※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

コロナ禍の収束に伴い、キャンプを筆頭に上向きだったアウトドア業界の市場が頭打ちとなっている。その一方で、コアなキャンプ道具などのアウトドアギアやユニークなワークショップ展開で専門家から注目を集める企業がある。

2010年創業の株式会社アンプラージュインターナショナルは、北欧・北米の海外アウトドアブランドの正規輸入代理店として、約30のブランドを扱っている。アウトドアの枠に捉われない事業展開に臨む、代表取締役の本間光彦氏に話をうかがった。

弟と二人三脚で輸入販売ビジネスに挑戦

ーー創業までの背景を教えてください。

本間光彦:
船が好きだったことから、海運会社への就職を考えましたが、海運会社と同様の業務フローであった国際物流会社に入社しました。平穏にサラリーマン生活を続ける中、勤続17年目に、マレーシア転勤を命じられたのです。海外赴任が決まると長期間日本への帰国が難しかったため、約半年間だけ単身赴任した後、退社することに決めました。退社後は自身でビジネスを行う選択をしたのです。

輸入販売ビジネスをはじめるにあたっては、マレーシアでの体験も影響しています。日常的に英語を使って意思疎通をすることに慣れることができましたし、当初は輸出ビジネスも検討しましたが、現地にパートナーがいなかったこともあり、輸入販売ビジネスに挑戦することにしました。また、ほどなくして弟が一緒に働いてくれるようになり心強い味方になってくれました。

個人事業会社を創業したのは、帰国からわずか2カ月後の2010年2月です。実は、扱う商品を決めていませんでしたが、前職で国際物流や通関実務に知見があったことから、輸入販売業務を始めるべく準備を進めました。

ーー社名にはどんな意味があるのでしょうか?

本間光彦:
プラージュは仏語読みした娘の名で、「彼女と同じくらい大切なものを扱いたい」という思いを込めています。そのため、当初は子ども服を扱っていたのですがうまくいかず、好きだったアウトドア商品にシフトチェンジしました。

ーー創業後、どのように事業を展開したのですか?

本間光彦:
最初に手掛けたのは、アイルランドのやかんを扱う「Kelly Kettle(ケリーケトル)」で、このブランド1つだけでスタートした形です。販路がなかったため、アウトドアショップに飛び込み営業を行っていましたね。なかなか契約に至らなかった中、神戸のある登山用品店を訪れたことが転機となりました。その店舗にチラシを置かせてもらったのですが、チラシを手にしたアウトドア専門の問屋から、取引の打診があったのです。

問屋では、あらゆるメーカーのカタログを挟んだ分厚いバインダーを取引先の店舗に送ります。弊社の社名は「あ」からはじまるため、バインダーの1ページ目に位置していますが、その会社が取り扱うブランドはたった1つだけ。それがかえって興味を引いたようで、販路が広がりました。

出会う人に恵まれて事業が軌道に

ーー事業として軌道に乗り始めたのはどのあたりからですか?

本間光彦:
アウトドアブランドにコンタクトを取り続けている中で、スウェーデンの「MORAKNIV(モーラナイフ)」と契約できたことを機に開けていきました。MORAはスウェーデンの都市名で、良質な鉄が採れるナイフの名産地。モーラナイフは北欧を代表する老舗のナイフブランドです。

アウトドアギアは冬に売上が落ち込む傾向があります。そこで、これまで扱っていたケリーケトルと、燃料がなくてもファイヤースターターという着火用のマグネシウムの棒をナイフの背中で擦って火花を出し、着火することができるタイプのモーラナイフをセットにし、機能性の高い防災グッズとして打ち出しました。

当時、アウトドア用品を防災用に提案する事はあまり受け入れられませんでしたが、モーラナイフが口コミでナイフユーザーの間に瞬く間に広がり、すぐに売上に貢献するようになりました。最初は在庫が追いつかずに欠品することも多くありましたが、次第に在庫水準も安定させることができるようになり、順調に販売数が伸びていきました。

ーーモーラナイフとの契約はその後の事業展開にどのように影響しましたか?

本間光彦:
モーラナイフのスタッフは親切な方ばかりで、展示会に行くと同業他社にも関わらず弊社のことを積極的に紹介してくれました。そのおかげで、北欧とのコネクションが増えていきました。当時アメリカのブランドが中心だったアウトドアの輸入商社の中で、モーラナイフをきっかけに未開拓であった北欧圏にどんどん参入できたのです。

ビジネスの肝は信頼関係の構築にあり

ーーやりがいはどこにあるとお考えですか?

本間光彦:
ビジネスにおいて重要なのは、何よりも人間関係です。弊社を信頼してくれて、日本での販売を任せてくれた取引先に対し、しっかりとそのブランドの認知度を向上させ、販売数を伸ばしていって、先方の期待に応えることができれば凄く嬉しいです。また、日本のお客様に対しても、新しい商品やブランドを紹介することで喜んでいただけると大変励みになります。そうした仕入れ先からも、購入したお客様からも喜ばれるような商品やブランドを見つけることができたら、これに勝ることはありません。

ーー今後の展望をお聞かせください。

本間光彦:
現状は直営店事業からいったん撤退し、EC販売、卸売り販売、POPUP等のイベント販売の3つに注力しておりますが、特にECサイトの充実化を図っていきたいですね。

さらに、スポーツ&ライフスタイル系の商品も取り扱って事業領域を広げていきたいと考えております。

今後も良質なブランド開拓に注力していき、いずれは情報発信の拠点として東京に店舗兼オフィスを持てればと考えております。

編集後記

2024年からLA発のアクティブサングラス「グダー」の取り扱いを開始した本間氏。築き上げてきた立ち位置に満足することなく、新しい切り口で事業の発展を目指す。取材中の「人との出会いによって事業が成り立った」という言葉が印象的で、その人柄が企業の成長を後押ししたと感じた。

本間光彦/1969年山口県生まれ、関西学院大学卒業。約18年間国際物流会社に勤務したのち、2010年に個人事業会社としてアンプラージュインターナショナルを創業。代表として会社全般を統括しながら、特に海外ブランドとの関係強化や新規開拓に注力している。