
カー用品は車には欠かせないが、車そのものへの嗜好性の低下や若者の車離れが原因で、車のアフターマーケットへも大きく影響を及ぼしている。その中でも業績を伸ばしているシュアラスター株式会社。今回は取締役社長の塩崎雅友氏に、カー用品のアフターマーケットの業界の変化と、同社がどのような戦略で業績を伸ばしているのかといった点や今後の展望などについてうかがった。
試行錯誤した入社当時。企業の課題とオンライン社会への適応
ーーシュアラスターに入社したきっかけと取締役社長になるまでの経緯を教えてください。
塩崎雅友:
大手広告会社に勤めていた頃、当時学生だったシュアラスター株式会社の前社長と一緒に仕事をする機会がありました。その縁で、「一緒に仕事をしないか」と声をかけていただいたのが入社のきっかけです。
入社当時は人手不足が非常に深刻で、ヒューマンエラーが頻発しお取引先様へご迷惑をおかけすることも多々ありました。会社全体の業務をタスクレベルまで把握するため、受注処理や問合せ対応などあらゆる業務を経験して業務改善を図ろうと考えました。メーカーの仕事は全くの未経験だったので、完全に手探り状態でのスタートでした。その中で注力したことが3つあります。
まず1つ目はメーカーとして最低限の責任である商品の安定供給と新商品を世に送り出すことをお取引先様にお約束し、体制強化及び業務の見直しを行いました。結果、通常は1年以上かかる新商品の開発を半年で成し遂げることができたのです。商品開発という仕事も初めての経験だったため、とにかく必死でした。
2つ目は組織体制や仕組みの見直しです。システムやワークフローを見直したところ、企業規模に比べて設備が高機能すぎていたり、業務内容に最適なビジネスツールを使えていないことが分かりました。たとえば、自社でサーバルームを管理していたことです。サーバールームを所有すると、保守やバックアップの問題が発生します。その課題をローコストで解決するためにクラウドに変更することにしました。
クラウドに変更するだけで、保守やバックアップはデフォルト(標準状態)で完備されているためコストとリスクを大幅に削減することができたのです。また、業務内容や環境、社員のリテラシーを考慮して基幹システムや営業支援、会計といったビジネスツールを導入して、大きく業務改善を実現できました。
3つ目は販売経路の見直しです。今までは主にカー用品店やホームセンターで販売されておりますが、小売店のPBを販売するといったように、業界の垣根がなくなってきています。今後、より加速していく中で、よりコアなユーザーに向けた商品を提供すべくオンラインショップでの販売を開始しました。
自社のECサイトを立ち上げて1年が経過し、運営も安定してきたので、現在は顧客とのコミュニケーションに特に力を入れています。販路を拡大するような戦略も用意できている状況です。
ーー老舗企業としての魅力を教えてください。
塩崎雅友:
弊社は「シュアラスター」(カーケア用品のブランド名)という洗車用品の製造販売を行っております。シュアラスターは1947年にアメリカ合衆国で誕生しました。1950年代に日本に入り、70年以上の歴史があります。
長年に渡り、高品質なブランドとして認知され、車が好きな方々に愛用されてきました。また、時代の変化とともに車のデザインや利用スタイルも変化するなかで、時代のユーザーニーズに合わせた商品展開を行った結果、今もブランドの人気は衰えることなく根強いファンがいます。
実際に顧客に会う“リアル”と“オンライン”での販売。根強いファンを獲得するわけ

ーーカー用品のアフターマーケットの現状を教えてください。
塩崎雅友:
1970年代には一家に一台車がある時代になりました。そして車に対する思考性が強くなり「車が趣味」という男性が増えて、車の外装や内装を自分でカスタマイズすることが流行した時期でもあります。また家族で、車をきれいに洗車し、出かけた記憶がある人も多いと思います。
自分で洗車していると、車の細かな状態の変化を見つけることができ、修理が必要な場合の対処もできる上に、車の扱いが丁寧になります。結果として車に安全に乗るということにつながるのです。
しかし、現在は車をカスタマイズする年代が高齢化し人口も減少しています。車を購入する人が減り、ディーラーが客の囲い込みを始めました。そのため、オイル交換などをカー用品店ではなく、ディーラーでする人が増えたのではないでしょうか。
また、業界にかかわらずオンラインで買い物をする人も増加しています。しかし、リアルで買い物する人がいないわけではありません。そのため、どのように顧客とのコミュニケーションをとっていくのかが、非常に重要になってきていると感じます。
ーーユーザーのニーズをどのようにして把握していますか。
塩崎雅友:
お客様のニーズを把握することはとても重要です。たとえば最近洗車をする際、時短と簡便さを求める方もいれば、品質を求める方もいます。多くのユーザーの方の話しに耳を傾けて商品開発に活かすようにしています。
そして、弊社は現在でも洗車の講習会をしています。実際にお客様に商品を手に取っていただき、実際に使用し良いと思ってもらえる。そして、良いと思ってくれたお客様が口コミで商品を紹介したり、再度購入したりしてくださります。こうしたお客様のために、効率が悪いと思われても講習会を続けているのです。
ーーこれからの展望を教えてください。
塩崎雅友:
弊社には社員だけでなく業務委託などさまざまな雇用形態で働く人がいます。私は雇用形態にかかわらず優秀な人が成長できる機会を提供したいと常に考えていますが、それは人の成長が企業の成長につながると信じていているからです。
また弊社は、現在海外への販売経路も模索しています。国によって全く考え方が違うので、試行錯誤しながら今後も挑戦していきたいです。
編集後記
常に新しいことに挑戦し続ける塩崎社長。一人でも多くの人にシュアラスターの商品の良さを伝えるための戦略には、熱い思いが込められていることを実感できた。海外進出も視野に、働く一人ひとりの成長を後押しし続けるシュアラスター株式会社は今後もユーザーに多くの感動を届けていくことだろう。

塩崎雅友/1997年、愛媛県生まれ。20代は広告代理店に勤務し、イベント企画やセールスプロモーションのほかオンラインに特化した業務を担当。33歳の時にシュアラスター株式会社に営業本部長として入社。2020年に取締役社長に就任。