
学生の価値観や志向に基づき、相性の良い企業とのマッチングを行う採用手法、価値観マッチング。株式会社アレスグッドは、この価値観マッチングをもとにした就活プラットフォーム「BaseMe(ベイスミー)」を運営している会社だ。
2020年に設立された新しい会社でありながら、すでに2万人以上の学生が「BaseMe」に登録している。どのようにして、同社のサービスは急速に認知を広げ、登録者数を増やすことができたのだろうか。CEOの勝見仁泰氏に詳しく話を聞いた。
「世の中を良くしたい」という思いで起業を決意
ーー起業の経緯をお聞かせいただけますか。
勝見仁泰:
高校時代にアルバイト代を貯めて、インドや東南アジアで1か月ほど過ごしたときの経験が、今の私に大きな影響を与えています。発展途上国でさまざまな社会課題を目の当たりにし、起業に限らず「将来は世の中を良くすることがしたい」と思うようになりました。
それから起業を本格的に決意したのは、就職活動を始めた大学3年生の頃です。コロナ禍という特殊な状況下で、採用活動を取りやめる企業も多く、その中で就職活動を進めなくてはならなかったのですが、単に求人数が少ないということだけではなく、私が思い描いていた「世の中を良くする仕事」という軸で企業を探すことが、既存の就活サイトでは難しい状況でした。
このまま就職活動を続けるべきか悩みましたが、自分の選びたい会社を満足に選べない現状に対して「この課題を解決できる事業を自分で始めたい」と思い、起業を決意。2020年、アレスグッドを立ち上げました。
ーー起業後に始めた事業について教えてください。
勝見仁泰:
当初は、学生が社会課題に取り組んでいる企業を探せる「エシカル就活」を軸とした就活サイトを運営していました。
ただ、運営を続けるうちに、社会問題やサステナブルという切り口だけでなく、より多様な価値観で学生と企業がマッチングできるようにする必要性を感じ、2024年に事業をピポット。現在は、「BaseMe」というサービスを運営しています。
AIによる価値観マッチングで企業と学生をつなぐ「BaseMe」

ーー「BaseMe」とはどのようなサービスなのでしょうか。
勝見仁泰:
「BaseMe」は、学生たちの価値観を軸にしながら、学生たちが自分に合った企業と出合えるスカウト型新卒採用プラットフォームです。プロフィールや経験をもとにAIが強みや弱みを分析し、学生と企業のより良いマッチングを実現する価値観マッチングという手法を採用しています。
大きな特徴は、ユーザー数が約2万人と急速に増えていることと、登録者に意識が高い学生が多いことです。また、「BaseMe」は就活サイトというより、SNSのような使い方ができる点も特徴です。たとえば、学生は他の学生とつながり、そのプロフィールからキャリア観を参考にすることが可能なので、横のつながりを強めつつ、就職活動に取り組むことができます。
ーー実際に「BaseMe」を導入している企業からの反応はいかがですか。
勝見仁泰:
多様な業種の企業が約200社ほど登録していますが、実際に「BaseMe」を通して学生を採用した企業からは「『BaseMe』経由で採用した人材は質が高い」と評価を得ています。ある大手百貨店は初年度から5名の人材を「BaseMe」から採用してくださり、採用した人材は、入社後も非常に活躍しているという報告をいただいています。
積極的に人材に投資したいという意思を持つ企業と「BaseMe」は相性が良いため、今後は大手企業はもちろんですが、会社の規模を問わずさまざまな企業に弊社のサービスを活用してもらいたいと思っています。
最終的に実現したいのは「好きを軸に働くことの社会実装」
ーーどのような思いでこの事業を運営していますか。
勝見仁泰:
「学生たちに理想の働き方を実現してもらうことで、人生をより豊かなものにしてもらいたい」という思いで事業を運営しています。
ひと昔前、労働は「生きるためにすること」として位置づけられていましたが、現在は人々は労働にやりがいを求めるように変わってきました。働かなくても済むほどお金があっても仕事を続ける人は多いですし、そこには何かしらの心理があるのだろうなと、とても興味深く感じています。
人々の労働に対する心理を紐解き、AIを活用して“労働を科学する”弊社の取り組みは、非常に面白く、価値あることだと思っています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
勝見仁泰:
今後3年間で、新卒採用プラットフォームとして業界トップシェアを確立するのが最初のステップです。その後は、中途市場やグローバルへの挑戦も考えています。
ただ、このような目標はありますが、私が最も実現したいのが「好きを軸に働くことの社会実装」です。より多くの人に自分の「好き」を解放してもらい、理想の働き方を実現してもらいたいと思います。
そして多くの人が、自分だけでなく、パートナーや友人など自分の大切な人たちが、好きなことを仕事にしていることを誇れるようになる。そんな世界を実現したいです。
編集後記
「BaseMe」は勝見氏自身が実際に就職活動のときに感じた違和感をきっかけに立ち上げたサービスということもあり、業種・業界以外の軸で自分の価値観に合った企業を探せるなど、学生のニーズに的確に応えたものになっている。「好きを軸に働くことの社会実装」を目指すアレスグッドが、これから先どれほど飛躍するのか目が離せない。

勝見仁泰/1998年、東京生まれ。「人類の価値観を解放し、つなげる」をミッションに2020年アレスグッドを創業。価値観マッチング就活プラットフォーム「BaseMe」を展開し、ユーザー2万人超、導入企業200社以上。2024年にプレシリーズAで4.6億円を調達。「Forbes 30 UNDER 30 Asia 2024」に選出。「トビタテ!留学JAPAN」採択で独・コスタリカ・米国留学経験有。