が地域貢献活動を始めた理由は、営業にうかがった際にコミュニケーションを取りやすくするためでした。しかし、今はそれ以上に、地域の一員として皆様を支えるために行っています。

ご高齢の方とコミュニケーションを密にするようになって気づいたのは、私たちの定期的な訪問や食料品の配達などが、安全確認の機会やライフラインの確保として機能しているということです。特に高齢者が多い地域では意義が大きく「頼んでよかった」という声を多くいただいております。

最近では、長らく活動を続けてきたおかげで、地域の一員として受け入れられているように感じることが多くなりました。お宅に配達に行くと「待ってたよ」と声をかけられることもあり、日々の仕事の励みになっています。

地域を支える一員として、これからもできることを追求していく

ーー今後の注力テーマ、そして、貴社が目指す将来像をお聞かせください。

小林康太郎:
今後は、昨今の健康志向の高まりを生かした新規顧客の獲得や、事業の幅を広げる活動を進めたいと思っています。たとえば、取り扱うものを商品に限定せず、今後需要が増えてきそうな、家のちょっとした修理もできたら便利ではないかと考えています。よろず相談窓口として信頼してもらえるようになりたいですね。

もちろん、現在のお客様へのより一層のサービス向上にも力を入れていきます。そのためには、DXの推進で業務を効率化し、お客様のために割ける時間を増やすこと、そして、デジタル技術を持つ方や地域貢献の意欲が高い方の採用が大切だと考えています。特に、人の喜びを自分の喜びとして感じられる方だと嬉しいですね。

そして将来的には、今よりいっそう地域貢献ができる会社になりたいと思っています。これからも弊社だからこそできることを追求し続け、地域社会を支える一員として、地域の皆様に寄り添っていきたいと願っています。

編集後記

さまざまな事業を見ても、牛乳の宅配のように日常的に直接お客様と接点を持てるものは極めて貴重だ。今ある配達ルートは、さまざまな商品やサービスを運ぶ可能性を秘めた、ケー・エス・エフ・サービスの唯一無二の財産といえるだろう。小林社長は、地域貢献を考えて次にどんなものを運ぶのか。その思いが多くの方に届けられる、そんな優しい未来の姿が見える。

小林康太郎/1972年東京生まれ、千葉育ち。武蔵工業大学大学院工学研究科機械工学専攻修了。精密部品メーカーで製品設計者として13年経た後、ケー・エス・エフ・サービスへ入社。先代の急逝で、入社後わずか2年半で代表取締役社長に就任。良き隣人として必要とされる牛乳屋さんを目指して奮闘中。