
リユーストナー事業から始まり、オフィスを快適にするサービスを展開する株式会社ディエスジャパン。同社の代表取締役社長である北條陽子氏は、創業者である父から会社を受け継いだ2代目だ。
そのバトンを引き継いでからは、サービス形態や会社のあり方を時代に合わせてアップデートし続けてきた。そして、北條氏が今注力しているのが、新たな価値創造と組織改革だ。これからの時代に必要とされる事業・組織とは何か。その構想を聞いた。
IT企業からリユーストナーの世界へ。異業種を経験したからこそ気づいたこととは
ーー北條社長の経歴をお聞かせください。
北條陽子:
私は短大卒業後、1年間の海外留学を経てIT業界に入りました。当時はYahooBBなどのプロバイダサービスが台頭し、2000年問題への関心が高まっていたこともあり、日々注目度が増すこの分野でキャリアを築こうと考えていました。
入社後はプログラマーとSEを経験しましたが、より近くで顧客の課題解決に向き合うために最終的に営業職に転向。多様な現場を経験する中で、次第に「自分自身で経営に挑戦したい」という気持ちが芽生えていきました。
ディエスジャパンへ入社することになったのは、34歳のとき、創業者である父から「会社を継いでほしい」と声をかけられたことがきっかけです。まったく想定していなかった話ではありましたが、「この機会を逃せば二度と経営に関われないかもしれない」と考え、入社を決意しました。
その後、前職の案件が落ち着いた37歳のときにディエスジャパンに入社。2017年に取締役、2019年に代表取締役に就任しました。主軸であるリユーストナー事業に加え、現在はリユーストナーの環境価値を伝える活動や中小企業向けに脱炭素ソリューション提供に力をいれるなど、新たな事業の柱づくりにも取り組んでいます。
ーー貴社に入社したあとに、特に大変だったことは何ですか?
北條陽子:
特に大変だったのが、顧客の入れ替わりの激しさから、つねに営業活動が必要だったことです。IT業界では、長期間のシステム開発を経て、導入後もお客様と長く関係を築いていくのが一般的ですが、リユーストナーの販売を行っている弊社は、いわば買い切りの仕事で、全国に7万社以上の顧客を持っているにも関わらず、顧客の入れ替わりが頻繁に起こっていました。
そこで、社長に就任してからは、7万社以上の顧客がいるという強みと、定期的な新規開拓が欠かせないという営業上の弱みに着目。物販中心のビジネスモデルでは、どうしてもリピート率が低く、顧客の入れ替わりが発生しやすいため、営業活動の効率化と継続的な関係構築が課題でしたが、これを改善することで会社全体をより持続可能な成長軌道に乗せたいと考えました。
具体的には、私がIT業界で培ってきた知識を活かし、オフィス関連のITインフラ構築やシステム導入支援など、ソリューションビジネスへと事業を拡大することを検討。入社2年目にソリューション事業部を立ち上げ、物販だけではなく、お客様に対してより付加価値の高いサービスを提供できる体制を構築しました。
リユーストナーから事業の解釈を広げ、オフィスソリューションや脱炭素の世界へ

ーー貴社の事業内容と独自の強みを教えてください。
北條陽子:
現在、ディエスジャパンは、創業以来の主力であるリユーストナーを中心としたオフィスサプライ事業に加え、IT・ネットワーク構築、パソコン・OA機器販売、環境配慮型オフィスソリューション、ホームページ作成・PR支援の5つの分野に取り組んでいます。
現時点ではオフィスサプライ事業が売上の約9割を占めていますが、今後のペーパーレス化の進行を見据え、オフィスソリューション事業を拡大させ、売上の半分を担う程度に育てる計画です。
弊社の強みは、全国に広がる顧客ネットワークを活かした提案力です。リユーストナーを通じて築いてきた信頼関係があるからこそ、課題解決型のソリューションも受け入れていただきやすく、より深い関係性を築くことができています。
さらに、近年の環境意識の高まりに対応し、脱炭素経営を支援するサービスにも力を入れています。脱炭素への取り組みが進んでいない中小企業への支援に力を入れることで、日本全体のカーボンニュートラルの実現に貢献できると考えています。
脱炭素の取り組みを加速し、共生社会の実現を経営の軸に
ーー今後、注力したいテーマは何でしょうか。
北條陽子:
現在、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを経営の重要テーマとして掲げています。
中でも注力しているのが、「ファストカーボン」と名付けた独自の脱炭素ソリューションです。これは、会計データから簡便にCO₂排出量を算出できる仕組みで、導入・運用のハードルが低いため、中小企業でも無理なく脱炭素に取り組める点が大きな特徴です。
こうした取り組みは、まず自社で実践し、そのノウハウを顧客にも還元するという基本方針に基づいています。社内ではすでに12の脱炭素プロジェクトを立ち上げ、社員の行動を変える仕掛けを取り入れながら、経営全体のサステナビリティ向上を図っています。
また、大阪府が主導する「OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション」にも理事企業として参画しており、自治体や他企業と連携して、社会全体の脱炭素化にも貢献しています。
今後は、全国にある物流拠点の見直しにも着手する予定です。拠点の集約や業務の効率化は、コスト削減だけでなくCO2排出量削減にもつながり、脱炭素経営の一環として重要な意味を持つと考えています。
新規事業の拡大だけではなく、組織改革にも重点をおいており、幹部人材の育成にも力を入れていく予定です。社員に権限を委譲することによって社員自らが課題を捉え、行動に移せる。そんな人材を増やすことで、ボトムアップ型の柔軟な組織体制を作り上げたいです。
ーー将来的に、どのような会社へ成長させたいとお考えですか?
北條陽子:
“共生社会の実現”を経営の軸として、顧客や地域社会、そして従業員とともに発展することを目標としています。先ほどお話した脱炭素への取り組みはもちろんですが、障害者雇用の促進や地域活性化、社会課題の解決にも焦点を当てながら、社会的責任を果たせる企業を目指す方針です。
それに向けて、障害者雇用の課題に対して「ウィズダイバーシティプロジェクト」に参画したり、地域のスポーツチーム支援や障害者施設とのボランティア活動などをスタートしています。これらの活動はすべて、従業員主体のプロジェクトとして進められており、社員自らが考え、行動する文化、私が目指しているボトムアップ型の柔軟な組織に近づいていると感じています。
今後は、10年20年かけて、企業の経営課題全般をサポートできる総合的なソリューションカンパニーを目指し、ディエスジャパンを「単なる物販企業」から「オフィス環境をトータルでサポートする企業」へと進化させていくことが、私の使命だと考えています。そして、お客様から「相談してよかった」と言われる企業になれるよう邁進してまいります。
編集後記
北條社長の指揮のもと、リユーストナーというリサイクル事業を発展させ、新たに脱炭素を見据えたソリューション事業もスタートしたディエスジャパン。先代が積み上げてきた土台の存在感は大きく、同社は今後ますます成長速度を上げていくのではないだろうか。10年後、同社が脱炭素というフィールドで一翼を担う存在になることは想像に難くない。

北條陽子/1977年生まれ、大阪府出身。関西外国語大学短期大学部卒業後、システム開発会社、ITベンチャーを経て2015年に株式会社ディエスジャパンに入社。営業環境のIT化を推進。2017年取締役就任を経て、2019年に同社代表取締役に就任。主力商品であるリユーストナーの環境配慮面での価値を伝え、中小企業の脱炭素ソリューションなどの事業展開にも力を入れている。