※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

1963年の創業以来、60年以上に渡って教育分野での実績を積み重ねてきた、株式会社ODKソリューションズ。同社が開発した大学受験ポータルサイト「UCARO®」は、日本の大学受験生の半数以上が利用する基幹サービスへと成長した。さらに、NFT(※)を活用して学生の体験を記録する「アプデミー®」や、地域と学生をつなぐ「Local Bridge®学生局」など、次世代を見据えた新規事業も展開している。テクノロジーで社会課題の解決に挑む同社の代表取締役社長、勝根秀和氏に話をうかがった。

(※)NFT(Non-Fungible Token):ブロックチェーン上で発行・取引される偽造不可能な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータのこと。

上司の支援を受けながら積み重ねた成長

ーー社長の経歴を教えてください。

勝根秀和:
学生時代の学業に関しては、唯一数字に強かった事もあり、それを活かせるシステムエンジニアの道を選びました。1987年にSEとして入社、その後は、営業企画に携わっていました。営業企画担当になった頃から、新しいサービスを考える事が好きで、顧客である大学の課題を解決したいという強い思いがありました。

当時は、まだ大学がインターネットを利用した学生向けサービスが一般的ではなかった時代ですが、大学のご担当者の方から、ドコモの携帯で利用できるiモードのことを聞き、「これを使って何かできないか」と考えるようになったのです。色々と試行錯誤をしながら、大学へ何度も提案を行い、日本で初めて携帯を利用した就職情報サービスが誕生しました。

また、2000年代に入ってインターネットが一般に普及し始めてからは、インターネット出願のサービスや大学受験ポータルサイト「UCARO®」の立ち上げなどにも携わりました。入社当時から、上司の采配もあり失敗を恐れず挑戦できる環境があり、さまざまなチャレンジをさせてもらったからこそ今の自分があると思っています。

NFTを活用し、学生の体験を資産化

ーー貴社の事業内容を教えてください。

勝根秀和:
弊社は1963年の創業時から、大学入試業務の受託やサービス開発を行っており、教育業務は現在も事業全体の売上の約6割を占める主力事業です。特に2016年に立ち上げた「UCARO®」は、これまで各大学が個別に行っていた入学試験業務を一本化するという画期的なサービスで、日本の大学受験生の半数以上が利用するまでに成長しました。

しかし、「UCARO®」は大学受験に特化したスポット的なサービスだったので、弊社の中では「もっと社会に貢献できるサービスが開発できるはずだ」という思いがあったのです。そこで、「UCARO® Bridge Project(ウカロブリッジプロジェクト)」と称し、部門横断的に有志を募り、新たな社会課題の解決に向けたサービスの開発に取り組みました。弊社が創業時から培ってきた「学生との接点」を強みとして、次世代サービスの新規事業を展開しています。

ーー新たに開発した次世代サービスはどのような内容ですか?

勝根秀和:
大学入試から入学後のキャリア支援や就活支援にサービスの幅を広げることで、学生とつながる機会を増やすことが、次世代サービスの開発における弊社の経営戦略でした。

具体的には、ブロックチェーンなどの技術を活用して、Web3(ウェブスリー)の世界の中でNFTを発行する仕組みづくりや、実証実験の基盤になる「アプデミー®」というサービスを展開しています。「アプデミー®」は、学生のさまざまな体験や社会貢献活動をNFTでデジタル化して記録に残せるというサービスで、蓄積した記録は学生の資産として就活への活用を目指しています。

ーー他にはどのようなサービスを展開していますか?

勝根秀和:
2024年にNINJAPAN株式会社を子会社化して、就活生向けのキャリア構築サービス「Abuild®就活」と、弊社グループ会社の採用広報支援サービス「キャリポート®」を組み合わせた新サービスの共同開発・提供を開始しました。これは、企業と学生の出会いの場をつくるほか、独自プログラムによりキャリア意識やビジネス思考を養うことで、学生一人ひとりに最適なキャリア支援サービスを提供しようという試みです。

他にも弊社の新規事業として、学生と地域をつなげる「Local Bridge®学生局」があります。「Local Bridge®学生局」では、学生が地域課題について学び、どのような地域創生を行うかを主体的に考えるという取り組みを行っています。第一弾として、2024年9月に滋賀県長浜市で開催された「ナイトミュージアム」に合わせて長浜市をご紹介する「長浜プロジェクト」を行いました。

ーー今後の採用市場において、どのような人材が評価されるとお考えですか?

勝根秀和:
私はこれからの不確実性が高い時代の中で、より必要とされる人材は、一つの得意分野に秀でた人材だと考えています。少子化が加速している一方で、企業における終身雇用は崩壊している現状において、「特定の分野に特化した人材を、必要な期間だけ雇いたい」というニーズも企業に生じているからです。そのような状況では、就活生がサービスに求める価値は「自分の得意分野をいかに伸ばせるか」ということになるでしょう。弊社サービスが学生の得意分野を伸ばし、就活における戦略立案に役立てば嬉しいですね。

UCARO®経済圏を拡大し、社会に貢献したい

ーー最後に今後の展望をお聞かせください。

勝根秀和:
今後は、弊社の経済圏を拡大していきたいです。その経済圏内に多くの特色のある優秀な学生が集まり、その各々がさまざまなNFTを所有している。そのデータを、自分自身の意思により提供することで自分の価値として活用ができ、企業側の求める人材とのマッチングをも可能にすることができると考えます。この経済圏の範囲を広げ自分自身の未来を切り開いていける世界観が実現できれば、企業の人材不足解消や離職率の抑制など、社会課題の解決に貢献できると考えています。

私の信念として、利益だけを求め、社会に貢献しないサービスはやるつもりはありません。弊社の「UCARO®経済圏」に入ることで、夢に向かって挑戦する人の人生を、より素晴らしい方向へとリードしたい。いつの日か、お客様のビジネスをスマートにつなぎ、より豊かな人生のストーリをつむぐ事が出来れば、当社のコーポレートメッセージでもある「データに、物語を。」が実現できると思っております。

編集後記

学生の体験をデジタル資産として残し、キャリア構築に活用するという発想は、教育支援の新しい形を示している。「得意分野に秀でた人材が必要とされる」という勝根社長の洞察は、変わりゆく採用市場の本質を突いていると言えるだろう。60年以上にわたり教育業界と向き合ってきた企業だからこそ描ける、次世代の教育・就職支援の姿がそこにあった。

勝根秀和/1962年、大阪府生まれ。1987年にシステムエンジニアとして株式会社ODKソリューションズに入社。営業企画を経て、教育分野の担当役員として大学受験ポータルサイト「UCARO®」の立ち上げに携わる。2020年、代表取締役社長に就任、現在に至る。