
再生可能エネルギー事業を通じ、脱炭素社会の実現に貢献しているMIRARTHエナジーソリューションズ株式会社。
発電所用地の開発から保守点検まで一貫して手がけている同社は、カンボジアでカシューナッツ工場の設立・運営など、国を超えた社会貢献をしている。
そんな同社を牽引するのは、ソフトバンクグループで社長や会長を勤めてから、代表取締役に就任した谷口健太郎氏だ。同氏に、社長就任時のエピソードや、事業で目指す未来、今後の展望などを聞いた。
評価制度の見直しなどを通して、社員のマインドを変えることからスタートした
ーー社長就任後に苦労したことなど、印象的だったことを教えてください。
谷口健太郎:
大変だったこととして、社員の意識改革が印象に残っています。もともと私はソフトバンクグループでITベンチャー的なマネジメントをしていたのですが、その後に入った当社は役所的な風土が強く、今まで自分が触れてきた考え方とは大きく違うことに驚きました。
たとえば前職ではミッションを達成したかどうかで給料が決まるのに対し、当社は会社にいた時間に対して給料が決まるといった評価制度だったのです。評価軸そのものが今までとは大きく異なり、社員たちにマインドを変えてもらうことが非常に大変でした。
ーーその課題に対し、具体的にどのような取り組みを行ってきましたか。
谷口健太郎:
ミッションを達成したかどうかによってボーナスの額を決めるなど、評価軸を明確にするところから着手しました。また、毎月アンケートを実施することで会社の課題を伝えてもらい、1つずつ改善していったのも大きな取り組みの1つです。
アンケートはネガティブな内容が8割ほどでしたが、これから会社が目指す方向を絵で描いて社員たちに説明するなど、社内の統一を地道に行ってきました。
また、フリーアドレス制を採用することで、帰宅する前にデスクの上に何も置かないようにして、デスクを綺麗に使う意識を醸成したり、フレックス制や在宅ワークを導入することで、自分自身で時間管理力と共に自分のミッションを意識する力を身につけてもらったりと、社員たちに自立や生産性の意識を持ってもらうような取り組みも行ってきました。
サステナブルな環境づくりの一環として、カンボジアにカシューナッツ加工工場を設立

ーー事業内容を教えてください。
谷口健太郎:
当社は、太陽光やバイオマスなどの再生可能エネルギーの発電所をつくって運営している会社です。「サステナブルな環境をデザインする⼒で、⼈と地球の未来を幸せにする。」をグループの存在意義として掲げ、発電所の運営以外の取り組みも展開しています。たとえばその1つが、カンボジアでのカシューナッツ加工工場の運営です。
カンボジアは世界有数のカシューナッツ生産国ですが、殻を剥く加工工場が国内に普及していないため、ベトナムに輸出して現地の工場で加工されている現状があります。
カンボジアで加工できれば、自分たちで商品の付加価値を上げることができ、GDPも上がり、現地の人々がベトナムに出稼ぎに行く必要もなくなります。そこで、当社ではこの現状を改善するため、カンボジアに加工工場をつくり、運営することにしました。
また、カシューナッツの殻が持つエネルギーを活用し、バイオマス発電を進めることも計画しています。
工場でカシューナッツを加工し、雇用を生み、GDPが上がり、さらに発電もできる。このサイクルを通して、カンボジアのサステナブルな環境をデザインしようと取り組んでいるところです。
不動産事業とエネルギー事業を主軸として、世の中に貢献できる会社を目指す
ーー貴社で働く方にはどのようなことを求めていますか。
谷口健太郎:
最も求めているのが、素直で前向きで一生懸命なことです。素直な人は必ず成長するので、その上で、一生懸命に取り組める人と一緒に働きたいですね。
特に社会人経験がない新卒は素直で、前向きで、一生懸命な傾向があり、入社すると良い風を吹かせてくれます。より良い社風をつくるという意味でも、中途だけでなく、新卒の採用も進めていきたいと思っています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
谷口健太郎:
当社は発電所の運営を行っていますが、新しいチャレンジとして今後は電力小売業者を間に入れず、自分たちで電力を売るところまで対応できるようにしていく方針です。
また現在、不動産事業の利益が約100億円、エネルギー事業全体の利益が約30億円ですが、エネルギー事業も利益60億円に持っていくことを大きな展望として掲げています。
最終的には不動産事業とエネルギー事業の2つを屋台骨として、世の中に役立つ会社を目指します。
編集後記
社員のマインドを変えるところから地道に取り組んできた谷口社長。当時は社内から否定的な声が聞こえることもあったそうだが、根底には社員を思う心があった。同氏の「会社の夢が叶うとき、社員たちの夢も叶っているようにしたい」という言葉からも、社員たちを大切に思うがゆえの取り組みであったことがうかがえる。
「サステナブルな環境をデザインする」という同社のミッションは、日本だけでなく、地球全体の未来を明るくするもの。再生可能エネルギーの活用に注目が集まっている今、同社が今後一体どのような事業を展開していくのか楽しみだ。

谷口健太郎/1961年広島県生まれ、早稲田大学理工学部卒業、同大学院修了。MIRARTHホールディングス傘下のMIRARTHエナジーソリューションズ株式会社代表取締役。日商岩井(現・双日)やソフトバンク勤務を経て、シーエムネット副社長、ディーコープ社長、会長を歴任。株式会社タカラレーベン社外取締役兼任。2022年にディーコープ会長を退任後、MIRARTHエナジーソリューションズ株式会社代表取締役に就任。2023年からは株式会社ルネサンス社外取締役も務める。