※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

中古車部品を世界に輸出する、オートトレーディングロック。高品質な日本の中古車・中古車部品は海外でも高い需要があるが、この分野にいち早く目をつけ、会社を成長させてきた。

同社は、特にドミニカ共和国とトリニダード・トバゴ共和国での強固な販売ネットワークを強みとしている。中南米のニッチな国々でシェアを広げる同社の事業とは、一体どのようなものなのか。代表取締役の岩﨑貴裕氏に詳しい話を聞いた。

背水の陣で3000万円の融資を受け、新事業で会社を再起

ーー創業から現在に至るまで、特に印象に残っているエピソードを聞かせてください。

岩﨑貴裕:
これまでの間で特に印象深いのは、法人2期目に起きたリーマンショックの影響で車体が全く売れなくなり、会社の資金が尽きそうになったことです。しかも、その当時は妻の妊娠に加えて、父と母が癌になるなど、会社経営どころではありませんでした。

ひとまず銀行から1000万円を借りて、不足分を穴埋めすることも考えましたが、思い切って3000万円の融資を受けることを決意。3000万円という大きな融資を受けたのは、できるだけのことをして、どうしても事業を成功させたかったからです。

思い切って前へ進んでみようと思い、覚悟を決めて当初予定していた融資金額の3倍である3000万円を借りて、新たに自動車の中古部品の輸出事業を始めました。「絶対に成功させる」という強い意思もあり、中古車部品の輸出事業は軌道に乗り、結果として会社を復活させることができました。

ーー社長として、今までどのような価値観や信念で会社を経営してきましたか。

岩﨑貴裕:
「ゴールを決めてやりきれば、なんとかなる」と自分を信じて突き進むことを大切にしてきました。特にリーマンショックで大変な時期は強く意識していました。

また、会社を経営できるのは社員がいるからこそです。そのため、社員など周りの人との「和」を大切にすることを常に意識し、社員たちが働きやすい環境を整えています。その結果、社員たちは本来の実力を発揮できているのではないかと感じています。

それぞれの国の特性を掴んだビジネス展開で事業を拡大

ーー事業の内容や特徴や強みについて聞かせてください。

岩﨑貴裕:
弊社は中古車部品専門に輸出している会社で、特に中古車部品に関しては中南米でのシェアが高いことが特徴です。

日本企業の中には、中南米と直接取引をしたいけれど、お金の回収などに不安を感じているところが少なくありません。弊社はそういった日本企業と中南米の企業の間に入り、取引を円滑化する事業を手がけています。

また、大企業では対応が困難な、一社ごとのリクエストに応じた商品を供給できるなど、規模の小さな組織ならではの柔軟性を活かし、顧客満足度を100%にできるよう努力しています。

そして弊社の強みは、国ごとの特性を上手く掴んだうえでビジネスを展開している点です。

たとえば日本企業の中には、「競合他社と付き合いがある商社とは取引したくない」という会社も少なくありません。一方、ボリビアの会社の場合、競合他社とも付き合いがある商社のほうが信頼されやすく、むしろ「ライバル会社と付き合いがあるなら、うちとも取引してほしい」と言ってくださるケースが多いです。そのため、会社ごとにアプローチ方法を変え、競合他社と付き合いがあることをアピールしたほうが取引が上手くいく傾向にあります。

また、ニッチな市場でシェアを広げてきた点も強みです。大企業の場合、大きな売上が見込める可能性が低いニッチ市場に参入しようとは思わないですから。実際に、弊社が高いシェアを誇るドミニカ共和国とトリニダード・トバゴ共和国は市場がさほど大きくないため、大企業がほとんど参入しておらず、結果として大企業と競うことなく売上を伸ばしています。

ーー人材への考えを聞かせてください。

岩﨑貴裕:
特に求めているのは、双方が満足できる取引を締結する技術を持っている人材です。弊社の仕事は、買いたい人と売りたい人の間に入って仲を取り持つことですが、両者が100%満足したうえで契約に至るケースは多くはありません。

そのため、たとえ100%でなくてもお互いが満足し、折り合いをつけられる点を見つけ、白黒つけずにクローズする技術が必要となります。

将来の展望は「飛行機のリサイクルができる商社」になること

ーー最後に、今後の展望を聞かせてください。

岩﨑貴裕:
今後挑戦したいことの1つが、飛行機業界でのリサイクル事業の立ち上げです。

現在、飛行場の業務で使われているいわゆる『空港ではたらく車』を海外に輸出する事業を進めており、すでに仕入れルートも確立しつつあります。実際に昨年は、飛行機に電源を供給するためのトラックをスリナムという国に販売しました。今後、この事業にさらに力を入れて、海外のリース会社にどんどん車を販売していく予定です。

この分野のビジネスはまだまだライバルが少ないですし、ゆくゆくははたらく車だけでなく、飛行機そのものをリサイクルできる商社になりたいと思っています。

編集後記

大企業が目を付けない市場に焦点を定め、独自の戦略で会社を成長させてきたオートトレーディング。そんな同社を率いる岩崎社長は今、「飛行機をリサイクルできる商社」という大きな夢を掲げて前へ進んでいる。岩崎社長がこの夢を叶え、飛行機業界を大きく変える日がくるのが楽しみだ。

岩﨑貴裕/1977年、東京都出身。2000年に日本大学卒業後、1年半のサラリーマン生活を送り独立。3年間の個人事業経験を経て、有限会社オートトレーディングロックを設立。