
印刷物の企画・デザインから印刷まで手がける、アライ印刷株式会社。柔軟性のある提案営業に定評があり、機動力・実行力・アイデアの3つの強みを活かして、これまで顧客の多様なニーズに応えてきた。
その同社の代表取締役を務めるのは、営業畑で豊富な経験を積んできた若村和之氏だ。会社経営について「常に綱渡りの意識を持っている」と語る同氏だが、一体どのような経営術で顧客からの信頼を獲得してきたのか。代表として大切にしている考え方や事業の強み、今後の注力テーマなどを聞いた。
「営業活動で得た出会い」が代表になった今でも1番の財産
ーー今までの経歴を教えてください。
若村和之:
もともと歴史が得意だったこともあり、高校卒業後は明治大学の文学部史学地理学科へ入学し、考古学を専門に学びました。その後、新卒で繊維メーカーに入社し、営業の仕事を3年ほど経験しました。このときに知り合ったメーカーの方々とは今でもつながっており、営業を通して得た出会いが私にとっては1番の財産だと感じています。
その後、1982年に弊社へ転職し、代表に就任する2002年まで営業を経験しました。営業マンとして長年経験を積んできたことから、営業の重要性は私自身とても理解していますし、実際に代表になった今でも自ら営業活動をしています。
ーー代表に就任してからどのようなことを大切にしてきましたか。
若村和之:
最も大切にしているのは、気を抜かないことです。安定している大企業ならまだしも、弊社は中小企業ですので、調子が良いからと気を抜いたときに大きな問題は起こるものです。社長として常にいろいろな情報にアンテナを張り巡らせ、気を引き締めています。
また、代表に就任してから現在に至るまで、将来を担う若者を社内に増やしたいという思いで、教育にも力を入れながら会社を経営してきました。
少数精鋭ならではのスピード感と「かゆいところに手が届くサービス」が強み

ーー貴社の事業内容を教えてください。
若村和之:
弊社は印刷物とそれに付帯する幅広い事業を展開しており、印刷物の企画やデザイン、製本、封入封緘作業などを手がけています。取り扱っているのは基本的に、チラシやパンフレットなどの商業印刷物です。
弊社のような中小企業は一人親方のような資質が求められるので、社員たちは業務を通して営業や総務、経理など幅広い知識が身につきます。
たとえば株主総会の資料を作成する際は、テンプレート的に資料をつくるだけでなく、資料の内容が法的に問題ないか確認するリーガルチェックのような作業も行っています。
弊社の仕事は単純ではありませんが、その分業界のさまざまな知識が身につきますし、それぞれの業界の実態を知ることができるのが魅力です。
ーー貴社の強みはどういった点にありますか。
若村和之:
弊社の大きな強みは、短い納期でもしっかりと対応できるスピード感と、お客様のニーズを読むことができる営業力の高さです。実際に弊社の営業マンたちは、お客様が求める以上のものを返し、付加価値をつけて要求にしっかりと応えてくれています。
また、弊社は少数精鋭の中小企業なので、大手では難しいような臨機応変な対応も可能です。納期の急な変更への対応など「かゆいところに手が届くサービス」を通してお客様に寄り添い、お客様の1番の味方として付加価値を提供してきました。
営業という仕事の魅力を社員に伝えながら、会社を担える人材を育てる
ーー今後の注力テーマを聞かせてください。
若村和之:
1つは営業力を強化するために、人を育てることです。営業という仕事に対してネガティブなイメージを持つ方も多いですが、営業とは人とのつながりを広げ、自分の世界も広げる面白い仕事だと思っています。
会社を辞めたとしても取引先との友情が続くケースは多いですし、そういった営業の魅力を社員たちに伝え、プロの営業マンを育てていきたいです。
また、営業マンだけではなく、将来的に経営を担える人材を育てることも大切です。経営に必要な「数字を読む力」を備えた人材の育成も進めていきます。
さらに、今後は採用活用にもより一層力を入れていく予定です。現在は中途の社員が多いので、新卒も積極的に採用していこうと考えているところです。
そのほか、DXの推進などももちろん考えています。ただ私としては、新しいことだからといって何でもすぐ飛びつきたくはありません。会社として何が本当に必要なのかを見極めたうえで、必要なことだけに集中して取り組んでいきたいと考えています。
編集後記
柔らかく優しげな雰囲気が印象的だった若村代表だが、「常に気を抜くことはない」という言葉からは、経営者としての強い覚悟と責任感が感じられた。アライ印刷が顧客から厚い信頼を獲得しているのは、顧客が何を求めているのかを常に考え続ける姿勢にあるのだろう。
長年の経験に裏打ちされた高い営業力や、少数精鋭ならではの臨機応変な対応など、ほかにはない強みを活かしながら前に進む同社をこれからも応援したい。

若村和之/1956年東京生まれ、1978年明治大学文学部史学地理学科卒業。1978年、繊維メーカーに就職。3年間勤務後、アライ印刷株式会社に就職。2002年に代表取締役社長に就任。