
1982年設立の株式会社データホライゾンは、全国の自治体やヘルスケア業界向けにデータヘルス計画の提供など健康サポート事業を展開する企業だ。2016年に独自のレセプト(診療行為によって発生する請求)分析で特許を取得し、データヘルスにおいて独自のノウハウを構築してきた先駆者でもある。
2022年には、ヘルスケア事業を行っていた株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の傘下に入った同社。2024年に代表取締役社長に就任したばかりの瀬川翔氏に、経営方針について詳しく聞いた。
ヘルスケア事業の経営で10年以上のキャリア
ーー親会社のDeNA入社の経緯と、貴社入社までのご経歴をお聞かせください。
瀬川翔:
学生時代は大阪で理系の大学院に通い、研究する面白さを知り没頭していました。そんな中で一般企業と共同研究する機会があったことをきっかけに、大学院内の研究だけではなく利用者の声に直接触れる仕事に就きたいと思い、民間企業を目指すようになりました。
DeNAを志望したのは一風変わった非凡さというのでしょうか、大手でありながらベンチャー企業のようなチャレンジ精神の強さ、熱量の高さに惹かれたからです。2010年に入社して最初はEコマースの部署にいた後、5年ほどしてヘルスケア事業に就き、DeSCヘルスケアの社長などいくつか子会社の役員も務めました。
それから3〜4年してデータホライゾン社の取締役を務め、2024年7月に代表取締役社長に就任しました。2015年頃から10年ほどは一貫してヘルスケアの事業経営に従事しています。
ーー社長に就任して方針転換はありますか?
瀬川翔:
創業者の内海会長と二人三脚で経営を担う中で、当然ながら弊社がこれまで培ってきた文化、風土がありますので、その理念は大切にしていきたいと思います。
事業や組織についてはどんどんお客様や働く社員の要望を踏まえてアップデートしていきたいと考えています。例えば、人事評価や報酬制度についても、年功序列に比重を置く制度ではなく、組織と個の成果や成長をフェアに評価する制度に舵を切る意向があります。
自治体にパイプ太く高齢者向けデータヘルスサービスが強み

ーー改めて事業内容をお聞かせください。
瀬川翔:
主に保険者様が効果的に加入者の疾病予防や健康づくりを行う保健事業を支援しています。対象は地方自治体が中心で、年度によって変化しますが、例年全国約500の自治体と取引しています。具体的には、色々なデータを分析した上で、「こういった方に健診受診や重症化予防の指導を行なった方が良い」といったことを保険者の方々に提案し、その実行を支援しており、そのほか大学や製薬会社などヘルスケアにかかわる方々とのDX等の事業も展開しています。
ーー貴社の強みはどんなところでしょうか?
瀬川翔:
企業で働いている方は企業の健康保険組合等に属する方が多く、65歳以上になると各自治体の国民健康保険、最終的に後期高齢者になるとお住まいの自治体の健康保険に入ることになります。
そのため、自治体を多くご支援している弊社は、とりわけ高齢者の方に多くみられる課題を対象にしたサービスを得意としています。データ分析して保健事業に役立つ提案をしたり、結果として商品をつくったりと、高齢の方に向き合ったソリューションが一番の強みです。
ーー新しく取り組む計画をお聞かせください。
瀬川翔:
1,700ある自治体を対象にしている以上、対面で訪問してしっかりその地域の現状・課題を知ることがとても重要です。
その中でもよりお客様の満足度と社内の生産性を高めていくために、AIを積極的に活用していく取組みを進めています。今後は従来型の人海戦術に加え、そうしたAIをはじめとするテクノロジーの力で事業の成長と生産性向上を実現していく方針です。
地域性を尊重した福利厚生や人事改善策を講じる
ーー人事面の施策について教えてください。
瀬川翔:
前述の人事制度の見直しのほか、多様な社員のライフステージ等にあわせた柔軟な働き方をサポートしていくことにも取り組んでいます。昨年はフレックス制度の導入や業務中の服装の自由化(ドレスコード・フリー)など、毎月1個のペースで何かを変えたり決められることを目指してきました。
また弊社には地域特有の風土やコミュニティを大事にするカルチャーが根づいています。それを踏まえたレクリエーション、たとえば広島拠点ではプロ野球の広島カープの観戦シートをまとめてとり、みんなで応援しに行くといったことが通例です。
そうした福利厚生を含め、社員に気持ちよく働いてもらうためにあらゆる工夫を凝らしていく方針です。
ーーどのような人材を求めているのかをお聞かせください。
瀬川翔:
私たちは生活者の方の健康増進や医療費適正化など健康・医療分野の社会課題を解決していくことを目指して活動していますが、そう聞くと少し難しく、堅く捉えられるかもしれません。
ただ、実際には目の前のお客様に喜んでいただいたり、課題解決の一端を担えたと感じる瞬間はとてもうれしく、ワクワクします。そういった意味でお客様も社員も気持ちがワクワクしていただけるような会社、事業にしていきたいと思ってます。そういったお客様や世の中をワクワクする挑戦に共感いただける方に関心を持っていただけると嬉しいです。
編集後記
営業スタッフ100人体制で全国を回る同社は、現場から上がってくる情報も数多い。そんな中で瀬川社長は議事録や面談記録を直接閲覧する姿勢を示し、顧客ニーズ把握に努めている。40歳で社長に就任し、将来的には海外進出も視野に入れているという瀬川社長だけに、この先の限りない展開が楽しみだ。

瀬川翔/1984年生まれ、愛媛県出身。大阪大学大学院工学研究科修了。2010年株式会社ディー・エヌ・エー入社。株式会社DeNAグループエグゼクティブ兼ヘルスケア事業本部本部長。株式会社DeSCヘルスケア代表取締役社長。株式会社PFDeNA取締役。株式会社データホライゾン代表取締役副社長兼執行役員最高執行責任者(COO)を歴任。24年に株式会社データホライゾン代表取締役社長兼執行役員最高経営責任者(CEO)に就任。