※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

石川県金沢市と小松市の2箇所に本社を置く、株式会社トーケン。総合建設事業を中核としたサービスを展開し、多柱経営を行う同社には、どのような歴史と変遷があったのだろうか。自らが社長に着任した2006年からを「第2創業期」と位置づけ、数々の社内改革に取り組んできた代表取締役会長の根上健正氏に、同社のこれまでと現状について話をうかがった。

社内風土の問題に正面から向き合い、小さなことから改善に努める

ーー社長に就任されるまでのご経歴を教えてください。

根上健正:
私は1965年に清水建設株式会社に入社し、20年間工事現場の前線で働きました。その後、営業部に異動し、さらに20年間、特に地域の経営者の方々との信頼関係を構築し、実績を重ねてきました。

定年まであと2年という時期を迎え、「再就職をどうしようか」と考えていたとき、6社の経営者の方が私を評価してくれました。その中の1人が、弊社の前代表である岡本安七です。「トーケンの存続に力を貸してほしい」と言われた言葉が胸に刺さり、入社を決意。2006年11月に、社長に就任しました。

ーー社長就任後に苦労したことはありますか?

根上健正:
招聘されて入社したものの、大手ゼネコンのOBである私が経営に参画することに、地元ゼネコンの実態を知らずに何ができるのかと社員からの冷ややかな目線があったことも確かです。そのような中で、私が社員にヒアリングを実施すると、帰属意識の低さや待遇への不満、喫煙マナーなど、さまざまな問題が発覚したのです。こうして、社内風土を改善することが、私の課題となりました。まずは「分煙を徹底する」「呼び捨てをやめ互いを敬う」などの小さなことから解決し、思いやりがあり、気持ちよく働ける社風へと改善していきました。

技術力向上により、地域では大手ゼネコンもライバルに

ーー社内風土の改善以外に、どのような取り組みを行いましたか?

根上健正:
最も重要と思われる技術力の向上に取り組みました。実は、当時の弊社は協力企業に任せきりなところがあり、大きな案件を獲得してきても、現場の責任者が「自信がない」と尻込みするような状態でした。そこで私は、大手ゼネコンに勤務していた友人に、毎週土曜日に技術研修をしてもらうようお願いしたところ、大手の工法によって見事に完成したのです。

この経験から「技術は会社にあるが、実は個人が持っている」と気付き、大手ゼネコンを定年退職したOBを招聘し、「技師長」という指導的立場で弊社に力を貸してもらうことにしました。技師長たちが安全・品質管理や設計等の技術を授けてくれたおかげで、会社全体が成長していったのです。技師長はこれまでに17人在籍しており、「絶え間ない改革とノウハウの蓄積」というスローガンを掲げながら、技術やノウハウの伝承に努めています。

このような技術力向上の取り組み以外にも、市場の大きい金沢市への本社の移転やDX推進をはじめとした働き方改革など、さまざまな変革を行っています。

ーー貴社の事業内容を教えてください。

根上健正:
弊社は総合建設事業を核に、建設総合サービス業として事業を展開しています。技術力の向上に努めてきた結果、現在では特命での設計施工案件が、全工事の40%を占めるまでになりました。

東京商工リサーチの評点においても、総合与信力、技術力、財務力、管理力、提案力、企画力、継続的な成長力などが認められ、100点満点中74点という高い評価を得ています。平均的な企業の評点が56点ですから、これは誇れる数字と考えてよいでしょう。

さらに、大手に劣らぬ高品質な建物をより安価で実現できるという強みも加わり、1件で70億円という、大手ゼネコンに発注するような規模の工事を特命で任されています。

他には、屋上緑化事業や高齢者介護施設紹介事業など、地域に貢献する新規事業も展開し、建設業のノウハウを活かしながら、社会課題の解決にも取り組んでいます。

ーー貴社の魅力は、どのようなところですか?

根上健正:
『「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞』の受賞や「健康経営優良法人ブライト500」の5年連続認定、厚生労働省主催の「高年齢者活躍企業コンテスト」の優秀賞受賞などは、健康経営や高年齢者活躍をはじめとした「人を大切にする経営」に基づき、社員のモチベーションを高めてきたことが評価されてのことで、弊社の長所だと自負しています。

また、本業の建設業においては、技術力や提案力、企画力の向上が、顧客の資産価値の創造や高い評価と信頼につながり、新たな顧客の創出にもつながりました。1件当たりの建設規模も年々大きくなり、2024度の決算では135億円という過去最高の売上高をあげることができました。

全社員が講師となり、学び合う組織づくり

ーー最後に、貴社の人材育成の取り組みについて教えてください。

根上健正:
弊社は、若手社員の比率が約4割を占めており、新入社員の確保と社員教育に注力しています。新入社員には「トーケンアカデミー」、若手社員には「営業本気塾」や「工務本気塾」という社内研修の機会を設け、先輩社員が直接指導しているほか、外部研修にも積極的に参加してきました。

さらに、弊社独自の研修として、社員が講師となってプレゼンテーションを行う「胎動塾」を実施しており、社員の意識改革を促し、スキルアップや自主性を育んでいます。加えて、「人が何よりの財産」「女性や高年齢者の活躍推進」の考えを掲げ、加点主義で一人ひとりが主役となって活躍する会社づくりにも取り組んでいます。社員とともに一丸となって、「強く、やさしく、おもしろい企業」を目指していきたいですね。

編集後記

「入社当時は、会社への帰属意識が低い社員が多かった」と語る根上会長。長年根気よく社内改革に取り組んだ結果、数々の賞を受賞するまでに社員を成長させるのは、並大抵の努力ではなかっただろう。根上会長がもたらした改革の精神は社内にしっかりと根付いており、今後のさらなる成長を予感させた。

根上健正/1946年、富山県富山市生まれ。1965年、清水建設株式会社に入社。北陸支店営業部長、同開発営業部長などを歴任。2006年、株式会社トーケンに入社し、同年に代表取締役社長へ就任。2020年、代表取締役会長に就任。一級建築士。2006年から第二創業期と位置づけ「強く、やさしく、おもしろい企業」を目指して改革・変革を進めてきた。