※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

株式会社TCL JAPAN ELECTRONICSは、世界160カ国以上に展開する中国発の総合家電メーカーの日本法人だ。テレビ・モニター製品で知られる同社だが、音響製品や冷蔵庫・エアコンといった白物家電なども積極的に開発し、近年では世界的に存在感を増している。今回、同社の代表取締役である蒋賛氏に、これまでの経緯や今後の展望などについて話をうかがった。

中国と日本の消費者の感覚の違いをとらえ、独自戦略を立てていく

ーーこれまでのキャリアについて教えてください。

蒋賛:
大学院を卒業した後、通信機器の大手メーカーに入社しました。やりがいを持ち働いていましたが、2021年に自身のキャリアについて考え、TCL集団に転職しました。

ーー日本市場について、どのような印象を持っていますか。

蒋賛:
2024年に弊社日本法人の代表取締役に就任しました。TCLグループとして、日本のマーケットは成長性があり、非常に重要視しています。実際に日本に来て感じたのは、消費者の知識が豊富だということです。家電を購入する際も、機能面などを調べたうえで質問してくることが多いため、海外と同じ戦略ではいけないと実感しています。

ーー中国をはじめ世界中で存在感を高めている総合家電メーカーとして、日本ではどのような戦略を立てていますか。

蒋賛:
日本の消費者の方が気にする「機能面」ですが、弊社は高い技術力を持ち、多くの投資をして機能面にこだわっており、十分満足していただけると捉えています。グループ会社にはCSOTというパネル専門のメーカーもあり、2009年から累計で6兆円ほど投資して技術力を高めているほどです。

また、テレビメーカーとして知られてきた弊社ですが、冷蔵庫やエアコン、サウンドバーなども製造・販売しています。そうした点をしっかり広報して「総合家電メーカー」という位置を築くことで、規模を拡大していきたいと考えています。

「視聴体験への要求」は高まり続け、メーカーとして応える責任がある

ーー日本では「若者のテレビ離れ」という問題もありますが、TCLの成長戦略について教えてください。

蒋賛:
中国でも、若者のテレビ離れは進んでいます。しかし一方で、質の高い視聴体験をしたいという消費者の方が増えている現状も弊社は捉えています。

そうしたニーズに応えるために、弊社では「画質の良いテレビ」「インテリアになじむ低反射モニター」などを開発し、これまでにない製品を市場に送り出し、話題になってきました。

これからも、テレビ・モニターに関しては大画面化・高画質化を推進していく予定です。実際に、音響メーカーと協力してさらにハイスペックな製品を開発するなどの取り組みも行っています。

さらに、その他の製品に関しても日本にどんどん紹介していく考えです。たとえばサウンドバーはグループ会社がメインで開発していますが、同業他社への技術提供も行うほどハイクオリティなものが完成しています。

欧米市場・アジア市場での経験を元に、日本市場独特のニーズも捉えたうえで必要とされる製品を発売していく計画です。アメリカではウォルマートなどのスーパーマーケットに弊社製品が並んでいます。そうした光景を日本でも見られると嬉しいです。

ーー販売方法は家電量販店やスーパーマーケットなどでの展示販売になるのでしょうか。

蒋賛:
TCLは、オフラインとオンラインを統合した全チャネル販売戦略を採用しており、量販店やECサイトはTCLの戦略的パートナーとして長期的に協力しています。これにより、日本の消費者により高性能な製品を提供し、テクノロジーによる生活の質の向上を実感していただけるよう努めています。

また、自社ECサイトの改善にも取り組んでおり、より便利でスムーズな購入体験を提供することを目指しています。

しかし、販売チャネルに関わらず、TCLが最も重視しているのは、日本の消費者により良い製品を提供し、それを適切に伝えることです。優れた製品をしっかりと紹介し、より多くの消費者に体験してもらうことこそが、成功への道だと考えています。

TCLは、日本市場に多様な製品を展開するうえで、すべての販売チャネルを重要視しており、それぞれのチャネルに積極的にリソースを投入し、さらなる拡大と最適化を進めていきます。

日本市場を見据えた時、日本の消費者の特性を知る新たな人材の採用は必要不可欠

ーー今後の事業展開について教えてください。

蒋賛:
日本でさらに存在感を示す総合家電メーカーとなるために、採用活動を積極的に行い、マーケティング・営業・物流などの人員も強化していきたいと考えています。

弊社がこれまで得てきた機能面や販売促進手法などのノウハウを再現するだけでなく、日本市場独自の特徴などを捉えた戦略を立て実行していきたいと考えていますので、日本人の好みや考え方などを教えてくれる方の力を必要としています。将来的には研究開発センターを日本国内につくり、テレビの専門家・画質の専門家・音響の専門家などが力を合わせて新製品を開発していると理想的ですね。

将来的には日本の消費者の方にも「TCLの製品は、機能面が優れている」「TCL製品を使うことで、生活が豊かになった」「家電を買う際は、TCL製品も選択肢に入れよう」と思っていただけるよう、会社規模を拡大していきます。

編集後記

日本法人設立10周年を迎えた同社。そして、代表取締役に就任して1年が経った蒋賛氏。中国やアジア圏では有名な「TCL」だが、日本での知名度はまだまだ伸びしろがあると考え、具体的な戦略を立案する前向きな姿が印象的だった。同社はこれから蒋賛氏のもと、主力製品のテレビ・モニターだけでなく生活にまつわる幅広い製品を日本でも販売していく。日本で家電製品を購入する際に「TCL製品も選択肢に入れよう」と誰もが思う世の中も、近いうちに実現するのかもしれない。

蒋賛/1987年、中国湖南省株洲市生まれ。2012年、湖南大学金融・統計学院の大学院修了。2021年7月にTCLグループに入社し、2024年1月よりTCL日本法人の代表取締役に就任。