
文具メーカーに起源を持ち、メーカーと商社機能をあわせ持つ株式会社ハピラは、スピーディーな生産体制と販売力を強みとしている。近年では文具のほかに、好きなアイドルやアニメのキャラクターを応援する「推し活グッズ」も展開し、次々と新たな商品を生み出している。
これまでの同社の沿革や商品開発のこだわり、文具全体の売上が低迷する中での今後の展望などについて、代表取締役社長の恩田英博氏にうかがった。
さまざまな業界を渡り歩き、文具業界の道へ
ーーまず恩田社長のキャリアについてお聞かせいただけますか。
恩田英博:
広告代理店に就職した後、芸能事務所に転職しました。どちらも華やかな業界だったのですが、当時は長時間労働がネックになっていたため、結婚を機により良い労働環境を求め、物流業界に転身します。
当初はトラックドライバーとして働いた後、物流倉庫で商品管理をする仕事に移りました。ただ、世紀末の西暦2000年を迎える頃に、このままこの仕事を続けるべきか悩むようになります。そんな中、今の会社の先代社長から声をかけていただいたのです。
社長とは顔見知りだったので、「何かあればぜひうちに来てください」と言われており、一度オフィスを訪問してみることにします。
実際に話を聞いてみると、豊富な実績があり、将来性もある会社だと感じましたね。また、文具業界の流通の変化に伴い業績も上がっていると知り、入社を決めました。そこから現在に至るまで、社会人生活の半分以上を過ごしてきました。
いち早く海外での生産を進め、コストカットを実現。新たな活路となった推し活グッズ事業

ーー貴社の事業内容について教えてください。
恩田英博:
弊社は主に、文具や雑貨、推し活グッズなどを取り扱っており、メーカー機能と商社機能をあわせ持っていることが特徴です。海外の協力工場で自社ブランドの商品を製造し、国内で販売する商材と仕入れ品の販売を行っています。
製造と仕入販売をどちらも自社で行っているため、相乗効果を発揮できる点が、他社との差別化になっていますね。弊社の起源は、株式会社スガタという文具メーカーです。創業者はもともと文具問屋の経営者をしていましたが、国内生産の文具ではいずれは安価な海外製品に太刀打ちできなくなっていくと感じていました。
そこで文具問屋の経営者を辞め、海外の工場で文具の製造をするメーカー事業会社を新しく立ち上げたのです。当時は海外製の文具雑貨がまだ日本に普及していなかったため、安さが評判となりました。
こうした安価かつスピーディーな製造体制は、現在も弊社の強みとなっています。その後、包装用品の事業を営む大明商事株式会社と合併し、株式会社ハピラとなりました。
ーー推し活グッズの製造・販売を始めたきっかけは何だったのですか。
恩田英博:
少子化やペーパーレス化の影響を受け、文具市場は頭打ちになっていました。そうした中、社員からの提案を受け、新たな挑戦として始めたのが、推し活向けの商材の製造と販売です。
推し活グッズを展開する「コレサポ」シリーズでは、うちわカバーや装飾用グッズ、缶バッジカバーなどを取り扱っています。推し活ブームの波に乗り、現在では弊社の新たな看板商品となっています。
ーー商品開発において大切にしている点を教えてください。
恩田英博:
自分が買いたいもの、あるいは自分の周りの人が欲しいと思える商品をつくることです。自分が本当に欲しいと思える商品でなければ、お客様に心から勧めることはできませんよね。そのため、こちらからこの商品をつくりなさいと指示するのではなく、開発と営業が協力しながら全社で商品アイデアを出してもらうようにしています。
今後注力したい海外展開と後継者育成について
ーー社長就任後は、どのような取り組みを行ったのでしょうか。
恩田英博:
私が就任した2022年は、世界的な原材料価格の高騰や、物流コストの上昇などさまざまな課題がありました。それでも社員一丸となって取引先との価格交渉を重ね、徐々に収益を回復させてきました。
ただ、為替の影響は依然として続いているため、これからも経営改善を進め、2021年当時の利益水準への回復を目指しています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
恩田英博:
今後強化したいのが、弊社製品の海外展開です。日本発の文具は海外でも需要が高く、円安の影響を受けないというメリットがあります。特にこれまで取引のある、中国市場への本格進出を検討しています。
また、経営幹部の育成も重要な課題です。今の経営陣が会社を去るときのことを考え、今のうちから人材を育てていかなければいけないと考えています。そのため、社員たちには力を付けてもらい、どんどん私たちを追い越していってほしいですね。
さらに、限られた人数で利益を挙げるため、社員1人当たりの生産性を高めたいと考えています。まずは1人当たりの生産性1億円超えを保ち続けることを目標としています。それに伴い、人事評価の見直しも進めていきたいですね。社員の成果を正当に評価する仕組みをつくり、全員が納得のいく評価体制を構築していきます。
チャレンジ精神があり、クリエイティブな仕事がしたい方に来ていただきたい
ーー最後に貴社への就職を検討されている方々へメッセージをお願いします。
恩田英博:
弊社はとても働きやすい環境だと自負しています。部署や年齢の垣根が無く、同じ趣味を持った人同士で話が弾む場面もよくありますね。相談されたときは親身になって解決策を考えるなど、誰も置いてけぼりにせず、互いにフォローし合う文化が出来上がっています。
また時短勤務やテレワークも取り入れ、働き方を自分で調整できる体制を整えています。
なお、弊社は自社で商品の企画を行っているので、新しいことに挑戦したい、自分のアイデアを形にしたい方に向いていると思います。社員一人ひとりの意見を尊重し、自由に行動できる会社づくりを心がけていますので、弊社に興味を持たれた方はぜひお越しください。
編集後記
グローバル化やデジタル化、急激な円安などさまざまな環境変化に直面しながらも、自身の経営力で着実に利益を出し続けてきた恩田社長。インタビューを通して、社員一人ひとりが持つパワーを信じ、それぞれの思いを尊重する姿勢が印象に残った。株式会社ハピラはこれからも社員との結束力を活かし、どんな荒波も乗り越えていくことだろう。

恩田英博/1965年生まれ。東京都出身。さまざまな業界で経験を積み、2000年にハピラへ入社。営業・商品開発・商品管理部門を経験し、取締役営業部長を経て、2022年代表取締役社長に就任。