
コレクタブルカーと呼ばれる希少車に特化したオークション事業や各種イベントを企画運営する株式会社BINGO(東京都千代田区)。同社はとりわけスーパーカーを超えるハイパーカー(価格が数億円単位で超高性能なスポーツカー)のジャンルにおいていち早く国内に持ち込み、ブランディングの先駆けとなったことから、世界中のコレクターから高い認知度と信頼を獲得している。
独自のビジネスモデルを築き、メディア運営など車両販売以外の事業にも勢力的に取り組む同社。異彩を放つ創業者、代表取締役社長の武井真司氏に、プロフィールや経営ビジョンについて聞いた。
他社より突き抜けた存在を目指し入手困難なスーパーカーを販売
ーー高級車の販売を始めたきっかけを教えてください。
武井真司:
スタートしたきっかけは、中古車販売店を起業する皆様と同じように、車好きが高じたことです。名古屋市内に店舗をオープンしましたが、早い段階で周りと同じでは満足できないと思うようになり、プラスアルファの特殊なコンセプトを求めるようになりました。
その思いの裏にあるのは、「事業を閉じる時に、欲しくもない車に囲まれたくない」というイメージです。スーパーカーなら囲まれて辞めるのに不足はありません。それがきっかけで希少車と呼ばれるものに特化していくようになりました。
しかし、“継承する”ことが難しい事業だとも感じていました。だからこそ、クロージングの時のことを想像しながら、自分の思うアートのようなクルマに囲まれていたいと考え始めたのもこの頃です。
ーー名古屋から東京に進出した背景には何があったのでしょうか?
武井真司:
当時の状況に飽きてしまったことがあります。実は、スーパーカーの販売を始めて売上高60〜70億円を2年目ぐらいで達成したのですが、数字にはないロマンを追い求めていたのか、当時の状況を物足りなく思うようになってしまいました。そんなとき、東京の取引先と情報交換する中で、「もっと大きな舞台に出てみては」という声もあったため、思い切って東京に進出することに決めたのです。
出店に選んだロケーションは千代田区永田町にある日枝神社のそばでした。「大都会にもこんなに緑豊かな場所があるのか」と心を動かされて決めた物件です。
東京進出は、当時としては大きな投資でした。業界の中で比較されるのも嫌でしたし、神秘的な都会の森を眺めながら「突き抜けた存在になろう」と決意を新たにしたことをおぼえています。
新ビジネスモデル、ハイパーカーのブランディングを先駆ける

ーーコレクタブルカーのオークションを始めた動機はなんでしょうか。
武井真司:
海外との販売価格の差を痛感した出来事がきっかけです。ある日、お店の閉店後に窓をトントンと叩く、見知らぬ外国人の男性がいました。ドアを開けるとすぐに商談に入り、まるでお菓子を買うように数億円の高級車を買ってくれたのです。
こちらも利益を得て大満足でした。しかし、後で知ったことですが、その外国人の男性は私が売った車を、倍以上の金額で売っていたのです。「このギャップを埋めなければ、世界と勝負できない」と悟った出来事でした。
これを機に、東京のショールーム販売だけでなく、海外のオークションにも参加するようになりました。世界のコレクターとつながることで、トレンドをつかんだり自分が知らないジャンルを知ったりと、海外とのパイプ構築に大いに役立っています。
結果として、オークション事業を始める時も、それまでの多くの出会いが事業を助けてくれ、オークションを足がかりに、さらに新しいビジネスモデルをつくることや、ハイパーカーマーケットを先取りして事業を拡大するきっかけにもなりました。
ーー多角経営を展開する理由を教えてください。
武井真司:
スペシャルな成長を続けていく必要があるからです。弊社は売上目標を達成すれば完了ではありません。志しは社会に必要とされる企業です。当然のことながら、止まることなく成長し続けなければならないと考えています。
無料で配布しているマガジンの制作や、モータースポーツに参加して動画を提供するなど、自動車販売以外にもいろんな事業に取り組んでいるのはそのためです。
事業を取り巻く環境を自分たちでオペレートすることができれば、“継承”することが可能なビジネスになっていくと考え、全ての事業を本気で成長させることを目指しています。
ブランディングリーダーとして業界をリードしたい
ーー求める人材像をどのように考えていますか。
武井真司:
特に経験者に求めるのは、究極には組織を構築してオペレートできる人です。
また、現在のスタッフは無類の車好きという人は少なく、動画デザイナーのようなクリエイティブな業務で入る人が多いですね。そのため、通常業務ではそちらのほうの人材も欠かせません。
新卒、中途で入社した社員を分類すると、やや後者のほうが多いですが、新卒者でもマルチタスクを担当しながら会社全体を見渡し学んでいくことができます。
スーパーカーやハイパーカーの業界は特殊です。成功者のお客様を見て学べる環境ですし、パトロンが見つけやすいところなどはユニークな一面であると思います。新卒の方でも成功者のお客様を見て学びたい人にはぜひ関心を持ってほしいですね。
ーー5年後のビジョンをお聞かせください。
武井真司:
自動車ビジネスとカルチャーの中でムーブメントを生む会社を目指していきます。たとえば今後、日本から新しい車が生まれたときに、「海外に出してブランディングできるのはBINGOしかいない」と評価される会社になりたいです。逆に海外からは、「日本に持ち込みたいブランドはBINGOに任せればきっと成功する」と評価されたいですね。そんなブランディングリーダーに、5年後どころか2年以内になりたいと考えています。
編集後記
BINGOが扱うのは超高級車であり、アート級とも呼ばれる存在だ。同社がショールームで美術品を同居させ、新しく取り組んでいるのは、「活躍が期待できるアーティストを見い出し、車とともに世に売り出していくこと」と武井社長は語る。
既成概念を打ち破って新しいビジネスモデルを構築してきた経営者らしい画期的な試みではないだろうか。終始、武井社長の現状に満足することなく高みを目指す姿勢が印象に残ったインタビューだった。

武井真司/1969年生まれ、名古屋市出身。希少車の販売に着手し、2002年にビンゴスポーツのWebサイトを開設。その運営会社として2015年、株式会社エフジェイを設立。2017年、株式会社BINGOを設立。コレクタブルカーのオークション事業、車両輸入・販売、イベントの企画・運営を手がけ、2025年からは、株式会社BHJ「BINGO Creative Agency」を立ち上げ、新たな価値を創造するクルマの世界を発信し続けている。