※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

創業から長きにわたり、京都で愛されるお店を営んできたロマンライフ。洋菓子のみならず、飲食事業や物販事業にも取り組んでいる。そんなロマンライフの舵取りを担うのが、代表取締役社長兼COOの河内優太朗氏だ。今回、家業を継ぐまでの道のりや事業への思い、そして今後のビジョンについて話を聞いた。

銀行勤務で見た経営者の姿をきっかけに、事業を継ぐことを決意

ーー入社した経緯を教えてください。

河内優太朗:
ロマンライフは祖父が創業した会社で、私が入社する前から家族の一員としてロマンライフを見てきましたが、学生時代、家業を継ぐ意識は全くありませんでした。父から「継いでほしい」と言われたこともなかったと思います。

経営に強い興味があったわけではないですが、大学では商学部で経営学を学び、その中で、身近な存在だった中小企業の経営に興味を持ちました。その流れで、就職先は大企業であるメガバンクではなく、地域に根差した地方銀行を選びました。

銀行で法人営業を担当してたくさんの経営者の方からお話を伺いました。そして分かったのは、どの経営者も苦労されているということです。当時、私が担当していたお取引先にケーキ屋を営んでいるご夫婦がいらしたのですが、お話を伺うとやはり経営で苦労されている。その姿に両親を重ね、「手伝わないと親不孝になる」と感じ、家業を継ぐことを決意しました。

「京都の洋菓子店」へのこだわりとは

ーー現在の事業について教えてください。

河内優太朗:
弊社は大きく分けて洋菓子製造小売業と飲食店事業の2つの事業があります。

洋菓子製造小売業である「マールブランシュ」というブランドでは、洋菓子店でありながら京都の誇りを胸に、「京都クオリティ」というコンセプトを掲げ、オンリーワンの洋菓子店を目指しています。

飲食店事業では鶏料理をメインとした飲食店事業「侘家古暦堂(わびやこれきどう)」を展開。また、最近では、新業態として料理店発の洋菓子ブランド「菓子wabiya(カシワビヤ)」を2025年4月、大阪髙島屋に全国初出店いたしました。

飲食店事業に関して、今後は飲食の提供にとどまらず、レシピから誕生した調味料やスパイスの商品化、料理からヒントを得たお菓子の開発など、飲食を核として新たな事業展開を準備している段階です。

ーー貴社の強みはどのようなものでしょうか。

河内優太朗:
弊社の強みは、まず、“京都の洋菓子店”というブランディングと、その根底にある明確なコンセプトです。京都らしい装いをするだけでなく、この街が持つ文化や歴史、伝統、習慣も商品に落とし込み、深みのある商品を提供することにこだわっています。

また、手前味噌ですが、品質へ強いこだわりを持っています。私が入社した初日の仕事は一口サイズのカステラの品質チェックでした。1日何万個も製造する一口カステラをひとつずつ厳しくチェックし、少しの型崩れやへこみがあるものも全てロスにしていたのです。

パティシエだけではなく、社歴の浅い若手の社員やパートまですべてのスタッフが品質管理に対して高い意識を持っている姿に衝撃を受けたことを、今でも覚えています。

お客様も社員も大切にする事業を目指して

ーー今後のビジョンはどのようにお考えでしょうか。

河内優太朗:
弊社には2つのビジョンがあります。1つ目は「大家族主義」を掲げ、働きがいと成長の場である“父性”と、安心して長く働ける“母性”を両立させた環境を整えることに注力しています。待遇面では業界トップクラス、または平均より10〜15%高い水準を目指します。

成長の場として、接客部門や製造部門それぞれでコンテストを実施しています。接客であれば、お客様役と出場者がそこで接客のロープレをして、社長や会長、経営幹部がそれを見ながら採点をする。製造部門のコンテストで優勝したケーキは改良を加えて、実際に販売したりもしています。

安心して働ける環境づくりの面では、子育て中の女性社員が多いことから、託児所を設置。これは、会社の制度というより、社員自身が主体となって「安心して出産し、職場に復帰しやすい環境」を実現できる環境を作ってくれているという感じです。

2つ目のビジョンは、事業の多角化です。今後10年程度で5つの事業への拡大を計画し、その中で3つの柱を確立します。現在展開している洋菓子と飲食に新たな事業として加えたいのが、紅茶事業です。「京都で紅茶?」と思われるかもしれませんが、紅茶に京都の要素を融合させることで、新たなブランド価値の創造に挑戦したいと考えています。

ーー今後、どのような人材を求めていますか。

河内優太朗:
事業拡大を実現するには、それを担う“人財”育成も重要な課題です。次世代を担う人財には、リーダー意欲やチャレンジし続ける気持ちがあることを求めています。さらに言えば、他者の喜びを自分の喜びのように感じられる利他の精神がある人。私たちはサービス業ですし、大家族を目指していますので、そういった方とぜひ出会いたいです。

ーー海外での事業展開や、今後目指すところについて教えてください。

河内優太朗:
当面の目標としては、原点回帰して地元密着を強化する予定です。「マールブランシュ」成功の大きな要因は、京都を連想できる「茶の菓」という代表商品を生むことができたことです。このブランドがあることで京都という観光マーケットに参入でき、京都を代表する洋菓子として認知を広げることができました。ですので、京都の地でさらなる発展を目指します。

京都の方々にとって、日常的に足を運びたくなるブランド、地域に愛される町のお店を目指したいですね。

編集後記

京都クオリティーを守りつつ、新しい事業に挑戦し続ける河内氏。その背景には「お客様に喜んでいただきたい」という思いを強く感じる。事業経営だけでなく製造現場を経験した河内氏から、伝統を守りながらも変化を恐れずに挑戦することを学ぶことができた。

河内優太朗/1984年生まれ。2007年、同志社大学商学部卒業後、銀行で法人営業を担当。その後、某上場企業の総務法務部勤務。2010年、ロマンライフに入社し、製造部門やマールブランシュ京都北山本店の現場業務に従事。2018年に常務取締役となり、2020年オープンのロマンの森の事業計画の中心人物として奮起。2023年より代表取締役社長兼COOに就任し、現在に至る。