
株式会社フロンティアハウスは、「不動産投資をより身近に、より多くの方に」をミッションに掲げ、土地の仕入れから建築、販売、賃貸募集、賃貸管理までのワンストップサービスを展開する企業である。同社は独自のホームステージング戦略により、99%という驚異的な入居稼働率を達成している。設立に至った経緯をはじめ、100年企業を目指すストックビジネスについて、代表取締役社長CEOの佐藤勝彦氏に話を聞いた。
不動産営業の面白さと厳しさを体験した紆余曲折の会社員時代
ーー不動産業界を選んだきっかけをお聞かせください。
佐藤勝彦:
私が就活中の1989年は、いわゆるバブル期です。当時、不動産業界は花形の業界の一つであり、好況だったため、不動産業界での就職を志望していました。最終的には、憧れの横浜に本社があったことや、勢いのあるマンションデベロッパーということが決め手になって、朋友建設に入社しました。
しかし、朋友建設は総量規制の影響とバブル経済の崩壊もあり、入社3年目の1991年に民事再生(※)になってしまったのです。会社が危機的状況の中、多くの社員が辞めていきましたが、担当のお客様を最後まで見届けていかなければならないという正義感が若いながらもあり、朋友建設に残ることを決めました。
(※)民事再生:経営が悪化した企業が、債権者の同意のもと事業の再生や債務の返済を図る法的手続き
ーーフロンティアハウス設立までの流れを教えてください。
佐藤勝彦:
朋友建設では、ちょうど10年働きました。民事再生後も残留を決めたのは、会社が大好きだったことが理由のひとつです。
当時は飛び込みや電話営業が主流で、仕事の終わりが見えないような状態でした。しかし、同期や先輩と仕事終わりに飲みに行くことが楽しみで、仕事がきつくても頑張っていこうという一体感がありましたね。
民事再生で社員の数は1/3に減ったものの、再建に対する気運が高まっている者が集まっていたのが幸いでした。みんなの頑張りもあって、1998年にはメインバンクに一般債権を完済することができました。しかし、さまざまな事情が重なった結果、本社ビルを競売に出すことになったのです。
お客様を最後まで見届けたとういうひとつの充足感が生まれ始めたちょうど10年という節目に、みんなでずっと守ってきたマイホームのような場所を出なければならなくなってしまったのです。私はすでに結婚していて、3人目の子どもが生まれたタイミングでした。そういったいろいろなことが重なり、会社から独立することを決め、1999年に株式会社フロンティアハウスを設立しました。
ホームステージングの活用により入居稼働率99%を実現

ーー貴社のメイン事業についてお聞かせください。
佐藤勝彦:
弊社は土地仕入、建築、販売、賃貸募集、賃貸管理までのワンストップサービスを展開しています。取り扱う商材には大きく分けて、投資用不動産と居住用不動産、投資と居住をハイブリッドした賃貸併用住宅不動産があります。投資用の物件は家賃収入を目的としているのが特徴です。例えば、賃貸アパートや賃貸マンションが投資用物件に当たります。居住用の物件は購入者自身が居住するための一戸建てやマンションのことです。賃貸併用住宅は住まいの一部を貸し、家賃収入を住宅ローンの返済に充当することで、住みながら将来に向けた資産形成を可能とする商材です。
ーーなぜ、貴社では高い入居稼働率を実現できているのでしょうか。
佐藤勝彦:
賃貸住宅の入居者募集において、家具や照明などのインテリアで演出する「ホームステージング」を実施しています。家具が何もない空っぽの部屋を見ても、そこに住むイメージが湧きづらいと思いますが、ホームステージングを行えば、具体的な暮らしをイメージしていただけます。
また、弊社のホームステージングでは、プラスチック製の段ボールを使って家具を再現しているのも特徴です。実物の家具と違って部屋が傷つきにくく、簡単に搬入・搬出ができます。複数の物件でも使い回しがきくので、サステナブルの観点でも優れていると思いますね。
このような空室対策を実施して、物件のイメージ向上を図った結果、約99%という高い水準の入居稼働率を維持しています。
風通しが良く相談しやすい環境づくりを重視
ーー貴社の採用活動における取り組みについて教えていただけますか?
佐藤勝彦:
採用に関しては、新卒採用を10年にわたり行っています。中途採用は専門性や経験を重視しており、不動産業界での経験が豊富な方を積極的に採用しています。一方、バックオフィス系には異業種出身の方の割合も多いですね。
また、弊社ではみなとみらい本社にあるワーキングスペースを採用時のアピールとして活用しています。広いワンフロアなので、周りの人にいつでも相談しやすい雰囲気があり、社員同士の風通しが良いことがわかっていただけると思います。
また、オンライン会議用の個人ブースや自由に飲食できる共用部分もあります。そこにはコーヒーマシーンやビールサーバーも設置しており、終業後にワーキングスペースで同僚と1~2杯飲んでから退社するといったことも可能です。そのような場があることが、社員のコミュニケーションの活性化につながっています。
今後は都心の営業拠点を増やし、ボトムアップの体制を強化したい
ーー今後貴社で、力を入れていきたい点はどのような部分でしょうか。
佐藤勝彦:
主に力を入れていきたい点は、都心の営業拠点の強化と、逆ピラミッド型のボトムアップ体制の更なる推進です。
弊社は以前、渋谷に営業拠点を構えていましたが、コロナ禍をきっかけに2020年2月に横浜本社への移管を行いました。しかし、都内に物件を持つオーナーさまからは、東京に拠点があるからこそ、管理からリーシング(商業用不動産の賃貸支援)までを安心して任せられた、という声もいただいたのです。やはり都心に拠点があるほうが新規顧客の開拓にもつながると考え、今は都心の拠点を改めて増やしていくことを重要課題として位置づけています。
また、人財を最大の資産と考え、逆ピラミッド型のボトムアップ体制を推進した結果、不動産クラウドファンディングサービスや、飲食事業の開始など社内イノベーションの創出を実現しました。社長である私自身が、一番下から社員を支えながら、社員一丸となって「100年企業」という目標に向かって尽力したいと思っています。
編集後記
就職2年半での民事再生、会社への残留、そして独立。佐藤氏の波瀾万丈な経験は、フロンティアハウスの礎となっているようだった。ホームステージングや賃貸併用住宅の推進など、時代の変化に対応しながら成長を続ける同社。住宅のオーナーと入居者両方の立場に立った施策が、入居稼働率の高さにつながっているのだろう。社長の言葉から、100年企業を目指す確かな展望が感じられた。

佐藤勝彦/1966年生まれ。千葉県出身。1989年に株式会社朋友建設へ入社。民事再生を経験し、同社の再建に尽力した。1999年に株式会社フロンティアハウスを設立。2018年に中央大学大学院 戦略経営研究科修了・MBA取得。2022年には東京証券取引所TOKYO PROMarketに株式上場。