※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

食品工場の自動化ソリューション事業や生産管理スキルUPの教育事業を展開するRobots Town株式会社。同社が運営する「FOOD TOWN(フードタウン)」は人手不足に悩む工場と機械メーカーをマッチングし、丁寧なヒアリングやAIを駆使した製品検索で最適な機械を提案している。2025年からは、「FOOD INNOVATOR(フードイノベーター)」というオンライン情報誌サービスや「食品プロジェクトマネージメント検定」も展開。機械化と人材育成の両輪で食品工場を支援する同社の代表取締役社長、白坂紳滋氏に話を聞いた。

新工場を立ち上げる際に直面した製造現場が抱える課題

ーー起業前のキャリアについて教えてください。

白坂紳滋:
高校卒業後、江崎グリコ株式会社に入社しました。人と話すのが好きだったので営業職を志望していましたが、配属されたのは工場部でした。そこではお菓子の製造ラインを担当し、機械トラブルへの対応やパートさんの管理、新しい製造ラインの立ち上げなどを経験しました。

その後、キャリアアップを求めて、B-R サーティワン アイスクリーム株式会社に転職し、新工場立ち上げという大きなプロジェクトを任されました。何もない状態から工場をつくり上げる中で、アイスクリームの製造ラインだけではなく、ボイラーや冷凍機などの外部設備など、工場全体の構築に関わることができました。このとき、特に自動化や省人化を意識して工場づくりに取り組んだことが、現在の事業に活きています。

ーーどのようなきっかけで起業へ至ったのでしょうか?

白坂紳滋:
サーティワンでの経験が大きなきっかけです。工場の立ち上げを進める中で、自動化や省人化に取り組もうとしても協力してくれる外部のパートナーがなかなか見つからないという現実に直面しました。そこで、「人手不足に悩む企業に寄り添い、課題を解決したい」という思いが芽生えました。

そして、自分自身が工場で働いてきた経験を活かし、技術で現場の負担を減らすという理想を形にするため、起業することを決意しました。

機械化と人材育成の両輪で推進する食品業界の変革

ーー貴社の事業内容について教えてください。

白坂紳滋:
弊社は、食品工場が抱える課題を解決するためのサービスを提供しています。

その中核となるのが「FOOD TOWN」というプラットフォームです。課題を抱える工場とその解決策を提供できる機械メーカーをつなぐ役割を担っています。AIを活用した製品検索機能も備えており、1万1500商品以上の製品から最適な機械を簡単に見つけることができるのが特徴です。

また、2025年4月からは「FOOD INNOVATOR」というオンライン情報誌サービスを開始しました。ここでは現場の方々の意識改革を促進するべく、食品業界の最新情報や経営者インタビューを展開しています。また、それ以外にも、古くなった機械や機械導入後のメンテナンスサービスや自社のエンジニアを育成する保全技能士教育キットも盛り込まれています。

さらに、食品工場で働く方々のスキルアップを支援するため、農林水産省と連携して「食品プロジェクトマネージメント検定」という試験もスタートさせました。機械の導入だけでなく、人材育成まで含めた総合的なアプローチで、食品業界全体の底上げを目指しています。

ーー貴社ならではの強みはどういったものですか?

白坂紳滋:
最大の強みは、社内には私と同じように現場経験を持つ社員が多数いるため、理論だけでなく実践的な課題解決ができることです。顧客の立場に立ち、お客様がどんな課題を抱え、何を実現したいのか。本質的なニーズを丁寧にヒアリングし、最適な解決策を提案しています。

人のためになるサービスを追求し、明るい未来を目指す

ーー経営者として大切にしていることは何ですか?

白坂紳滋:
お金儲けのためではなく、人のためになるサービスをつくることを最も大切にしています。売上や利益ももちろん重要ですが、それ以上に多くの方に使ってもらえる価値あるサービスを生み出すことを優先しています。

加えて、「社員、パートナー企業、お客様」という優先順位も重視しています。創業時はお客様を最優先にしていましたが、社員が充実して働ける環境があり、良いパートナー企業と協力できてこそ、お客様が満足するサービスを生み出せると気づいてからは、この順番を守ることが事業成功のカギだと確信しています。

ーー今後の展望について教えてください。

白坂紳滋:
3年後には新規事業を複数立ち上げ、10年後には100億企業になるという数字上の目標もありますが、私にとって大切なのは売上や利益といった数字よりも、「どれだけの企業の問題を解決できたか」という点です。課題解決という本質的な価値を追求すれば、その結果として経済的な成功は自然とついてくるでしょう。この考え方を胸に、食品工場の未来を明るく変えていくサービスを次々と生み出していきたいと思います。

編集後記

白坂社長の語る「課題解決数」を重視する経営姿勢が印象的だ。売上や利益といった指標よりも、「どれだけの課題を解決できたか」を成功の物差しとする考え方は、事業の本質を見失わないための羅針盤のように思える。現場経験から生まれた実践的な視点と、社会課題に誠実に向き合う姿勢が、同社の成長を支える原動力となっていることがひしひしと伝わってきた。

白坂紳滋/2008年、江崎グリコ株式会社に入社し、製造ラインのエンジニアとして勤務。2015年、B-Rサーティワンアイスクリーム株式会社に転職し、新工場の立ち上げを担当。2021年、Robots Town株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。同年、立命館大学副事務局長、および一般社団法人i-RooBO Network Forumオープンテクノロジーセンター長にも就任。