※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

少子高齢化により深刻化する人材不足の中で、株式会社マーキュリーは人材を正社員として雇用・育成し、現場に送り出す独自のスタイルでパートナー企業からの信頼を獲得している。2016年に同社に入社する以前から、人材・教育・ITなどさまざまな分野で常に人と会社の良い関係を模索してきた取締役社長の秋間剛氏に、7年連続で採用目標を達成できた要因、「人」を軸にした事業展開について話を聞いた。

建築現場の監督から人材派遣の営業、そして人事へ

ーーまずは秋間社長の経歴について教えてください。

秋間剛:
2016年にマーキュリーに入社するまで、住宅メーカーでの現場監督、資産運用の営業など、5つの会社でさまざまな経験をしました。

その中で、人と会社が良い関係を結ぶための手助けがしたいと、人事の仕事を志すようになったのです。そして、技術者派遣の会社で営業と人事を兼任することになり、80名の社員を540名にまで増やす過程を経験しました。

その会社では課長まで昇進したのですが、リーマン・ショックの影響もあり転職、次の研修会社でも東日本大震災の影響を受け、会社が倒産したりオーナーが変わったりと不安定な時期が続きましたね。業績も赤字続きでしたが「辞めるなら黒字にしてからだ」と何とか踏みとどまるような状況でした。

面談で突きつけられた「新卒を1000名採用できるか」という問い

ーー貴社に入社した経緯をお聞かせください。

秋間剛:
前職で取引のあった弊社から声をかけられたことがきっかけです。2014年に、新入社員の研修で営業や講師として出入りしていた縁で、弊社の外部顧問が林(現:代表取締役会長)との面談をセッティングしてくれました。その場で林から「新卒を1000名採用できるか」と問われ、内心は無理と思いながら「できます」と即答したことを覚えています。1000名規模の採用を求められることは、なかなかありません。実現したら達成感は大きいだろうと思い、そう答えたのです。会長からは「じゃあ、来て」の一言でした。

一方で私には、もう一つ意図していたことがありました。実は前職で一緒に頑張った仲間が数名、私についていきたいと言ってくれていたのです。面談で会長に仲間のことを伝えると「何人でも連れてきたらいい」と言ってもらいました。自分についてきてくれる仲間たちの生活を守れる会社だと安心できたことも、入社を決めた理由です。

採用活動とは、応募者に人生を預けてもらうための営業である

ーー入社後はどのようなキャリアを積んだのでしょうか。

秋間剛:
2016年5月に入社して、まずは採用ではなく、半年ほど部下2名と教育部門の立ち上げを進めました。年が替わる前後に、採用の仕事も任されたと記憶しています。「1000名採用します」と言って入社した人間ですから、いつか採用をやるだろうとは予想していましたね。

ただ会社としては、会社になじむかどうかを最初の半年間で見極めたかったのだと思います。採用を任されて以降は、2018年に執行役員、2019年に取締役、そして2024年に取締役社長に就任しました。

ーー新卒の採用目標を7年連続で達成し、規模を800名から5000名に拡大できた要因は何ですか?

秋間剛:
「採用は営業である」というスタンスを貫いた結果だと思います。採用とは、会社という場を提案し、その人の人生(の時間)を託してもらう責任ある仕事です。採用担当には「営業をしなさい」と言い続けています。この意味での「営業」は簡単ではありません。

学生や求職者から応募があると、ついつい「人を見極めて合否を出す立場」に自分を特別な人間だと勘違いしてしまう人をたくさん見てきました。そうではなく、採用とは営業であり、人生を預けてもらう仕事だというスタンスが大切なのです。

ただしそのスタンスを貫いたとしても、自分より優秀な人を正当に評価し、採用するのは簡単ではありません。そのため社員にも、「とにかく自分を磨き、自分の採用できる人材の範囲を広げることが大切」だと繰り返し伝えています。これによって、採用数は自然と増えていくと信じているからです。そして、私の言葉を信じて採用担当者が一生懸命頑張ってくれたからこそ、良い結果が出せたのだと思います。

セールスプロモーションをはじめ、「人」を軸にした幅広い事業を展開

ーー改めて、貴社の事業内容を教えてください。

秋間剛:
弊社はセールスプロモーションをはじめとして、アウトソーシング、エデュケーション、エンターテインメントと幅広い事業を展開しています。メインの事業は売上の9割以上を占めるセールスプロモーション、アウトソーシングといった人材サービスです。

以前は携帯電話、ルーターなどの通信機器の販売促進が案件の95%を占めていましたが、コロナ禍以降は55%に下がっています。代わって比率を伸ばしているのが、ホテル・空港などのツーリズム、コンタクトセンター、ITソリューションなどの分野です。

次に力を入れているのがエデュケーションで、専門学校、通信制高校の学習サポート校、日本語学校などの教育事業を展開しています。学習サポート校とは、通信制高校を3年間で卒業するためのサポートを目的として、民間企業が提供する教育施設のことです。現在弊社は北海道から沖縄まで全国8校を運営し、生徒一人ひとりの「個」のニーズに応じたきめ細かい教育を行っています。

