
東京都中央区に本社を構える株式会社東京中央建物。1997年の創業以来、創業者である三田冨美雄氏が、その卓越した営業力で会社を牽引してきた。現在、代表取締役を務めるのは、2021年に代表取締役に就任した三田正明氏だ。同社が急成長を遂げていた創業期に入社後、どのようにして代表の座に就き、どのような経営を展開しているのか。三田氏に詳しく話をうかがった。
コロナ禍をきっかけに企業を牽引する決意が生まれた
ーー将来お父様の後を継ぐことは、当初から視野に入れていましたか?
三田正明:
大学卒業後に入社しましたが、私自身代表になるつもりはありませんでしたね。ところが、あらゆる職種を経て数年が経過した頃、ITに詳しかったことから管理部長を任せてもらうようになったのです。そして、そのまま幹部入りしましたが、代表を志す役員が多かったため、私が二代目となることは誰も考えない状況でした。
代表就任のきっかけとなったのは、2020年のコロナ禍です。緊急事態宣言により社会全体が在宅ワークへと移行し、働き方の変革が求められる中、父親を含めた役員世代はその変化に対応するのが難しいのは明らかでした。
さらに、当時の社員の平均年齢は49歳で、会社の若返りを図るためにも、私がやらなくてはいけないという使命感に駆られたのです。ある幹部会で社長に立候補したところ、意外にも拍手喝采で受け入れてもらえました。父親からは「その言葉を待っていた」という雰囲気を感じましたね。
自身のパーソナルブランディングから社内全体のブランディングにつなげる
ーー代表就任後は、どのような事業展開を目指しましたか?
三田正明:
売上至上が浸透し、若手社員が次々に辞めていく現状にストップをかけるべく、大々的に組織改革を打ち出しました。まずはオフィスやホームページのデザインなど、視覚的な要素から徐々に変えることにしたのです。また私自身も、服装をスリーピースのスーツからジャケットとパンツのスタイルに変更し、パーソナルブランディングに取り組みました。
会議も、単なる売上報告の場ではなく、社員がプレゼンテーションを行う形式へと変更し、社員の意識を変えていくよう努めました。ブランディングを活かした採用戦略、そして新メンバーの教育から社内融和を図ることで、次第に人材獲得へと実を結ぶようになりました。新卒採用において「第二創業」を打ち出しただけでなく、改革前後の変化を具体的に示せた点が、求職者の心に響いたのだと思います。

ーー事業内容や強みを教えてください。
三田正明:
弊社の主軸は、新築マンションの代理販売と中古マンション買取再販事業です。スタートして2年ほどになる買取再販事業に関しては、万人受けする物件ではなく、オリジナリティが際立つ物件に特化しているのが特徴です。さらに、中長期にわたり東京に住む外国人向けのアパート探しをサポートする「TOKYO APARTMENT INC.」も展開しています。
弊社の強みは、お客様目線の丁寧な接客です。そこが評価され、「SUUMO AWARD」の接客満足度部門で2年連続受賞できました。大手企業が受賞する中、弊社が受賞できたことは快挙だと自負しています。
支援型のサーバント型リーダーシップでビジネスのステージアップを図る

ーー今後のビジョンについてお聞かせください。
三田正明:
買取再販事業を代理販売業と並ぶ弊社の柱として推進し、5年後、10年後にはマンションデベロッパーになることを目指しています。これは先代からの夢でもあり、社員のモチベーションを上げる大きな動機付けになると考えています。目標達成のために、人材の育成に重きを置き、未経験者をターゲットとした人材獲得に努めていきたいですね。
ーー人材育成が次のステージへ進むための、重要な鍵となるということでしょうか?
三田正明:
そうですね。人材育成に力を入れるのは、売上アップのためです。そして、そのための最善策が、社員一人ひとりのスキルとマインド改革だと考えています。
弊社では、社員一人ひとりが自身の強みを活かした営業スタイルを確立し、継続的なスキルアップを図ることを目的とした、新たなプログラムを導入いたしました。
このプログラムは1年間を1つのサイクルとする設計です。参加者は月1回、2時間のセッションに臨み、そこでは専門知識を深めるセミナー、実践的なスキルを磨くワーク、そして自身の成長を確認する振り返りが展開されます。理論と実践、内省をバランス良く組み合わせることで、学びの効果を最大限に引き出すことを目指します。
さらに、日常業務を通じた成長支援として、OJT(On-the-Job Training)制度の強化にも注力。効果的な指導を実現するためのOJT研修プログラム策定や、OJT担当者同士がノウハウや課題を共有できる場を設けるなど、組織全体で新人や若手社員の育成をサポートする体制づくりを推進しているところです。
編集後記
業界・職種未経験の新人がトップをとり、会社を牽引しているという株式会社東京中央建物。未開拓分野に焦点を当てたプロダクト(買取再販事業)を展開をしていることから、人材育成と自社プロダクトの確立という両輪が、バランスよく機能している印象を受けた。

三田正明/新卒で株式会社東京中央建物に入社。営業事務を通して不動産取引に関する法律を学ぶ。その後、営業職だけでなく総務、経理と幅広く経験を積み、管理部長を経て代表取締役に就任。クラウドツールを用いた業務の簡素化を徹底し、平均残業時間は業界では稀にみる1桁台に抑えるなど、システムと文化、双方における社内改革に尽力している。