
株式会社フレッシュロースター珈琲問屋は、国内18拠点でコーヒー豆や紅茶、コーヒー器具、コーヒー飲料、コーヒーに関連した菓子など幅広い商品の卸・販売を行う企業だ。加えて、海外拠点への進出やECサイトの運営も手がけており、活躍の場は広がりを見せ続けている。同社の成長の背景には、一体どのような歴史があったのか。同社の代表取締役社長を務める佐藤光雄氏に話をうかがった。
逆境続きの創業期を経て事業拡大へ
ーー社長のこれまでの経歴を教えてください。
佐藤光雄:
私がコーヒー業界で働き始めたのは、今から50年ほど前のことです。コーヒーの輸入貿易に携わっていたおじの紹介で、株式会社ワールドコーヒーに入社したことがキャリアの始まりです。
その後、叔父の会社に転職し、オフィスコーヒー事業部の取締役営業部長に就任しましたが、ビジネスに対する考え方が一致せず、数年で別の会社に転職することにしました。しかし、転職先でいくら事業案を練って社長に提案しても、採用されることはなく、自分で会社を立ち上げるしかないという気持ちが大きくなっていったのです。
その頃、コーヒー機器の展示会で、ジェットロースター(自家焙煎器)を扱う会社の社長と名刺交換する機会を得ました。「独立するなら、この展示品を譲ってあげるよ」と言われ、喜んで独立して店舗をオープンしたところ、なんと1〜2年後に250万円の請求書が届いたのです。当時は大変驚きましたが、この出来事がなければ起業しておらず、現在の珈琲問屋はなかったと思うので、今では感謝しています。
ーーその後、どのようにして事業を軌道に乗せたのですか?
佐藤光雄:
とにかく稼がなければと、当時コーヒー豆は100gあたり360円の販売が普通だった時に、100gで100円のチラシを印刷、閉店後に家族全員で店の近所にポスティングをしました。コーヒー豆100g100円の広告を出したところ、安売りしすぎて仕入れを止められてしまったのです。友人が仕入れたものを持ってきてくれたおかげで事業は存続できたものの、逆境続きの創業期でしたね。
その後、その場で100%オーダーメイドで焙煎した新鮮なコーヒー豆は旨い、早い、安いと評判になり顧客は増え続けています。
焙煎の度合いもグラインドもすべて好みをお聞きするので、お客様からは他店では飲めない味わいのお客様だけのコーヒーが飲めるお店として重宝されました。やはり、事業というのはお客様が何を望んでいるかを知り、それを提供することで道が開けるものなのだと実感した出来事でした。
多彩なコーヒーの中から、自分好みの味を探せる

ーー貴社の事業内容を教えてください。
佐藤光雄:
ジェットロースターを設置した「珈琲問屋」という店舗を展開しています。そこではコーヒー豆の卸や販売を行っており、さらにコーヒー関連器具の輸出入、コーヒー用品や器具の卸、販売などの事業も手がけています。他には、流通センターやECサイト、紅茶専門店「珈茶問屋アンジェ」の運営も行うなど、常に時代を見据えた新しい挑戦を続けてきました。
ーー貴社ならではの強みや特徴は、どのようなところですか?
佐藤光雄:
弊社の強みは、コーヒーの品ぞろえが多く、約100種類以上のコーヒー・紅茶・ドリップバッグを取り扱っていることです。特に100種類のドリップバッグも新鮮なコーヒーを提供するために自社生産しています。ただ、コーヒーの好みや焙煎具合、機械の使い方などは実際に体験してみないとわからないことが多いと思います。そこで、弊社はお客様が別途購入したコーヒー豆を店内の機械で焙煎できる、「コーヒー体験ルーム」というサービスの提供を始めました。1分10円でコーヒー器具を自由に利用できるので、自分好みのコーヒー器具探しにご利用いただきたいですね。
開始したばかりのころは、なかなかお客様の反応がありませんでしたが、インターネット上に予約システムをつくったところ、順調に予約が入るようになりました。体験ルームで使用した器具は、店舗やECサイトから同じものが購入できるようになっています。将来は体験ルームだけでも採算の採れる具体的な店舗展開も考えています。
事業のオムニチャネル化でより便利なユーザー体験を提供
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
佐藤光雄:
現在、国内における弊社の実店舗は、「珈琲問屋」と「珈茶問屋アンジェ」を合わせて18店舗です。これを、日本全国の各都道府県に1店舗ずつ出店する形で、全国49店舗にまで増やしたいですね。
また、弊社は1998年からECサイトの運営を行い、7年前から事業のオムニチャネル化(※)に取り組んでいます。ECサイトと実店舗のポイントを統合するよう、システムを移行中です。インターネットで注文したものを、フィルターペーパー1袋からでも店舗で送料無料で受け取れるようなシステムを日本全国に構築したいですね。
(※)オムニチャネル:オンライン・オフラインを問わず、あらゆるメディアをつなげて一貫した体験を提供し、ユーザーにアプローチする販売戦略のこと。
編集後記
50年以上、コーヒー業界一筋を貫いてきた佐藤社長は創業以来、年中無休で休まず働いているという。「恐らく死ぬまで働き続ける」と語る佐藤社長の言葉には、コーヒーとお客様に対する深い愛情が感じられた。そのような社長が率いる株式会社フレッシュロースター珈琲問屋は、これからどのようなユニークな事業を見せてくれるのだろうか。同社の将来が楽しみでならない。

佐藤光雄/1951年、茨城県生まれ。栃木県立烏山高校卒業。1974年、株式会社ワールドコーヒーに入社。1979年、ユニバーサルコーヒー株式会社に入社し、メリタオフィスコーヒー事業部取締役営業部長に就任。1983年、東洋通商株式会社に入社、クレーマーコーヒー事業部東京支店長に就任。1988年、フレッシュロースター珈琲問屋を創業し、現在に至る。