
自動車整備士の人手不足が深刻化する中、岡山県に「若者が働きたい会社」として注目される企業がある。輸入車販売と整備事業を手掛ける株式会社CAR PRODUCEだ。若き代表・社海渡氏が率いる同社は、社員の成長を重視しながら、上場を目指して多角的な事業展開を進めている。今回は、創業の原点や未来への挑戦について、社氏の思いをうかがった。
18歳での起業、そして法人化への軌跡
ーー創業するまでの経緯を教えてください。
社海渡:
18歳のときに株式会社CAR PRODUCEを創業し、大学を卒業した2017年に法人化しました。創業のきっかけは中学生の頃です。両親が離婚し、生活が苦しくなったため、「自分で稼ぐしかない」と決意しました。アルバイトではなく、自分自身で起業してお金を稼ぐことを選んだのです。
もともと車が好きで、中古車販売サイトをよく見ていました。そんな中、近所の整備工場で売れ残っていた車を見つけ、「これ、僕が売ったらいくらくれる?」と交渉し、インターネットで販売したのが最初の取引でした。
特にインターネットに詳しかったわけではありませんが、当時高校生だった自分が「車を売るにはどうすればいいか」と考えて選んだ方法で、大人相手に非対面で交渉しました。学費と生活費を稼ぐため、必死の創業でした。
ーー高校生での創業から多くの経験を積まれた中で、最も大変だったことは何ですか?
社海渡:
今が一番大変かもしれません。これまで、何のために働いているかを深く考えず、がむしゃらに仕事をしてきました。それでもそれなりの収入を得て「これでいい」と思っていたのです。
しかし、25~26歳の頃、「このままで一生を終えたくない」と思うようになり、何のために働いているのかを考えた結果、会社を組織として成長させ、業界をアップデートする存在になりたいと考えるようになったのです。
そして、上場を目標に掲げて将来のビジョンを描きましたが、社員が退職するなど、組織が落ち着かない時期を迎えました。この2年間は組織づくりに苦戦し、思ったほど成長が進んでいません。
ーー上場を目指すようになったきっかけは何ですか?
社海渡:
20代前半の頃には上場を考えることはありませんでした。きっかけとなったのは、義父の存在です。今年、グロース市場に上場した株式会社イタミアートの代表を務める義父からアドバイスを受け、経営者コミュニティや『秀吉会』という起業家の集まりに参加するようになりました。
秀吉会の参加企業は約30社で、そのうち5社ほどが上場しています。また、定期的に行われるミーティングや勉強会などでは「事業をどうするか」ではなく、「人生をかけて何をするか」を議論します。この経験が私にとって大きな刺激になりました。
そうした中、改めてこれまでの弊社を振り返ると、成長をもたらした最大のキーワードが「人」であることに気づいたのです。優秀な人材を採用できたこともそうですが、出会った人々が私の考えや目指す方向性を具体的にしてくれました。その点で、私は、本当に運に恵まれてきたのだと感じています。
転機となった経営哲学の確立

ーー改めて、貴社の業務内容を教えてください。
社海渡:
岡山県で、輸入車販売や自動車買取、自動車整備事業を展開し、沖縄県ではレンタカー事業を手掛けています。
近年、IPO(新規株式公開)を視野に入れ、「業界をアップデートし、成長し続ける企業を目指す」というビジョンを掲げたことで、これに共感して入社する社員が増えてきました。優秀な人材の加入を追い風に、2030年にはグロース市場進出を目指しています。また、社内起業の推進を通じ、車事業だけでない多角化経営にも挑戦していきます。
ーー入社される方にとって、貴社の魅力とは何ですか?
社海渡:
「自分の努力次第で会社が成長するのはもとより、自分自身も幹部になれる可能性がある」という将来の展望が、魅力だと思います。弊社は地方に拠点を置きながらも、20代後半から30代前半の即戦力となる若手プレイヤーを、今年だけで10名程度、大きな採用コストをかけずに迎えることができました。
ゆくゆくは、自社で育成した社員が経営者として活躍する組織を思い描いています。そのためにも、上場を果たし、外部からの評価を受けることで、社員のエンゲージメント(会社への愛着や思い入れ)をさらに高めていきたいです。
「人」を軸に進化する組織戦略

ーーこれからの貴社が目指す成長の柱は何ですか?
社海渡:
採用を強化し、着実に成果を出していくことです。ヒト、モノ、カネ、情報の中で、最も重要なのは「ヒト」です。そのため、弊社はこれから価値観を重視した採用に全力を注ぐ方針です。これまでは即戦力となるスキルをを重視して採用してきましたが、次のステージでは、経営理念に共感し、成長意欲を持つ人材を求めていきます。
同時に、私たち自身が成長し、結果を出すことが不可欠であると考えます。周囲の声に惑わされることなく、自分たちの力で売上や利益を生み出し、上場の件も含め、外部の影響を受けずに着実に前進する馬力のある会社を目指します。
人生の時間は貴重であり、限られているため、私は「やらないこと」を明確に決めています。たとえば、電話は突然時間を取られる手段のため、事前にアポイントがない限り優先順位を低く考えています。その分、社員とのコミュニケーションの時間を大切にしたいのです。このように1つ1つの事柄に対して優先順位を明確にしながら、40歳までに200億円の売上と20億円の利益を達成するための道筋を常に逆算して考えています。
編集後記
「人」を最も大切にしていると語る社海渡氏の言葉には、リーダーとしての覚悟と強い信念が感じられた。同社は変革期を迎え、組織づくりや事業の拡大に挑戦している。優秀な人材が集まり、社員とともに目指す未来はどのようなものになるのか。2030年のグロース市場上場に向け、どのような成長を遂げ、業界に新たな風を吹き込むのか。その行方に注目したい。

社海渡/1994年岡山県生まれ、2017年岡山商科大学卒。2012年に現CAR PRODUCE創業、2017年株式会社CAR PRODUCE設立。現在は2030年の上場を見据え邁進中。