
東洋電化工業株式会社は、大正8年創業の老舗中間原料メーカーである。自動車や工作機械などの鋳鉄・製鉄製品に使われる、鉄を強くする添加剤を製造販売する特殊アロイ事業のほか、高炉メーカーなどで使われる原料を輸入販売する商事事業、飼料用リン酸カルシウムやゴム・プラスチック製品の充填剤などに使われる炭酸カルシウム、金属の溶接・切断に用いられるアセチレンガスの原料であるカーバイドを製造販売する化成品事業、資源を無駄にせずリサイクルして活用する循環型社会を目指す資源再生事業を展開している。
組織の課題を解決するために行った社内改革や、同社ならではの強みなどについて、代表取締役社長の入交建太氏にうかがった。
少しずつキャリアを重ね、抜本的な組織改革を実現
ーー家業に入った際、会社に対してどのような印象を持ちましたか。
入交建太:
前職は大手飲料メーカーに勤めていたのですが、企業文化がまったく違うなと思いました。新しい事業にチャレンジしていく開拓者精神は素晴らしいと感じた一方で、改善すべき点もあると感じたのです。
特に、人事制度や組織の活性化の面は、改革をすればもっと良い会社になる余地があると考えました。これは会社側に伝えなければと思い、入社1ヶ月の時点で気になった点をレポートにまとめて提出したことを覚えています。
その後、役職が上がるごとに自分の意見が反映されやすくなり、組織改革の重要性について、繰り返し周囲にアピールしてきました。
ーーその後、社長に就任してからの取り組みについて教えてください。
入交建太:
弊社の課題点を解決するため、年功序列要素が残っていた職務等級制度の見直しを行い、求める人材像や評価基準を明示した新人事制度を策定しました。以前の年功序列要素が残った人事制度では何もしなくても給与が上がっていくため、そんなに頑張らなくてもいいという雰囲気があったのです。
現状維持のままでは新しいイノベーションは生まれず、企業の成長が鈍化してしまいます。そこで、会社が求める要件を明確にした上で、達成度に応じて評価する仕組みに大きく変更しました。
ただ、単なる成果主義ではなく、プロセスも重視した評価を心がけています。こうして評価制度を改変した結果、努力した分だけ正当に評価されるようになり、社員のモチベーションアップにつながっています。
社内風土も以前と違って、社員の方から積極的に意見が出るようになり、組織の活性化が進んでいると感じています。
幅広い業界で必要とされる原料を提供しながら、スピーディーな対応力を強みにする

ーー改めて貴社の事業内容についてご説明いただけますか。
入交建太:
弊社の事業は大きく4つの柱に分かれています。1つ目が特殊アロイ事業です。自動車のエンジン周りやブレーキなどに使用される鋳鉄の添加剤を製造しています。また製品の原料として、郵便ポストやマンホールのフタ、風力発電のプロペラなどにも使われていますね。
2つ目が高炉メーカーなどで使用される原料を海外から輸入販売する商事事業です。合鉄金のひとつであるフェロシリコンは、ビルや橋、自動車、ガスのパイプラインなど鉄が使われているところには必ず使われています。
3つ目がカーバイド、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムの3製品を展開している化成品事業です。カーバイドは主に金属の溶接や切断に用いられる溶解アセチレンガスの原料として使われています。リン酸カルシウムは配合飼料の添加剤へ、炭酸カルシウムは製紙やゴム製品の製造に使用されています。
4つ目が資源再生事業です。この事業では主に四国電力の火力発電所から出る石炭灰を無害化し、土壌改良剤として再利用する取り組みを行っています。
ーー貴社の強みについてお聞かせください。
入交建太:
弊社の最大の強みは、お客様へ直接お話をうかがいながら、緊密な関係を構築していることです。また、お客様の工場で実際の使用現場を確認しながら、より良い使用方法の提案ができるのも特徴です。
営業担当者の多くは製造現場での経験を持っているため、その場でお客様の技術的な困りごとに対しアドバイスができます。これにより、お客様のニーズに素早く対応しています。
社員が疲弊しないよう配慮した環境づくりに挑戦
ーー職場の環境づくりに関してはいかがですか。
入交建太:
「仕事は厳しく、雰囲気は明るく」をモットーに、社員が働きやすい環境づくりに注力しています。基本定時退社を目標にしており、有給消化も推進しています。このように、決められた時間内は仕事に真面目に向き合いながら、プライベートの時間も確保できるよう配慮しています。
また、社員が自分の意見を気軽に言いやすい雰囲気づくりを心がけ、安心して働ける職場を目指しています。
ーー今後の事業戦略についてお聞かせください。
入交建太:
弊社の製品は自動車のエンジンにも使われていますが、EV化により1台当たりの使用量が減少していくことが予想されています。そのため、既存のお取引先様に対し、他に私たちが貢献できることがないかを積極的に提案営業をしようと考えています。
弊社は中国やタイにも工場があるので、海外の取引先を含め、新たな可能性を探っていきたいですね。
また、市場全体のニーズが減り、業界内での競争が激化する中で、お客様に選ばれ続けることが重要だと考えています。そのために、営業部門と研究開発部門が一体となって、新たな製品の開発を進めています。
ーー最後に求職者の方に向けてメッセージをお願いします。
入交建太:
弊社では社員が安心して安全に働ける環境づくりに力を入れています。具体的には、津波等の災害が生じたときに、工場内に避難できる高台や施設を建設し、社員の安全を第一に対策を行っています。また、大規模地震といった自然災害が発生した際の事業継続計画(BCP)を立て、リスク管理を徹底しています。
弊社は努力が正当に評価され、一人ひとりの意見が尊重される環境です。主体的に行動でき、積極性を持って仕事に取り組んでいただける方をお待ちしています。
編集後記
入社時から現状維持を良しとする社内文化に課題を感じ、組織改革をけん引してきた入交社長。創業から100年以上続く技術を継承し、さらに組織力が向上した同社は、今後さらなる成長を遂げることだろう。東洋電化工業株式会社は、高い技術力と顧客のニーズを瞬時に汲み取る対応力で、ものづくりの現場を支えていく。

入交建太/1962年高知県出身。1986年立教大学卒業後、アサヒビール株式会社に入社。2004年東洋電化工業株式会社に入社し、2007年に取締役、2010年に常務取締役、2012年に代表取締役副社長の就任を経て、2016年代表取締役社長に就任。