※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

フリーマガジンの発行と広告代理業を軸に、地方創生に取り組む株式会社中広。岐阜と名古屋に本社を置いている。地域に密着した情報発信により、各地の経済活性化を支援する同社は、データ分析やAI活用による広告効果の可視化にも注力している。月間総発行部数が全国1273万部という圧倒的な数を誇る『地域みっちゃく生活情報誌®』を武器に、地域メディアの新たな可能性を切り拓く同社の代表取締役社長、大島斉氏に話を聞いた。

赤字からの復活を支えた、地元との向き合い方

ーー貴社に入社された動機を教えてください。

大島斉:
高校生のころから広告代理店で働くと決めており、多くの企業を見る中で弊社のことを知りました。入社のきっかけとなったのは、先代の社長(現会長)の本を読んだことです。その本には、広告代理業のことや、弊社が「日本で4社目の上場広告代理店を目指している」という話が書かれていました。それを読み、「この会社を上場させるのは私だ」と強く感じたのです。

私は当時から、東京一極集中が進む中で、地方経済の活性化が必要だと感じていました。「地方に根を張り、広告の力で経済を動かす」という志を持つ会社で働きたいと思っていたため、弊社への入社を決意しました。

ーーフリーマガジン事業の責任者となった経緯をお聞かせください。

大島斉:
弊社は2007年に上場したのですが、翌年のリーマン・ショックの影響で赤字に転落してしまいました。これからどうしようかと考えた結果、「地元である岐阜の方々と正面から向き合い、応援してもらおう」という結論になったのです。当時、弊社のフリーマガジン事業は数誌しか発行しておらず、岐阜市では発行していませんでした。そこで私が岐阜市でのフリーマガジン創刊を任され、未経験ながら編集長に就任しました。

創刊した『GiFUTO(ギフト)』という誌名は、「岐阜人(ぎふと)」と「ギフト」をかけたものです。岐阜の方々に応援していただいたお礼に、情報をわかりやすくまとめて皆さんにプレゼントしようという意味が込められています。この『GiFUTO』の発行を通じて、岐阜に住む方々一人ひとりと真剣に向き合った結果、大きな反響をいただきました。そこで、各戸配布型フリーマガジンを一気に拡大路線にのせようと考え、全国展開を行うことになったのです。こうして、私が全国のフリーマガジン事業の責任者を勤めることとなりました。

紙とデジタルの相乗効果で推進する広告ビジネス

ーー改めて、貴社の事業内容を教えてください。

大島斉:
弊社は地域に密着した情報発信を軸に、さまざまな事業を行っています。主力事業としているのが、ポスティング型のフリーマガジン『地域みっちゃく生活情報誌®』です。『GiFUTO』を始めとして全国で発行しており、地域の方々にとって身近で有益な情報を届けています。

他には広告代理業も手がけており、クライアントの課題やニーズに応じた広告戦略や販売促進の提案を行い、企業のブランディングやマーケティング支援を行っています。

ーー貴社の強みはどこにあるとお考えですか?

大島斉:
私たちの強みは、地域に根ざしたメディアをつくっていることです。日本では現在、全国1718の自治体のうち、744か所が消滅の可能性があると言われています。地方創生が叫ばれていますが、実際に地方に移住している人は少なく、発信する側も東京在住者が多いのが現状です。

私たちは、各地域でスタッフを採用し、地域の方と同じ水を飲み、同じお祭りに参加しながら、その土地の文化に根ざしたメディアを運営しています。経営的には非効率と言われることもありますが、地方メディアをつくるにはこの方法しかないと考えています。地域に対する強い思いや感謝の気持ちは、どこにも負けません。

ーー社長就任後、特に力を入れた取り組みは何ですか?

大島斉:
フリーマガジンはアナログなメディアですが、その裏側ではDXを推進し、データやAIを活用する仕組みをつくったことです。DXを進める以前は、広告の成功や失敗例は個人の経験に依存していましたが、データ化によってその共有が可能になりました。さらに、地方の広告効果が数値として蓄積されることで、独自のマーケティングが可能になったのです。

弊社の施策は机上の空論ではなく、実際に広告を配信し、その反応をデータ化した実践知が基になっています。これにより、クライアントへの提案にもエビデンスを示せるようになり、アウトプットの質が大きく向上しました。

熱い思いを持つ社員とともに、日本の全家庭への配布を目指す

ーー貴社ではどのような方々が活躍されていますか?

大島斉:
弊社には、年数に関わらず活躍できる環境があり、新卒入社社員の中には、1年も経たないうちに、すでに雑誌の企画を組み立てるリーダーとして活躍している人もいますね。業界経験こそ少ないのですが、その分読者に近い感覚があり、読者目線で「こういった企画なら自分が読みたい」と思うアイデアを提案してくれるので、編集室ではその感覚を大事にしています。

ーーどのような人材に入社してほしいですか?

大島斉:
地域に貢献したいという強い思いを持っている方に、ぜひ入社してほしいと考えています。今後はフリーマガジンの冊子数を増やしていく予定なので、新しく入社した方も編集長として活躍できるチャンスがあります。自分の故郷を守り、地域に恩返しをしたいという熱い思いを持っている方にとって、弊社はまさにその思いを実現できる場といえるでしょう。

また、地域に根ざしたデータを使用した的確なマーケティング提案ができるので、地域密着型の広告提案に興味がある方にもぜひ来ていただきたいですね。

ーー今後の展望をお聞かせください。

大島斉:
現在、全国で月間約1273万部のフリーマガジンを配布していますが、中期的な目標として2500万部、最終的には5000万部にして日本の全家庭に届けることを目指しています。また、引き続きDXを推進し、ノウハウの共有をさらに強化していきたいですね。

編集後記

東京一極集中が進む中、地域に根を張り続けることを選択した同社。各地域のスタッフが同じ空気を吸い、同じ文化を体験しながらつくり上げる情報誌には、確かな説得力がある。データとAIで効果を可視化しながら、アナログな価値も大切にする。その両立こそが、同社ならではの強みなのだと実感した。

大島斉/1976年生まれ。阪南大学経済学部卒業。2000年、株式会社中広へ入社。2008年に執行役員、2015年に取締役フリーマガジン本部長に従事。2016年には取締役営業本部長、2019年には常務取締役営業本部長に就任。2022年より代表取締役社長を務める。