最後はエンターテインメントです。「人」のハブになるような場所をつくるという目的で、渋谷のイベントスペース、新宿の小劇場、宮城県にある子ども向け職業体験施設の運営などを行っています。弊社の認知度を上げるために数千万円の広告費をかけるよりも、「来場された方々の記憶に残るような空間づくりに投資したい」、エンターテインメントにはそんな思いを込めました。いずれも「人」を軸にした事業展開になっています。

やりたいことが見つかっていない人ほど面白く感じられる会社

ーー貴社の強みを教えてください。

秋間剛:
採用力と営業力ですね。「採用は営業である」というスタンスで応募者に向き合い、毎年4月に800〜1,200名の新卒を揃えられる採用力と、新卒全員の配属先を用意できる営業力。弊社のベースにはこれらの強みがあります。

そして、入社する人たちにとって、チャレンジできる場所がたくさんあることが弊社のメリットです。先ほどお伝えしたように、弊社は幅広い事業を展開しています。メインのセールスプロモーションやアウトソーシングにおいても案件は多分野に拡大中です。

すでにやりたいことが見つかっている人は、希望を叶えられる会社に出合えるでしょう。やりたいことが見つかっていない人は、特定の事業を行う会社に入ることを不安に感じていると思います。しかし、事業を多角化している弊社であればその不安はなく、むしろ面白いと感じられるはずです。

実際、毎年多くの社員が異動し、新しい部署でチャレンジしながらやりたいことを見つけていますよ。弊社だからこそ、そのような環境を提供できるのです。

今後のテーマは新規販路の拡大、営業体制の強化、海外人材の活用

ーー今後注力していきたいテーマを教えてください。

秋間剛:
いくつかありますが、まずは新規の販路開拓です。弊社は労働集約型で人を抱えている会社ですから、人材不足の業界にどんどん販路を広げていきたいと考えています。具体的には空港、IT、建築などの業界に販路を広げている最中です。

次に営業部門の体制をさらに強化したいと考えています。仕組みはすでに整っており、誰もが一定の成果を出せる環境が整っています。しかし今後は、より積極的に新規の販路を開拓する姿勢を育てていく必要があると感じています。

新規開拓で大切なのは、獲得した案件に人を当てはめるのではなく、現場で働く人たちのキャリアを考えて案件を獲得することです。たとえば産休・育休明けの人たち向けに時短勤務ができる仕事を確保する。外国籍の人たち向けに、受け入れ体制が整っている案件を獲得する。このようなマインドを磨いてもらうための働きかけが必要でしょう。

ーー具体的にどのような働きかけをお考えですか。

秋間剛:
端的にいえば、報奨制度を整えていこうと考えています。現行の評価制度では、成果によって役職が上がることはありますが、給与や賞与が大きく変わることはありません。そこで新規販路の開拓で成果を出した営業には、報奨制度によって給与や賞与に反映できるように動いているところです。

ーー海外展開についてもお聞かせください。

秋間剛:
中国や東南アジアの特定技能人材を活用できる仕組みをつくっていく予定です。面接は、こちらの話が伝わっているかどうか、オンラインではわかりにくいため、現地での対面を優先しています。次に入国前に日本語の研修を、入国後には自国文化との違いを教える研修を行います。なお、弊社の内定者がスリランカの学生にオンラインで日本語を教えるボランティア活動を行う予定です。

ただし特定技能人材は派遣ができませんから、弊社で雇用するのではなくさまざまなお客さまに「紹介する」という形をとっていく予定です。入国の際に住まいや携帯電話などを弊社から提供し、紹介後は月々の管理費用をいただいてマネタイズする、そんなモデルをしっかり構築していきたいですね。

主体的に動く人に「やっていいよ」と言ってあげられる存在でありたい

ーー最後に、秋間社長が仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

秋間剛:
自分の未来に投資するために、自分の欲には素直に従う、ということでしょうか。1000名採用というチャレンジをしてみたい。新宿に小劇場をつくったことはないけれど、誰もやらないのであれば自分がやってみたい。いずれも成功すれば履歴書に書けるので面白いですよね。

このように考えられるのは、「失敗しても居場所がなくなりはしない」と思わせてくれる弊社の風土のおかげです。ですから私も、社員やこれから入ってくる人が主体的に「これをやりたい」と言ってきたら、「やっていいよ」と言ってあげられる存在でありたいと考えています。その結果、さまざまなことにチャレンジしたい人に集まってもらえたら嬉しいです。

編集後記

人と会社の良い関係づくりにこだわり、キャリアを積み重ねてきた秋間氏。今回のインタビューを通じて、どんなに会社の規模が拡大してもそこで働く人々への温かい視線を失わず、また社長というポジションにあぐらをかくことなくチャレンジを続ける姿勢が、同社の原動力になっていると感じた。今後も「人」を軸に国内外でさまざまな事業を展開する株式会社マーキュリーの成長に期待したい。

秋間剛/1975年神奈川県生まれ。1997年に住宅メーカーの施工管理としてキャリアをスタート。その後、資産運用の営業を経て、人材・教育・IT分野でマネジメントを経験する。2016年5月に株式会社マーキュリーに入社。新卒採用目標を7年連続で達成し、従業員数800名規模だった会社を5000名超へと拡大させる。2024年5月に取締役社長に就任。