
中小企業のホワイトカラー業務を支援する株式会社ゼロプラス。同社は創業以来、製造業や卸売業を中心に、経営コンサルティングから補助金申請支援まで、幅広いサービスを展開してきた。加えて、近年はCO₂可視化や脱炭素教育の伴走支援など時代の要請に応える新たなソリューションの提供を開始した他、中小企業の事業承継を複数社実現し、事業経営に進出するなどコンサルティングサービスにとどまらない事業展開を行っている。クライアントの成長を支える同社の取り組みについて、代表取締役の大場正樹氏に話をうかがった。
中小企業が抱える課題に気づき、コンサルタントとして独立
ーー創業に至るまでの経緯を教えてください。
大場正樹:
大学卒業後、大手の非鉄金属商社に入社して、プロジェクトリーダーや営業職などを経験しました。特に新工場設立のプロジェクトに携わったときのことが、印象に残っています。そのプロジェクトでは、役員の方から「3億円で新工場をつくってほしい」と言われていました。工場は居抜きで購入していましたが、内部は未着手の状態。そこで計画の立案や人員の確保など、スピーディーな決断を重ね、わずか4か月で稼働に漕ぎ着けることができたのです。
その会社で14年ほど働いている間に、町の鉄工所などの中小企業の経営者と接する機会が多くありました。そして、「中小企業では、投資計画を考えたり生産性向上のための改善策を考えるようなホワイトカラーの人材がいない」ということに気づいたのです。「ホワイトカラーの仕事をパートタイムで提供できれば、中小企業の利益率が上がるかもしれない」というアイデアが思い浮かび、経営コンサルタントとして独立すると、2014年に法人化して、弊社を立ち上げました。
ーー独立したときはどのようなことに苦労しましたか?
大場正樹:
独立してから最初の注文をもらうまでに9か月くらいかかったことです。それまではお金が1銭も入ってこないので、この期間は貯金や退職金を取り崩して生活していましたね。その後、2013年、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」がスタートしたときに、補助金申請のサポートサービスを始めたところ、それ以降は順調に注文が入ってくるようになりました。
脱炭素化時代の経営支援で中小企業をバックアップ

ーー貴社の事業の特徴を教えてください。
大場正樹:
弊社の事業は主に4つに分けられます。1つ目は、公的支援策や補助金の申請支援。2つ目は、GX(※1)支援。3つ目は、自動化・省人化支援。そして4つ目は、教育です。
これらの事業に共通するコンセプトが「ホワイトカラーの力を届ける」です。現在は、インボイス制度の対応やDX、GX、各種認証取得など、さまざまな専門的知識を要するホワイトカラーの仕事が必要とされています。弊社は、主に製造業を営む中小企業に向けて、ホワイトカラーの業務を行なうサービスを提供してきました。
(※1)GX(Green Transformation):温室効果ガスの排出量削減を目的に、太陽光発電や風力発電などを中心としたクリーンエネルギーに転換していく取り組みのこと。
GXの重要な要素の一つである「脱炭素」においては、大企業だけでなく中小企業においてもCO2の削減が求められています。そこで弊社は、中小規模の製造・卸売業のお客さまを中心に、脱炭素の取り組み推進を支援してきました。
また、自動化・省人化については、子会社のロボプラスでロボットシステムインテグレーションを行っている他、シマモト技研、エスケイマシンという工作機械商社をグループ会社に持っているため、製造現場の自動化について、企画・開発段階から納入、メンテナンスまで対応することができます。
ーービジネスパーソンとしてどのような考えを大切にしていますか?
大場正樹:
仕事と遊び・趣味の境界をつくらないようにしてきました。仕事を遊びの延長線上にあるものとして位置づけることで、毎日が幸福で充実したものになります。よく「ワークライフバランス」ということが言われていますが、これは仕事と余暇の時間を分けて考えていますよね。私の考えは少し違います。
仕事を遊びの延長のように考えられれば勤務時間を幸福に過ごせますし、余暇の時間に新しいスキルを習得することで、有意義な時間の使い方ができると思うのです。「ずっと仕事のことを考えていなさい」と言っているわけではありません。生活の一部として仕事を楽しんでほしい、ということです。このような姿勢で仕事に取り組むことができる人こそ、一流のプロになれる人材だと考えています。
未来を見据えた新サービスを開発していきたい
ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか?
大場正樹:
今後は、新しい業界への参入を検討しているクライアント企業向けに、新しいサービスを展開したいです。具体的な内容としては、新規参入に必要な機械や工法の選定から人材教育までをパッケージ化したサービスを想定しています。
また、脱炭素の分野では、弊社では「カーボンデザイン」と呼んでいるのですが、開示の動きが世界的に拡大しているCFP(※2)を計算した後、商品あたりのCO₂削減の実行について一緒に考えるようなサービスを広めていきたいです。お客さまの業務負担をいかに楽にしながら、経営に必要なホワイトカラーの力を活かしていけるかということを中心に、新規商品・サービスの開発に取り組みたいと考えています。
(※2)CFP(カーボンフットプリント):商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの全体の流れのなかで排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、分かりやすく表示する仕組みのこと。
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
大場正樹:
社会情勢や環境の変化が激しい現代において、将来を見通しながら、クライアント企業が自らの得意分野に集中できるように支援していきます。クライアント企業の成長には、エンドユーザーとなるお客さまから支持されることが必要不可欠なので、まずはお客さまの信頼を得られるようにサポートしていきたいです。
また、経営者の高齢化により、事業承継に困られている中小企業が多くあります。弊社はこれまで2022年、2024年の2回、工作機械商社を事業承継させて頂きました。若いメンバーを経営陣として派遣し、単なるコンサルタントにとどまらず、弊社自らも事業経営を行っていくよう取組を進めています。これからも製造業、特に金属加工に関わる業界で事業承継・グループ化を推進したいと考えています。
編集後記
創業からわずか10年ほどで、中小企業の重要なパートナーへと成長を遂げた株式会社ゼロプラス。その原動力は、大場代表の持つ「中小企業の可能性を引き出したい」という強い思いにある。特に印象的だったのは、社会の変化を先読みし、常に新しいソリューションを模索する姿勢だ。中小企業が直面する課題に真摯に向き合う同社の存在意義は、今後もますます高まっていくだろう。

大場正樹/1975年生まれ。大学卒業後、大手非鉄金属商社に14年勤務し、国内工場の新設や中国子会社の経営再建などを実現。その後、経営コンサルタントとして独立。2014年に法人化し、株式会社ゼロプラスの代表取締役に就任。直近では中小企業版SBT申請支援、CO2可視化サービス「ゼロモニ」など、中小企業の脱炭素化を支援する事業を推進している。著書『インフレ時代を生き残る 下請け製造業のための劇的価格交渉術』(幻冬舎)『GX時代に下剋上を起こす 下請け製造業のための脱炭素経営入門』(ダイヤモンド社)