
神奈川県を中心に事業を展開する総合物流会社のサン インテルネット株式会社。同社は、ギフト梱包や計量、野菜のカットといった幅広い流通加工や、倉庫の保管時と出荷時での温度帯の変更など、企業のニーズごとに柔軟な対応を強みとしている。
同社の代表取締役社長を務める三田竜平氏は、2006年に入社してから現在に至るまで、さまざまな改革や挑戦を通して会社を牽引してきた。同社が地域で愛され続ける理由について、三田氏に話を聞いた。
物流の問題点を解決するため、営業部の解体に乗り出す
ーー社長に就任するまでの経歴を聞かせてください。
三田竜平:
商社で機械プラントの分野に7年ほど携わっていました。工場の高レベルな安全管理などを見ることができ、その経験は現在の事業運営にも活かされていますね。
弊社に入社した後は、物流現場の社員から物流センター長、営業責任者、役員などのポジションを経て、2018年に社長に就任しました。
ーー入社後はどのような取り組みに力を入れてきましたか。
三田竜平:
特に力を入れて取り組んだのが、現場の物流体制の改善です。
私が営業部長をしていた頃に、とある主要取引先の出荷が大幅に遅れてしまうというトラブルが起こりました。この状況を立て直すために、3カ月ほど毎日現場へ足を運んで指示を出すなど、とても大変だったことを覚えています。
このときに「営業をしている場合ではない」「まずは現場を立て直し、物流の足場を固めなければいけない」と強く思いました。
そこで、営業部を解体し、当時営業を担当していた社員には現場に入ってもらい、物流体制の改善を進めてきました。この改革に乗り出してから現在までの10年間で、大きなトラブルは一度も起きていません。
また、2018年に社長に就任してからは、とにかく誠実でいることを意識し、会社をより良くするために、目の前の課題に真摯に取り組んできました。
研修にもITを導入するなど、業界内でも新しいチャレンジを続けてきた

ーー事業の内容や強みについて教えてください。
三田竜平:
弊社は3PL(荷主企業の物流業務の代行)事業、不動産事業、運送事業、EC事業の4つの事業を主軸としている会社です。メインは3PL事業で、全体の業績の50%ほどを占めています。また、お客様から何か困りごとをうかがった際、それを解決できるような物流関連システムの開発も手がけています。
弊社の強みは、社員が非常に真面目なことですね。その真面目さのおかげでお客様からの信頼は厚く、一度引き受けた仕事は誠実に対応するため、途中で仕事が打ち切られたり、他社に仕事が奪われたりすることがありません。難しそうな要求に対しても、すぐに断るのではなく「どうすれば対応できるか」を考えるスタンスのため、最近は新規のお客様も急速に増えています。
また、神奈川県内で優位なポジションをとれている点も強みです。神奈川県では高密度で倉庫を開設し、トラックやスタッフも増やしてきたので、今では「神奈川で物流を任せるならサン インテルネット」と言っていただけるほどです。
さらに、多温度帯一括物流を実現し、常温・冷凍・冷蔵の商品を1つの倉庫で保管できること、近いエリア内に集中して拠点を集約するドミナント戦略をとっているため、倉庫間のスタッフの応援派遣を柔軟にできることなども強みとしています。
ーー他社にはない貴社ならではの取り組みはありますか。
三田竜平:
DXに取り組む物流企業が少ないといわれる中、弊社は業界内でも新しいチャレンジをしてきました。たとえばスマートフォンをかざすだけで貨物を正確に仕分けできるシステムを自社で開発・活用しており、仕分け業務が効率化されるだけでなく、仕分けの精度も向上しています。
また、物流DXを推進した結果、さまざまな物流データが取得できるようになったので、それらをまとめて「物流マンスリーレポート®」としてお客様に納品をしています。
そのほか、弊社ではデータアナリストによるデータ分析研修にも力を入れており、社員たちは現場の物流データを使って、分析手法を学んでいます。
どんな才能が開花するか分からないから、とにかく挑戦することが大切
ーー貴社の求める人材像や、実際に活躍している人材について教えてください。
三田竜平:
人材において最も重視しているのは、誠実であることです。弊社では、たとえ不器用であっても、誠実で人間的に信用できる人が活躍しています。
また、目の前の業務にただ取り組むだけでなく、どうすれば生産性が上がるかなどを自分で考えられる人も、上の役職に就いている傾向にあります。
ーー最後に、これから社会に出る方々へメッセージをお願いします。
三田竜平:
初めて社会に出て仕事に就く方は、いざ働いてみると「想像と現実が違う」とギャップに悩まされるかもしれません。ただ、そういった状況の中でも、いつ、どこで、何に出会い、どんな才能が開花するかは分かりません。
そのため、会社や仕事を選ぶ際は才能が開花しやすいよう、自分の裁量ができるだけ大きな会社や、多様な機会を与えてくれる仕事を選ぶことが大切です。そして、挑戦してみたい仕事があるならどんどん挑戦し、たくさんチャレンジしてほしいと思います。
編集後記
営業部の解体や積極的なDX推進など、新たな取り組みを行うことで会社を成長させてきた三田社長。特に同社のDXの取り組みは、まだアナログな業務が多い物流業界で、生産性向上における1つのモデルケースとなるだろう。新しいことへの挑戦を恐れず、前へ進み続ける三田社長。同氏が挑戦を続けられるのも、「会社を成長させたい」という社長としての強い思いがあるからだと取材を通して感じた。

三田竜平/1976年神奈川県生まれ。中央大学卒業。岡谷鋼機株式会社に入社し、機械プラント営業を担当。2006年にサン インテルネット株式会社入社。2018年に同社代表取締役社長に就任。