※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

株式会社ササキは、半導体機器や産業機器で使われるワイヤーハーネスの加工・組み立てで豊富な実績を誇る会社。多彩な領域にわたって事業を展開しており、特に高度なものづくり技術と開発力、提案力に定評がある。

同社を率いる佐々木啓二氏は、もともと保険会社に勤めていたが、父から会社を引き継ぐ形で2013年に代表取締役に就任した。同氏が考えるササキの強さとは一体何なのか、働きやすい環境づくりや今後の展望とあわせて話をうかがった。

4つの事業領域を手がけ、リスクを分散しつつ多品種少量生産にも対応する

ーー事業内容を教えてください。

佐々木啓二:
弊社はワイヤーハーネスの加工や組み立てを手がけている会社で、主に4つの領域に事業を展開しています。

1つ目の領域は半導体製造装置を中心とした装置産業で、2つ目が航空宇宙・防衛分野、3つ目が自動車の開発関係、そして4つ目がX線の検査装置などの医療機器分野です。

弊社が継続的に成長できているのは、4つの領域に受注を分散させ、リスクも分散していることが1つの理由だと考えています。

特に半導体業界は浮き沈みが激しいため、半導体分野が低迷した際に他事業で補えるよう、社長就任以来、事業拡大に力を注いできました。

ーー貴社の強みはどういった点にありますか。

佐々木啓二:
幅広い領域のものづくりを手がけており、経験が非常に豊富な点が強みです。たとえば弊社はケーブルを製造する際には、3万点以上の部品と1,000種類におよぶ線を組み合わせ、お客様の細かな要望に合った製品をつくりあげています。

また、生産管理のデジタル化が進んでいること、多品種少量で成果を出せることも強みです。少量であるぶん、品質には特にこだわっていますし、ロケット開発など品質の高さを厳しく要求される製品を扱うことも多くあります。

そのほか、お客様から緊急で明日までに製品がほしいと言われた際でも、臨機応変に対応できるなど、小回りが効くことも特徴です。開発に関わるエンジニアと直接やりとりをしながら事業を進めているので、スピード感を持って製造に取りかかることができます。

多様な人材採用とサステナビリティ推進で活躍しやすい環境を実現

ーー貴社ではどのような人材が活躍していますか。

佐々木啓二:
弊社のような中小企業が成長するためには、大手企業などを経験してきたベテランが重要なので、50〜60代の中途採用の社員が非常に多いです。一方で若者も多く、地元の工業高校を出た若者を採用するなど、地域の人材を中心とした採用活動にも力をいれています。

また、社員の54%が女性で、女性管理職の割合は35%ほど占めています。弊社では、サステナビリティを推進する部隊を業界内でもいち早くつくり、女性が活躍できるような環境を整えてきました。

女性が活躍する企業を認定する「えるぼし」や「くるみん」など、厚生労働省が出している認定は一通り取得しています。

今後は社員の成長を促す仕組みを構築し、会社も成長させていく

ーー今後の注力テーマを聞かせてください。

佐々木啓二:
父が会社を創業した当時、「絶対品質」という言葉を独自でつくり、どのような状況においても品質にこだわり続ける、という理念を貫いてきました。

ただ、現在では、創業当初より事業領域が広がり、それにともない求められる品質のレベルも向上しています。あらゆる領域に対応できるようになるためには、より一層技術力を高めることが重要です。そのためにも今、自動化できるところは自動化して品質の安定維持を目指すといったことを進めています。

また、社員全員の成長に向けた取り組みを強化することにも、今後は力を入れていきます。私は会社の成長は社員一人ひとりの成長から始まると思っており、この成長を促すためには具体的な目標を立て、単に「作業」をこなすのではなく、自分の頭で考えて「仕事」に取り組む意識を持ってもらう必要があります。

実際に、社員たちの成長を促す新しい制度の導入も始めており、それぞれの社員の職務の内容や責任を明確にする「ジョブ型」に近い目標設定の制度を取り入れるようにしています。

ーー最後に、今後のビジョンをお願いします。

佐々木啓二:
本業の軸は変えずにお客様の領域を広げること、そして設計開発の分野で足りない力を強化することが今後の大きな目標です。

また、宮城県の工場に新しい棟をつくることを計画しており、そこでは自動化を取り入れた生産設備を活用しながら、事業を拡大していくつもりです。そして最終的には、売上高100億円を達成する会社を目指します。

ただ、どんな目標を目指すにしても、社員たちに満足して働いてもらうことが最も大切なこと。弊社の工場が山梨にありながら、丸の内のオフィスを彷彿とさせるような都会的なデザインになっているのは、社員たちに「明日も会社に来たい」と思ってもらいたいのが大きな理由です。

そのほか、地域貢献への活動にも今後は積極的に取り組んでいきたいと思っています。たとえば弊社では、これまで利用されていなかった畑を活かして、ワイン用のブドウを栽培しています。今後はこれをさらに進めて、地域の障害者の方に栽培してもらったブドウを料亭に売るなど、地域貢献の活動にもつなげていきたいです。

編集後記

航空宇宙などの分野でも活躍するササキ。同社の高い技術力を他社が真似することは難しく、時代が変わってもきっと社会に必要とされるものなのだろうと感じた。
地元山梨県を盛り上げるだけでなく、日本の発展にも大きく貢献する同社の挑戦を今後も応援したい。

佐々木啓二/外資系損害保険会社勤務を経て2005年に株式会社ササキ入社。入社後、2年間東京エレクトロン株式会社にて修業し、2007年に専務取締役、2013年に創業者の2代目として代表取締役に就任。産業機器分野をメイン領域としながら他領域への拡大を進めている。企業の社会的責任(CSR)にも積極的に取り組み、誰もが働きやすい環境づくりに力を入れている。