※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

施設警備を軸に、京滋地域最大の警備会社として成長を続けるALSOK京滋株式会社。同社は従来の警備・防災・監視業務に加え、ドローンを活用した太陽光発電設備の点検など、新たな領域にも挑戦している。働き方改革にも積極的に取り組み、10年間業績を右肩上がりで伸ばし続けている同社の代表取締役社長、重松高浩氏に話を聞いた。

友人の誘いを受け、警備業界への第一歩を踏み出した

ーー警備業界に入ったきっかけを教えてください。

重松高浩:
前職はまったく異なる業界に勤めており、仕事がないのに残業するいわゆる「付き合い残業」が多い会社でした。警備業界に入ったのは友人の紹介がきっかけです。ALSOK(綜合警備保障株式会社)に勤めていた同級生から「うちの会社は無駄な残業がなく、しっかりとした環境だ」と聞いて興味を持ちました。実際に入社してみると、友人の言葉通り、業務に対する姿勢が非常に真摯で、転職して良かったと感じています。

ーー警備業界ならではの特徴はどのようなものですか?

重松高浩:
警備業界に入って最も印象的だったのは、規律の厳格さです。当時はまだ社会全体でコンプライアンス意識が今ほど高くなかった時代ですが、警備業界ではすでに厳格な規律があったのです。ピアスや髪色、ヒゲなどにも規則があり、民間企業でありながら警察官のような規律の正しさが求められることに最初は違和感がありましたね。

しかし、この業界に長く身を置くうちに、自分の希望を伝えることで多くの業務を経験させてもらえるという恵まれた環境にあることに気づきました。常駐警備から始まり、機械警備、設備の保守や点検まで、同じ警備でも多様な仕事があり、それらを希望通りに経験できたことは非常に貴重でした。

施設警備からドローン活用まで広がる多様なサービス

ーー貴社の事業内容や強みについて教えてください。

重松高浩:
弊社は京都府と滋賀県において、大手金融機関や企業向けに施設警備サービスを提供している企業です。施設に常駐する警備から、センサーが反応した際に駆けつける機械警備、さらにはそのセンサーの設置や保守のサービスまで幅広く展開しています。また、近年ではドローンを活用して太陽光発電施設などの空撮も始めました。

そうした中で、弊社の強みは女性比率が高いことだと感じています。私が本社にいたときにほかの事業所も見てきましたが、弊社は女性が特に多いという印象を受けました。京都は場所柄、神社仏閣が多いのでスポットでの警備需要が高く、国際イベントも頻繁に開催されます。そういった場での手荷物検査では、女性来場者に対して女性社員によるボディチェックが必要になるため、ケースごとに迅速に対応できるのは大きな強みです。

ーー社員の女性比率が高くなった要因は何でしょうか?

重松高浩:
社員の紹介による入社が非常に多いことが一因だと考えています。友人を職場に誘うというのは、その環境に自信がなければできないことです。不満がある会社なら誘えませんし、友人に嘘をつくはずもありません。つまり、社員が「良い職場だ」と実感しているからこそ起きている現象だと捉えています。

中には、入社当初は内勤希望だった女性社員が、実際に現場を経験してみると警備の仕事に魅力を感じ、今では警備隊を希望するようになったという例もあります。当初持っていた警備のイメージと、実際の職場環境のギャップを良い意味で感じてもらえたのでしょう。こうした良い循環がミスマッチを防ぎ、女性の定着率の高さにもつながっているのだと考えています。

個々の幸せが会社の幸せにつながる好循環を目指して

ーー社員のモチベーション向上に向けて、どのような取り組みをしていますか?

重松高浩:
社内には「GSTカード(GOOD SERVICE THANKS CARD)」という制度があります。これは社員同士が感謝の気持ちを伝え合うもので、「この図をつくってくれて助かった」「あの仕事はナイスプレーだった」といった言葉を名刺サイズのカードに書いて渡し合うのです。この制度は事業所をまたいでも活用されており、ALSOK全体のコミュニケーションツールとして機能しています。

警備業界は「やって当たり前」の世界で、現場の仕事では褒められる機会が少なくなりがちです。そうした環境だからこそ、社内で感謝を伝え合うことで、社員のやりがいづくりを促進しています。

ーー組織づくりにかける思いをお聞かせください。

重松高浩:
「みんなが幸せになれる会社を目指す」というのが私の組織づくりのビジョンです。その中で、私は「自分が先に幸せになる」という考え方を大切にしています。

これは利己的な意味ではなく、自分自身が不満や悩みを抱えている状態では、他者の幸せに貢献することはできないという意味です。毎日ため息をついている人が、どうやって周りを幸せにできるでしょうか。まずは自分が幸せになる努力をし、そこから家族、そして周囲へと幸せの輪を広げていく。そうすれば、結果的に会社全体の幸せにつながると信じています。

幸せの定義は人それぞれで、収入を重視する人もいれば、時間を重視する人もいるでしょう。その多様性を認めながら、それぞれの「幸せ」を支援していきたいと思います。

編集後記

厳格なイメージが強い警備業界で「みんなの幸せ」を第一に考える経営哲学が印象的だった。社員同士が称賛し合う文化や女性が活躍できる環境づくりなど、人を大切にする姿勢が、紹介入社の多さや業績の継続的な成長という形で実を結んでいる。重松社長の「自分の幸せが周囲を幸せにする」という言葉は、分断が叫ばれる現代において、改めて考えるべき「つながり」の大切さを教えてくれた。

重松高浩/1968年、佐賀県生まれ。1988年、ALSOK(綜合警備保障株式会社)に入社し、全国の支社や本社で主に警備運用に従事。2024年、同社100%子会社であるALSOK京滋株式会社の代表取締役社長に就任。