※本ページ内の情報は2023年11月時点のものです。

菓子業界 は直近、消費者ニーズの上昇を追い風に売上を伸ばしているが、背後には原料高や物流費の高騰、少子高齢化といった難題も抱えている。

菓子問屋・小売店として、かつて芋アメの露店がたくさん並んでいたというアメ横に拠点を構えて70年以上の株式会社二木(二木の菓子)。

昭和の時代にテレビCⅯで消費者のハートをがっちりつかみ、現在でもメディアやSNSでの露出も絶えることのない人気菓子店だ。
  
独特の個性を放つ同社の代表取締役社長・二木正人氏に、繁盛の秘訣や店舗戦略について聞いた。

安さと1万に及ぶアイテム数で消費者の支持を集める

ーー周囲に数多く存在した同業者の中で生き残った秘訣や強みについて教えてください。

二木正人:

弊社の強みは、まずは「安さ」ですね。

周りには同業者が多いですから、「競争に勝つために値段を安くしないといけない、どうすれば安くできるか」ということを必死で考えて策を練っていくわけです。仕入れルートを見直すなど、さまざまな工夫をしながら、結果として値段を下げられた私たちのようなお店や問屋が生き残ったということです。


次にポイントとなるのが品ぞろえです。弊社では8000〜1万種の菓子をそろえていて、国内トップクラスのアイテム数です。

これもただ並べればいいという訳ではありません。

スーパーや最近はやりのディスカウントストア、ドラッグストアで買い求める顧客層は私たちのターゲットではない。どこにも扱っていない個性的な商品を仕入れて、それに惹かれるお客さまに販売することを大前提に動いています。

「いろんなお菓子を見て、感じて買いたくなった」とか、「ここにしかないお菓子を買いに行きたい」という、ワクワクしたいお客さまのニーズとマッチした結果、長く商売が続けられていると自負しています。

コロナ禍での反省と商圏をつかむことの大切さ

ーーアメ横でのコロナ禍の影響は相当と聞きましたが、貴社はいかがでしたか?

二木正人:

新型コロナの前は「安くておいしい」日本の菓子を求める外国人客の割合がかなり増えていたんです。インバウンド効果が絶大だったので、おのずと依存度が高くなっていました。外国人が好きな菓子というものがあって、売り場の構成比もかなりそっちに傾いていました。

そこにパンデミックが起きて、海外からのお客さまが一気にゼロになったわけです。強制的に入国できない、来られないものを追い求めるわけにはいかない。

もちろん、国内でも行動制限により外出を控えるので、日本人客も激減したこの3年半は非常に厳しかったですね。

逆境の中で売り上げを取り戻そうと、今度は日本人の好む商品、子供が喜ぶ菓子にシフトしながら、変化に対応することの重要性を再認識しました。

決まった商圏で決まったお客さまがいて、シェアをがっちりつかむことが重要ですね。コロナ禍のおかげでそれを改めて感じました。

リピート客を念頭に置いた販売戦略とEC事業の強化

ーー店舗運営の強化方針について聞かせてください。
 
二木正人:

小売業としての売り場づくりの技術向上が重要だと考えます。

例えば商品陳列ひとつとってもそうです。ポップ作りの得意な社員さんがいて、商品説明がお客様の心を捉えて面白いと評判になって注目を集めたりしました。この場所にこの商品を置くというセンスを磨いて、魅力的に演出することが求められます。

仕入れ面では品ぞろえの鮮度が大事であり、止まることなく新しいものに入れ替えが必要です。いつ来てもワクワクするお店を実現することで売り上げ向上につなげていきます。先の強みでも話しましたが、わざわざ遠方から来てもらえるよう差別化した商品を扱うことも欠かせません。

――EC事業についてのお考えはどうでしょうか。

二木正人:

二木正人:
菓子というものは本来、カサが大きいので通販に乗っかりにくい商材です。スナックだと、かなりスペースを取って運賃が高くつくので利用しにくい。

その点、チョコレートなどの容積が少なく単価の高額な商材はチャンス十分。特に最近は通販で、トレーディングカードと玩具付き菓子”玩菓子”の伸びは著しいものがあります。

日本の通販はアメリカに比べると歴史が浅く、まだ全体のシェアも低い。伸びしろのある分野なので、勝負できる余地は十分あると思います。弊社としてもここに力を入れていく方針です。 


販売形態はいずれにしても、PB(プライベートブランド)で他社にない付加価値を付け、利益がしっかりとれる商品をラインナップしていくことを強く意識していきます。

そして何度でも足を運んでいただけるリピート客を生むためにも「店に訪れて、見て楽しい、買ってうれしい」売り場づくりをこれからも続けていきます。

編集後記

月に300種類もの菓子を試食してきたという二木社長。研究熱心であり、根っからの商売好きな気質が談話のあらゆる箇所で感じられた。

「商売のメッカ」アメ横で培った経験とノウハウで、自信に満ちた二木の菓子の変わらぬ繁盛を見届けていきたい。 

二木正人(ふたつぎ・まさと)/1950年東京都板橋区生まれ。立教大学法学部卒業後、大阪で2年間の修行を経て昭和50年株式会社二木入社。その後、取締役に就任し現在、同社代表取締役、および全国菓子卸商業組合連合会理事長、商業組合首都圏お菓子ホールセラーズ相談役として活動している。