※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

フィッシングボート・トレーラー・釣具のブランドを抱える株式会社ダイナミックス。同社は今でこそ順調だが、代表取締役社長の青木邦充氏が釣具の小売業として創業した当初は、その薄利さに苦しめられたとのことだ。

では、青木社長は、そこからどのように会社を大きくしてきたのか。その経緯と同社の成長を支えてきた強み、そして、これから目指す姿を青木社長に聞いた。

釣り好きを活かして始めた小売店から、3ブランドを抱えるメーカーへ

ーー青木社長の経歴をお聞かせください。

青木邦充:
ダイナミックスは、私が好きだった釣りを仕事にしようと思い、1996年に創業した会社です。最初は13坪ほどの小さな貸店舗で、釣具とボートの販売をしていました。しかし、それらの業界は小売業の価格競争が激しく、小さな会社が利益を確保するのは難しく、経営状況が厳しい状態がしばらく続きました。

この状況からなんとか抜け出せたのは、一念発起してメーカーへの転向を決めたからです。まず、ボートの製造から始め、2000年にFRP製のバスボート「SOUTHER(サウザー)」を開発すると、さらにボートを運ぶためのトレーラーにも着手し、ジェットスキー業界に売り込みを始めました。

しかし、トレーラー事業は利益がうまく上がらずに撤退を余儀なくされます。そこで、海外のトレーラー会社と合弁会社を設立する形にシフトすることにしました。

この合弁会社のパートナー会社との出会いが、その後の新たな事業につながることになります。私はパートナー会社との話の中で、軽トラックの荷台を切り離したような「ファームトレーラー」という存在を知りました。これに可能性を感じ、試しに日本で販売してみたところ、当時のアウトドアブームと相まって、SUVユーザーの間でヒットしたのです。

こうして現在のボート・トレーラー・釣具という弊社の柱が出来上がりました。それ以来、各ブランドを大切に育てながら、会社の成長に取り組んでいます。

ボート・トレーラー・釣具の市場で、情報感度と柔軟さを武器に成長を続ける

ーー貴社の事業内容を教えてください。

青木邦充:
主な事業は、フィッシングボート、トレーラー、釣具の企画開発、製造、販売、輸出です。

まずフィッシングボートは、先ほど紹介したボートと同じ名前の「サウザー」というブランドで展開しており、日本で使いやすいボートをつくることに力を入れています。たとえば「SOUTHER450」という製品は、狭い道路でも楽にけん引できるサイズ感でありながら、高い走破性があり、運転席周りの装備品も充実しています。

次に、トレーラーブランドの「BLAST TRAIL(ブラストトレイル)」では、ファームトレーラーのほかに、より簡素なつくりのカーゴやボートトレーラーやキッチンカーに使えるマルチトレーラー、さらに、トレーラーと合わせて使うテントやアウトドア用品などを展開しています。

そして、釣具ブランド「GEECRACK(ジークラック)」では、ルアーやバッグ、ウェアなどを取り扱っています。バスフィッシングから海釣りまで、多彩な製品ラインナップが特徴です。

ーー貴社独自の強みはどのような点にありますか?

青木邦充:
弊社の強みは、時代の流れと市場のニーズに合わせて、会社のあり方を変化できる点にあります。変化に柔軟に対応しながら成長していけるので、私はこれを「アメーバ方式」と呼んでいます。

会社が長く成長していくには、創業当初に小売からメーカーへと舵を切ったように、その都度自社の立ち位置を確立して行動を決めることが大切です。未来の予測に頭を悩ませるよりも、市場の動きに反応し、ユーザーのニーズを満たしていく方が現実的ではないでしょうか。

そこに、弊社のもう一つの強みである組織としての決断や行動の早さが組み合わせれば、細かなチャンスをつかんでいくことも可能です。過去には、海外の展示会でルーフトップテントに可能性を見い出し、即座に現地で注文を確定させたこともあります。

売上よりも大切なのは、魅力的な商品を届けるユーザーファーストの気持ち

ーー今後、貴社をどのように成長させたいとお考えですか?

青木邦充:
基本的には、これまで同様にボート・トレーラー・釣具を軸に据えて、スピーディーに時代の変化に応じて拡大・進化させていくことを続けていきます。現在の市場環境は変化が大きく、経済の先行きが不透明ですが、だからこそ弊社の強みが活きるはずです。

ただし、売上を追うのではなく、ユーザーにとって魅力的なものを提供し続ける姿勢を崩してはいけません。弊社は売上目標を定めておらず、売上とはあくまでユーザーのニーズを満たした結果であると考えています。弊社がしっかりユーザーを理解できていれば、それだけ売上も上がる。その姿こそが健全と呼べるのではないでしょうか。

これからもこの考え方を大切にし、市場の変化に適応していくことで、新しい価値を生み出し続けられる会社であれればと思います。

編集後記

変化を恐れず柔軟に対応し続ける姿勢は、流行の影響を受けやすいレジャーの分野において、非常に頼もしい強みといえる。これからも、未来を決めつけずに、目の前の事実に一所懸命に対応する力を磨いていけば、同社は自然とその影響力を増し、多くのユーザーから愛されるブランドへと成長していくことだろう。

青木邦充/1969年3月3日生まれ、岐阜農林高校卒業。オーストラリアでワーキングホリデーを経験後、1996年に株式会社ダイナミックスを起業。代表取締役社長に就任し、現在に至る。