
コンビニやスーパー、飲食店などの工事のマネジメントを手がける株式会社SRM。同社は内装工事や設備導入、メンテナンスまで、複数の関係者との調整を担い、少人数で年間6,000件以上の案件をこなす効率的な事業モデルを確立している。顧客のニーズを読み解きながら店舗づくりをサポートする同社代表取締役CEOの金子皓一氏に話をうかがった。
前職の変化を好機と捉え、自身のやり方で挑戦すべく起業を決意
ーー金子社長のこれまでの経歴を教えてください。
金子皓一:
高校卒業後、コンビニやスーパーなど商業施設工事を扱う会社へ入社したのが私のキャリアの始まりでした。もともとはエンジニア志望で入社しましたが、営業に楽しさを見出し、熱心に取り組んでいましたね。
横浜支店で経験を積み、21歳のときには自ら志願して金沢支店の立ち上げを担当しました。その後、名古屋の支店を経て大手コンビニチェーン本部に出向する機会に恵まれたのです。出向先では、物件開発から経営者募集までの一連の流れを経験し、約100店舗以上の出店に関わりましたね。
この出向で、上場企業の仕組みや内部の意思決定プロセスを学べたことは非常に貴重な経験でした。また、客観的に自社を見る目も養うことができたと感じており、独立後の経営に大いに役立っています。
ーー独立を決意したきっかけをお聞かせください。
金子皓一:
独立のきっかけは前職の状況の変化です。前職の創業者は1代で売上100億以上の大きな会社を築き上げた素晴らしい方で、私はその方のことを大変尊敬していました。しかし、あるときその方が高齢を理由に株式を一部上場企業に売却することとなったのです。会社の経営体制が変わるという転機を迎え、勤続21年を経て「これまで学んだことを自分のやり方で実践してみたい」という思いが湧き上がり、弊社の設立に至りました。
顧客のニーズを読み解き、確かなマネジメント力で応える

ーー貴社の事業内容について教えてください。
金子皓一:
弊社の主な事業は、コンビニを中心とした店舗の工事のマネジメントです。具体的には、さまざまな関係者の間に立ち、店舗改装や一斉機器の導入に加え、店舗クローズなどがスムーズに進むよう、プロジェクト全体を管理する役割を担っています。
コンビニは現在、全国に5万5千店舗以上あり、社会インフラの一つとして機能しているといえるでしょう。
私たちはそのインフラを支えるという使命感を持って日々の業務に取り組んでいます。少数精鋭体制ながら大手及び準大手との直接取引にこだわり、メンテナンスなども含めて年間で6000〜7000件もの案件に対応しています。
ーーなぜ直接取引にこだわっているのでしょうか?
金子皓一:
お客様のニーズが見えなくなることを防ぐためです。間接的なコミュニケーションでは、お客様が本当に求めていることや細かいニュアンスが伝わりにくくなってしまいます。私たちが選ばれる企業になるためには、お客様が求めていることを読み解きながら、それ以上の価値を提供できるよう努力することが大切だと考えています。
また、経営の安定性という観点からも直接取引は重要です。下請けの場合、元請け企業の経営状態が悪化した場合、私たちも影響を受けるリスクがあるのです。こうした理由から、創業時より経営基盤がしっかりとした企業との直接取引にこだわり、安定した事業運営を実現してきました。
自ら考え挑戦する意欲的な人材とともに、さらなる成長を目指す

ーー組織づくりにおいては、どのようなことに注力していますか?
金子皓一:
定期的な会議や社員旅行などを通じて、活発なコミュニケーションができる組織づくりを心がけています。社員旅行は全員参加を基本としており、昨年は沖縄へ行きました。しかし、旅行はハードルが高いと感じる社員もいるでしょうから、旅行には行かずに美味しい食事を楽しむグループを別に設けるなど、無理なく交流できる環境づくりにも配慮しています。

ーー今後の展望についてお聞かせください。
金子皓一:
今後は現在のマネジメント事業を主軸としながら、事業の多角化を進めていきます。現在は訪問看護事業を第2の柱として育てているところです。この訪問看護は6年ほど前から展開しており、すでに50人以上の規模にまで成長しました。シルバー産業は今後も需要が高まる分野ですので、第3、第4の柱も構築して安定した成長を目指したいと考えています。
このビジョンを実現するために、特に力を入れたいのが採用活動です。社員の平均年齢が40歳前後であることを考えると、未来を見据えて20〜30代の方々を積極的に迎え入れていくことが重要だと考えています。言われたことをただこなすだけでなく、自ら考え、挑戦したいと思う方はぜひ弊社をご検討いただければ幸いです。ともに成長していける仲間との出会いを楽しみにしています。
編集後記
膨大な数の案件を少人数で対応するSRMの業務効率の高さもさることながら、「与えられた仕事をこなすだけでなく、その先の価値を提供する」という姿勢に真のプロフェッショナリズムを感じさせられた。金子社長が語る「顧客ニーズを読み解く力」は、多重下請け構造が一般的な建設業界において差別化の源泉となっている。直接取引にこだわる背景には、顧客に正面から向き合い続けたいという誠実な思いが垣間見えた。

金子皓一/1973年、神奈川県生まれ。神奈川県立商工高校卒業、グロービス経営大学院(単科)。1992年、中堅商業施設工事会社に入社。横浜、金沢、名古屋の3拠点の支店を経験したほか、大手コンビニ本部への出向8年以上経験も持つ。2013年に株式会社SRMを創業。現在は東京、名古屋、大阪、博多に拠点を展開している。他、関連会社(不動産、医療など)。