※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

運送・物流企業の課題を解決できるさまざまなサービスを提供している株式会社ドラEVER。2000年にグループ1社目である照栄物流株式会社が設立されてから事業拡大を続け、現在は業界トップクラスのドライバー向け求人サイト「ドラEVER」や車両基幹システムの「運SOUL」、中古トラックの査定・買取を行う「ドラオク」「買いト楽ック」などの事業を展開している。今回は、同社の代表取締役である岡野照彦氏に、これまでの経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。

自身のドライバー経験を活かし、課題解決できるサービスを続々リリース

ーー代表取締役に就任されるまでの経緯をお聞かせください。

岡野照彦:
中学を卒業後、18歳で運転免許を取得し、「頑張れば頑張った分だけ稼げる」というところに魅力を感じてトラックドライバーの道へ進んだのが、現在まで続くキャリアのきっかけです。21歳で独立し、その後「自分も会社を経営したい」と思い、法人を設立。従業員を雇い、少しずつ事業規模を拡大してきました。自分とトラック1つで色々なところへ行けるこの仕事は、今振り返ると自分の性格に合っていたように思います。

ーー他の事業を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

岡野照彦:
トラックを約100台所有して運送事業を営んでいましたが、景気変動に影響されやすいことが課題であると認識していました。景気に影響されにくい事業も何かできないかと思案していたときに思いついたのが、中古車の査定・買取事業です。「運送会社は、業績が悪化するとトラックを手放す。つまり今は、中古車の買取をする会社が儲かっているのではないか」と気づき、事業を始めました。

事業が軌道に乗り、経営についてより深く学ぶうちに知ったこととして、たとえば飲食業界で牛丼屋とレストランの両方を運営している会社があるように、景気変動があった際に異なる影響を受ける2つの分野を手がけるという経営のセオリーがあります。不景気の時は手頃な価格の牛丼が人気で、好景気の時は少々値が張るレストランに出かけたくなる、というイメージです。弊社が手がける事業も、一つひとつが全く無関係のものではなく、隣接する事業でありながら、異なる局面で必要とされるサービスばかりを展開してきました。

運送業界のIT化を推進するために、求人サイトをつくり運営する鋭い感覚

ーー運送業や中古車買取事業を手がけるなかで、気付いたことはありますか。

岡野照彦:
気付いたのは業務効率化の必要性です。弊社では車両基幹システム「運SOUL」を開発し、同業他社に販売しています。運送はIT化・DXがあまり進んでいない領域だといわれていますが、このサービスは、自身で運送会社を経営していて気付いた課題を解決するために始めたものです。

当然ですが、運送業界では、トラックやドライバーがいないと業務が進みません。一方で、トラックが積載可能な最大量まで積み込むことで効率的に業務を進めることができますが、いつもそのようには進みません。また、ドライバーの労働時間も以前より短縮する必要に迫られています。人手と作業に費やす時間を増やせば対応できますが、人手不足が叫ばれる運送業界で、このような方法をとれるところはほとんどないでしょう。

私は、この問題を解決するためのカギとなるのが業務効率化であり、今後も事業を継続するうえで必要不可欠であると感じていたのです。また、このシステムを開発した理由には、私自身、効率的に仕事を進めるのが好きだったこともあります。

そこで弊社は「車輛」「人」「お金」などを一括管理できる便利なシステム「KANRI」を開発・リリースしました。しかし、「KANRI」のリリース当初は「パソコンなんて分からないよ」とおっしゃる同業の社長がたくさんいました。そこで始めたのが、ドライバー向け求人サイト「ドラEVER」です。その後、管理システムは「運SOUL」に発展し、現在に至ります。

ーーなぜ求人サイトをつくろうと思ったのでしょうか。

岡野照彦:
ドライバーは普段の業務ではあまりパソコンを使用しません。そのため、仮に弊社のシステムを導入しても、使いこなせなかったり、使用を敬遠したりする方もいることを想定しました。そこでまずは、普段は運転をメインの業務とする運送会社で働く方々にパソコン操作に慣れてもらおうと考えたのです。その入口として何が最適か考えているときに、ドライバーの人手不足が頭に浮かびました。ドライバーのパソコンスキル向上と人手不足の解消を一緒に実現できればよいのではないかと思い、ドライバー求人サイトをリリースした次第です。

