
株式会社シーパーツは、1955年創業の車両買取、自動車リユース部品の販売・輸出、業務自動化コンサルティングを行う企業だ。買取販売だけではなく、円滑に取引のできる業務改善システム「TAPRAS」の開発も手がけ、関係者から好評を得ている。
2003年に同社に入社し、2019年から取締役社長として事業拡大を続ける岡本明宏氏に、これまでの経緯や今後の展望などについて話をうかがった。
中古パーツを探して自分の車を修理する経験がビジネスに
ーーこれまでの経歴をお聞かせください。
岡本明宏:
学生の頃からバイク、車が好きで車関連の仕事に就くことを考えていました。業界の裾野の広さを考え、新卒では山口トヨペット株式会社に入社し、整備・フロント・管理担当などの仕事を経験しました。
一方で、個人的にはまだ貯金もなかったので、中古車を購入し、部品を中古パーツ業者から購入し、整備して乗っていました。そうした経験があったことで、山口トヨペットのお客様からも「なるべく安く修理したい」という声があった時には中古のパーツを探して対応したこともあります。
そうした生活を続けていく中で、中古パーツ会社での仕事に興味が湧いてきたのです。そこで、以前に取引をしていた、地元である山口県岩国市に本社がある弊社に34歳の時に入社しました。
ーー取締役社長に就任した経緯を教えていただけますか。
岡本明宏:
入社2年目、山口県美祢市へ工場を立ち上げる話がありました。その立ち上げメンバーとして関わってほしいと声がかかり、私は国内部品の担当部長を任された後に統括部長となり、この工場の運営に大きく携わったことが評価していただけたのだと思います。その時は社員も20人から80人ほどになっていました。
また、社長から「私と違うタイプの人材だからこそ、会社をますます拡大するにあたり、君を次期社長候補として考えている」と話があったことが私にとっての大きな転機となりました。その言葉の通り、社長と私は異なるタイプの人間で、お客様へのアプローチ方法も異なりました。このようなさまざまな理由から、私が創業家以外から初めての社長として指名されたのです。
事業拡大に伴い積極的に人材を採用し、効率的に働ける仕組みづくりも次々に整備

ーー社長就任後は、どのようなことに取り組みましたか。
岡本明宏:
社員数が大幅に増えたこともあり、まずは育成に取り組みました。特に幹部社員、リーダーの教育に力を入れましたね。
また、社員にとって働きやすい会社であることは重要です。そのため、福利厚生の制度の見直しにも着手しました。その結果、残業時間を削減し、現在では工場の残業時間をほぼ0時間にできただけではなく、イクメン応援企業などの賞もいただくことができ、大変嬉しく思っています。
2024年には、「日本でいちばん大切にしたい会社審査委員長特別賞」もいただくことができました。
本業である自動車リサイクル事業の拡大・改善にも取り組んでいます。2022年にはタイヤホイール自動離脱ロボットを開発したことで、中小企業庁長官賞・実施功績賞を受賞しています。
ーー自動車リサイクル事業に関して、そのほかの取り組みがあれば教えてください。
岡本明宏:
これまで弊社は、地域密着で事業を拡大してきました。しかし現代は、オークションなども普及し、誰でも全国の中古車・中古パーツの情報を得ることができます。そうした状況を鑑み、車両管理や情報発信、商談まで一気通貫でできるシステムを自社でつくりました。特に業務管理システムの「TAPRAS」は社内で使用するだけでなく、同業他社の方にも使っていただいています。
これにより、今までは車体やパーツに手作業で番号を振って管理していたのが、システム内で効率的な管理を行えるようになりました。また、海外のバイヤーもこれまでは来日して車やパーツなどを探していましたが、日本まで来なくても情報を得ることができるデータベースができ、ご好評をいただいています。
また「GAPRAS」というオークションサイトも運営し、車両・部品両方を扱っています。車両が1台入ってきたら、車両として登録するだけではなく、部品ごとの入札もできるため、利益を最大化できる仕組みで、特許も取得しています。
IT化を推進し、さらなる業務効率化・利益最大化へ。弊社のことを多くの方に伝えていきたい

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
岡本明宏:
事業拡大に伴い、これまで新たな人材を採用・育成してきました。社内ではIT化を推進し、残業ゼロで働きやすい環境も実現しています。
そこで今考えているのは、後継者についてです。今いる社員の中に、次期社長候補として育成中の社員がいます。新卒・中途採用問わず、さまざまな強みを持つ社員がいますので、全員で助け合いながら経営を続けていけたら嬉しいですね。
私も取締役社長になり6年が経ちましたが、今でも悩んだときは相談役や会長、幹部に相談しています。誰か一人が優れているわけではなく、それぞれの強みや知識を活かして一緒に取り組み、事業規模を拡大していくのが理想的な形です。
新卒・中途採用を引き続き行っていく中で、弊社の「地域密着で事業を行ってきた」という歴史と「システム開発などの新しい取り組みも積極的に行っている」こと、そして「社員の働きやすい環境づくりを推進している」労働環境も発信していきたいと考えています。
山口県に本社を置きながら、県内はもちろん、千葉・東京にも拠点を持つことができました。これから弊社が自動車リサイクル業界で世界の最先端を目指し、海外からも注目される存在になっていきたいと思っています。車が好きな方、業務改善が好きな方、さまざまな強みを持つ方にお会いし、ともに成長していけると嬉しいです。
編集後記
「車が好きだから」飛び込んだ自動車業界。さまざまな経験を積むことで、現在は同業他社からも頼られ、海外からもアクセスのあるシステム開発を手がける企業を作り上げている。社長の出身地であり、本社所在地でもある山口県を大切に思いながらも世界に目を向けているバランス感覚が印象的だった。同社はこれからも話題になる改革を続け、今後ますます成長していくことだろう。

岡本明宏/九州工業技術専門学校自動車整備科卒業。1989年山口トヨペット株式会社に入社。2003年、株式会社シーパーツに入社。2019年、取締役社長に就任し、現在に至る。