
株式会社SCREENグラフィックソリューションズは、印刷関連のソフトウェアやデバイス(注:主にプロダクション用途のデジタル印刷機器)開発・販売を通じて、さまざまなソリューションを提供する企業だ。代表取締役・社長執行役員の田中志佳氏は、印刷は紙媒体だけに限らず、世界中にあふれていると語る。同社の事業や今後の展望、田中氏の印刷業界に対する思いをうかがった。
「READY TO GO」の姿勢で海外駐在のチャンスを掴む
ーーこれまでの経歴をお聞かせください。
田中志佳:
和歌山県の田辺市という、紀伊半島の南で生まれました。半島ということもあり、あまり都市に出る機会がなく育ってきたため、幼い頃から「もっと外を見たい」という思いがあり、特に海外へ強い憧れを持っていました。
そうした海外への興味から、アメリカの大学へ進学。帰国後、関西にあり海外への駐在もでき、ものづくりでグローバル展開をしているということで弊社を見つけ、入社したという経緯です。
実は私は、入社してから15年間ずっと同じ部署で働いていました。入社初年度は海外営業部だったのですが、担当だったマーケティングコミュニケーションを国内外統合して扱う部署が新設され、異動となりました。もともと駐在や海外に関係することに特化した仕事がやりたくて入社したのに、これでは希望通りの仕事ができないのではないかと、何度か転職を考えた時期もありましたね。
それでも15年間続けられたのは、その都度異なる目標やチャレンジすべき課題を自分で見つけ、モチベーションを維持してきたからだと思います。そして15年経った頃、アメリカのマーケティングの現場を立て直すために、念願だった駐在をすることになりました。
サラリーマンは、やりたいことが常にできるわけではありません。波もあります。しかし、何かチャンスがあった時にそのチャンスを掴めるかどうかは、日頃どれだけ準備しているかにかかっていると思います。常に「READY TO GO」の状態になるよう努力しておくことが、波を手繰り寄せる運につながるのではないでしょうか。
デジタル化にともないマーケットが広がる印刷業界

ーー貴社の事業内容を教えてください。
田中志佳:
親会社であるSCREENホールディングスには「半導体」「印刷・グラフィックアーツ」「フラットパネルディスプレー」「プリント基板」という4つの事業体があります。弊社はその中で、印刷関連のデバイスやソフトウェアといった技術ソリューションを提供しています。
世の中の電子化が進み、印刷産業は斜陽産業と思われがちですが、決してそうではありません。皆さん印刷というと紙媒体だけと思ってらっしゃいますが、Tシャツの柄や壁紙、車のダッシュボードの木目まで、印刷は世界中に存在しています。印刷そのものは私たちが生きている間は物理的に無くならないと考えています。
現在は印刷手法のデジタル化も進み、弊社でもデータを送信すれば、すぐに印刷可能なデバイスを製作しています。印刷産業のDXが今後さらに進み、それにともない市場も広がっていくでしょう。その中で私たちは、さまざまなアプリケーションに対してどういった色を再現していくか、どれだけ豊かな彩りを技術で提供できるかという点を大切にしています。
ーー貴社の働く環境についてお聞かせください。
田中志佳:
「誰でも何でも話せる会社」だと思います。私の入社当時から、社員同士が比較的フラットな企業文化でしたね。
現在社内環境で注力しているのは、お客様の声を開発・製造現場に伝えるための仕組みづくりです。自分たちの製品が国内外でどのように使われ、受け入れられているかというのは、国内にいる開発・製造現場の人達にはなかなか伝わりにくいものです。お客様の声がもっと届きやすい環境をつくれば、社員のモチベーションアップやニーズへの深い理解につながり、新たなソリューションの提案が可能になるでしょう。
国内外に展開している企業だからこそ、「伝わる仕組み」づくりは欠かせないと考えています。
利益と社会貢献を両立する会社を目指す
ーー今後の展望を教えてください。
田中志佳:
色に関係するビジネスをさらに拡大していきたいと考えています。
私たちが開発した商品に、カラーマネジメントソフトがあります。これは印刷工程におけるプリンター間の色のずれを防ぎ、一貫した色の再現をサポートするシステムです。今後印刷がデジタル化する中で、こうした色に関するビジネスチャンスが多く出てくると思います。そこに対して常にアンテナを張り、ビジネスを広げる努力をしていきたいと考えています。それが印刷産業の10年後、20年後の発展にもつながるのではないでしょうか。
印刷業界には、製造工程におけるCO2の排出やプラスチックの海洋投棄といった環境面の課題がたくさん存在します。まだまだ先は長いですが、デジタル化が進み工程が短縮されていくことで、こうした問題は解決の方向に向かっています。印刷業というと3K(きつい、汚い、危険)の仕事といった印象を持つ方が多いかもしれませんが、印刷業界はもっと合理的でクリーンになれる可能性を秘めています。
弊社も今後さまざまなソリューションを提供するとともに、環境に配慮する「利益と社会貢献を両立する会社」として成長していきたいと考えています。伸びしろの大きい業界ですので、興味をお持ちの方にはぜひ弊社にいらしてください。
編集後記
印刷というとどうしても紙媒体をイメージしてしまうが、田中社長のお話を通して印刷に対する考えが大きく変わった。産業全体を盛り上げる存在である同社の今後さらなる飛躍が楽しみだ。

田中志佳/1960年和歌山県生まれ。University of Oregon(州立オレゴン大学)卒業。1985年に大日本スクリーン製造株式会社(現SCREENホールディングス)入社。本社勤務、欧米現地法人駐在を経て、2022年に同社の事業会社、株式会社SCREENグラフィックソリューションズ代表取締役社長執行役員に就任。