※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

世界中のエネルギーが届かない場所に仮設電力や空調エネルギーなどを供給しているAggreko Japan(アグレコジャパン)株式会社。そんな同社の取り組みは、人々の暮らしとどのように関わっているのか。加藤社長に事業内容や今後の展望について話をうかがった。

世界に70ヵ国以上、200以上拠点を持つ、エネルギーソリューションのグローバルリーダー

ーー貴社の事業内容を教えてください。

加藤慎章:
Aggreko Japanは、英国に本社を構えるエネルギーソリューションのグローバル企業であるAggrekoの日本法人です。

主な事業内容は、発電機や冷暖房設備などのエネルギー供給、データセンターなどでのロードバンク(熱負荷試験装置)のソリューションなどに加え、バッテリーエネルギー貯蔵システムの構築など多岐にわたります。また、自治体と連携した仮設電源の設置など、災害時の緊急対応も重要な役割の一つです。

近年、夏の厳しい暑さを背景に、生産現場への冷房設備の導入もニーズが高まっており、こちらも重要な業務の一環となっています。さらには、建設現場への仮設電源の設置、イベント会場での補助電源の提供、そして電力インフラが整備される前のデータセンターへの一時的な電力供給などがあります。

ーー貴社独自の強みはどのような点にあるとお考えですか?

加藤慎章:
弊社は世界に200カ所以上の拠点があり、豊富な設備をリアルタイムで動かすことが可能です。グループ全体で非常用発電設備の電力供給量は約10ギガワットと、実に原子力発電所10基分に相当します。

世界規模の視点で、必要な場所に必要な数の施設を集めたり、緊急時に迅速な対応ができたりといった、グローバル企業ならではの圧倒的な規模感と高い柔軟性が強みだといえるでしょう。

東日本大震災や東京オリンピック2020でも私たちの生活を支える

ーー貴社が携わった代表的な事例にはどのようなものがありますか?

加藤慎章:
特に印象深かったのが、2011年の東日本大震災です。当時は福島第一原子力発電所や複数の火力発電所が被災し、電力供給が深刻な危機に陥りました。

この危機に立ち向かうために、世界中から発電施設を収集し、同年夏までに200万kWの緊急発電所を設置させ、電力不足に貢献することができました。

ほかにも、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の電力供給を担当しています。また、フォーミュラー1やフォーミュラーEの公式スポンサーとして、エネルギー供給を担当しております。フォーミュラー1については、環境に配慮して、すべて二酸化炭素の排出量が少ないHVO(バイオ燃料)を利用して会場全体の電力を賄っています。

Aggreko Japanだからこそできることと成すべきこと

ーー加藤社長が貴社の強みを活かして実現したいことをお聞かせください。

加藤慎章:
Aggreko Japanが目指しているのは、弊社が保有する多様な施設とネットワークの力で、人々の生活や経済活動を支えられる存在になることです。

東日本大震災の際に対応したように、地震や台風などの自然災害が起こった場合でも迅速に電力を届けられれば、被災された方々の生活や地域の機能を早く回復させることができるでしょう。

そのためには、自治体との災害対応協定の締結だけでなく、すでに自治体と災害協定を結んでいる企業との連携強化も必要です。人々との結びつきが強い会社と弊社の「発電施設を持っている」という強みが合わさることで、全国どこにでも早期の電力供給が可能になります。

また、工場やデータセンターの新設時に発生しがちな、送電線が整備されるまでのロスタイム削減も取り組むべき課題です。新設箇所によっては5〜10年もの間待たされるケースもありますが、弊社の仮設電源を使えば、その期間を大幅に削減できますし、撤去も容易なので、送電線が整備されたあとの負担も少ないです。

さらに活躍の幅を広げるために、組織強化に必要なこととは

ーー今後、貴社をどのように成長させたいとお考えですか?

加藤慎章:
今後、弊社のさらなる成長に向けては、販路の拡大や新たなパートナーシップの構築が重要になると考えています。特に、災害が多い日本に対応するため自治体との災害協定との連携強化を軸に、より多くの現場へ価値あるエネルギーソリューションを届けていきたいと考えています。

特に、営業部門への積極的な人材投資を加速させ、より広いネットワークの構築や潜在顧客へのアプローチ、幅広い業界へのサービス展開を実現していけると考えています。

また、管理部門の強化も重要なテーマです。シンガポールやドバイ、フィリピンに配置している管理部門スタッフを活用し、グローバル規模でバックオフィスの効率化と国際連携を強化できる体制を整備していきたいところです。

そして、社員一人ひとりが自分の成長を実感できる環境づくりも大切です。個々の努力が正当に評価され、成果が直接報酬に反映される体制を維持し、会社と社員がともに成長できる企業であり続けたいですね。

編集後記

加藤社長が目指すAggreko Japanの未来像はエネルギーソリューションで社会を支える存在だ。社会的価値が極めて高いビジョンだが、同社の規模感とネットワークの広さがあれば到達できることだろう。近い将来、同社の名が安心感の象徴として広まっていくことは想像に難くない。

加藤慎章/横浜国立大学工学部卒業、バージニア工科大学と上海交通大学での国費留学を経て横浜国立大学大学院を修了、その後筑波大学大学院でMBAを取得。2000年に中部電力株式会社からキャリアをスタートし、2018年にGCLニューエナジー・ジャパン株式会社のCEO首席代表に就任。2020年株式会社ETSホールディングス代表取締役社長に就任し、さらに2025年からはAggreko Japan株式会社の代表取締役社長兼北アジア総括代表に就任。日本法人に加えて韓国及び台湾法人の代表も務める。