こうしたきっかけで始めましたが、私自身も人材不足にはいつも悩まされていたので、このサイトが今では業界トップクラスのドライバー求人サイトになるまで成長したことを嬉しく思っています。

私がドライバー出身で、運送会社を経営しているということから、同業他社が直面する悩みに応えられる求人サイトと車両基幹システムの両方をつくることができ、新たな事業展開につながったと思います。

物流・運送業界を世界的な視野でとらえる。業界を良くするために影響力を増していきたい

ーー今後の事業展開について教えてください。

岡野照彦:
現在も多くの事業を展開している弊社ですが、これからますます運送業界のために影響力を強めていきたいと考えています。その第一歩として、現在はIPO(株式公開)の準備を進めているところです。株式を公開し、多くの方に弊社に出資していただくことで、より積極的に「運送業界のためになる事業」を推進していくことができると思っています。

現在、弊社には伊藤忠商事株式会社や株式会社SXキャピタル、株式会社シグマクシスインベストメント、西酒造株式会社といった各社が出資してくださっています。資金力を高めながら、社会的信頼の高い会社になっていきたいですね。これからも、自社だけでなく業界全体を良くしていきたいと考えています。

50年後という遠い未来のことは想像もつきませんが、“来年はどうなりたいか”を積み重ねていくことで50年続く会社になっていくと思います。たとえば、現在弊社の車両基幹システムは運送会社向けに販売していますが、これを車両管理だけでなく業務全体を管理できる「業務基幹システム」にレベルアップさせて、運送会社と取引をしている会社にまで広げることを計画しています。運送会社と接点がある会社からサービス提供を始めるのは、運送会社と似ている点があるためです。「運送会社が作ったシステムは使いやすい!」と喜んでいただけると嬉しいですね。現在の事業を行ううえで気付いたポイントや、取引先の方の声などを聞いて事業を拡大していきたいです。

ーーその他、具体的な事業のアイデアはありますか。

岡野照彦:
やはり運送業界が長年にわたり課題としているのは「人材」です。弊社は求人サイトに企業の求人情報を掲載し、ドライバーからの応募を広く募るほか、企業が必要とする人物像をヒアリングし、マッチする人材を一人ひとり紹介するサービスも行い、ドライバー人材の確保・育成で多くの実績を持っています。

また、グローバル化が進む昨今、日本国内だけで日々の業務を進め、事業を拡大しようとするのではなく、海外にも目を向けていきたいです。中でも私が構想しているのは、日本から海外へのドライバー派遣です。勢いのある海外諸国にドライバーを派遣すると、好景気ということもあってさまざまな依頼が舞い込むでしょうし、その仕事ぶりが評価されるでしょう。日本のドライバーによる質の高いサービスは、現地の方にも満足していただけるのではないかと考えています。

日本で真面目に働いてきたドライバーは、世界的にも高い評価を得られるでしょう。派遣された国や地域への貢献にもつながり、世界全体に好影響を与えるのではないかと思います。

さらに、DX化もこれから推進していきたいところです。運送会社のオフィスに基幹システムを導入するだけでなく、トラック一台一台にデータ収集端末を設置して、ドライバーや荷主の方のニーズなども把握したいと考えています。それが弊社が次に行う事業のヒントになるかもしれません。燃料代も高騰している今、業界のためにも改善を続けていきたいですね。

編集後記

岡野氏が運送業界に入ってから約30年、グループ会社の設立からは25年が経った今も、「自分のドライバー経験を活かして、周囲に良い影響を与えたい」と新たなアイデアを事業化し続けている積極的な姿勢が印象的だった。物流・運送業界には旧態依然の部分も多いと考え、「では、改善していこう」と動き出すことのできる柔軟な体制を持つ同社は、今後ますます成長していくことだろう。

岡野照彦/1977年生まれ。18歳で運転免許を取得したことをきっかけに、ドライバーの道へ進む。運送会社のトラックドライバーから始め、個人事業主に。2000年にグループのはじまりとなる1社目の「照栄物流」を設立。中古車販売・人材派遣業などにも事業規模を拡大し現在に至る。