※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

自分の思いを形にできる環境で磨いた経営者の視点

ーー入社から現在に至るまでの経歴を教えてください。

大窪健太郎:
弊社は祖父の代から続く会社で、私は大学卒業後すぐに入社しました。最初の1年間は現場に入ってものづくりの基礎を学び、2年目以降は生産管理スタッフとして業務に取り組みました。懸命に仕事に取り組むうちに知識が増えていき、4〜5年目からは営業活動も行うようになったのです。それと並行して、社内の環境整備にも取り組むようになりました。具体的には自販機の設置や工場照明のLED化、駐輪場の設置など、ハード面の整備です。

この整備を担当したころから仕事が非常に楽しくなってきました。なぜなら、中小企業は自分が思ったことを形にしやすいと感じたからです。大手であれば専門の部署が担当するような仕事でも、弊社では部門の線引きなく、さまざまなことに関われるので、会社を育てているような感覚になったことを覚えています。

ーー経営において大切にしていることをお聞かせください。

大窪健太郎:
大切にしているのは、従業員の幸せを最優先に考えることです。弊社の企業理念にある「大窪鐵工所の全従業員が物心両面において幸福になること。」を経営の目的として、日々の意思決定を行っています。

従業員が幸せであるためには、会社が安定して成長することが必要であり、そのためには弊社の技術で社会に貢献することが不可欠です。お客様のお役に立ち、弊社をより強く大きく成長させていくことが従業員の幸せにつながると確信しています。そのため、まずは私自身が経営理念に基づいて行動し、弊社の方向性を示すことを心がけています。

顧客から選ばれ続ける、精密機械加工の確かな技術力

ーー貴社の事業内容について教えてください。

大窪健太郎:
弊社は精密機械加工を主軸とするものづくり企業です。創業以来、建設機械やそれらに搭載される油圧機器の部品を製造してきました。現在はコベルコ建機や川崎重工業など、建設機械業界のお客様が中心となっています。

近年は従来の製品に加え、納品形態の改善にも注力しています。お客様の組立工程をスムーズにするための工夫を凝らし、単なる部品供給を越えて、サービスに近い領域まで踏み込んだ価値提供を目指しているところです。

ーー貴社の強みはどのようなところにありますか?

大窪健太郎:
弊社の強みは3つあり、1つ目は顧客内での圧倒的なシェア率です。一部の製品では、国内生産分において弊社の部品だけを採用いただいているケースもあります。これは創業以来、長い歴史の中で培ってきた技術と信頼の証と言えるでしょう。

2つ目は生産体制です。1,000種類以上の異なる製品をつくり分ける対応力を持っていることに加えて、厳しい要求精度のある製品を月間5万枚規模で安定して生産できる体制を構築しています。

そして3つ目が人材です。弊社は39歳以下の従業員が全体の3分の2を占めています。この規模の鉄工所としては非常に珍しい年齢構成で、驚かれることも珍しくありません。若手の従業員がいることで社内が活気づくことに加え、「やりたい」といった前向きな姿勢が会社全体の雰囲気を明るくしてくれていると感じます。こうした財産を活かして、これからも業界問わず幅広いお客様に貢献していきたいと考えています。

変化を恐れず一歩前に踏み出す姿勢で、未来をつくっていく

ーー「GO FORWARD」というスローガンにはどのような思いを込めていますか?

大窪健太郎:
「GO FORWARD」には、勇気を持って前に進み、行動することによって得られるものを掴みに行こうという思いを込めています。現代は予測が非常に難しい時代のため、慎重になりすぎてしまったり、じっとしておこうという発想になったりしがちです。

しかし、そのような時代だからこそ、一歩前に踏み出す勇気が必要ではないでしょうか。それが新しい顧客との出会いや仕事につながり、会社の成長にもつながっていくはずです。このスローガンのもと、従業員とともに前進していくことを目指しています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

大窪健太郎:
事業領域の拡大を目標にしています。現在の建設機械分野に加え、産業機械分野へと事業を広げていき、売上比率を建設機械7割、産業機械3割にしたいと考えています。特に、船舶部品の領域は日本企業が国内シェアの大半を占めているため、弊社の技術を活かせる新たな分野として注力していく予定です。

そして、ゆくゆくは50億円企業への成長を思い描いています。現在は120人ほどの従業員で約30億円の売上がありますが、単純に人数を増やすのではなく、一人ひとりが生み出せる価値を高めていく方針です。最新技術を取り入れながら生産性を向上させ、その成果を従業員に還元することで、物心両面の幸福を実現する会社へと進化していきます。

編集後記

「企業は永続するのが一番」と語りながらも、リスクを恐れず踏み出す勇気を説く大窪社長。一見、矛盾に思えるその姿勢こそが、今日の大窪鐵工所を形づくっている。創業以来、磨き上げてきた技術を大切にしながらも、視線は常に未来へ。物事の本質を見極める若き経営者の手腕は、老舗企業に新たな歴史を刻んでいくことだろう。

大窪健太郎/1989年、兵庫県明石市生まれ。金沢大学卒業。大学卒業後、家業である株式会社大窪鐵工所に入社し、11年間の下積みを経て、2025年に同社代表取締役社長へ就任。