
株式会社セイトウはBtoBを中心に食器や調理道具、備品などをトータルで取り扱っている会社だ。同社は本社を構える静岡県磐田市の周辺を中心に、数多くの飲食店を顧客に持っている。
代表取締役会長の鈴木政義氏は、一代で会社を成長させ、現在はその価値をさらに高めるブランド力の向上に取り組んでいる。鈴木会長はどのように同社を育て上げ、どのような姿を目指して尽力しているのか。会社経営に込められた想いを聞いた。
父の遺言から起業を志し、25歳の若さで創業に踏み切る
ーー鈴木会長の経歴や貴社を立ち上げた経緯をお聞かせください。
鈴木政義:
私が起業を志したのは、中学2年生のときに父親が亡くなったことがきっかけです。父から遺言で「事業に挑戦してみろ」と言われ、この道に挑戦することを決めました。
それからは高校卒業後に修行を積むために商社に就職し、25歳で会社を立ち上げました。若くして起業に踏み切ったのは、知り合いから1000万円分の商品を出世払いで貸すので事業を始めてみないかと提案を受けたのがきっかけでした。突然のことに戸惑いましたが、このチャンスを逃す手はないと思い起業に踏み切りました。
当時は信用もお金もなく30坪のプレハブ倉庫から事業をスタートしました。決して良い環境とはいえませんが、それよりも自分で商売を始めた事実が本当に嬉しかったですね。
ーー貴社の成長に関してターニングポイントとなった出来事を教えてください。
鈴木政義:
今では社員数約70人にまで成長しましたが、ここにたどり着くまでには、いくつかの節目となる出来事がありました。中でも印象的だったのは、まだ数人で事業を回していた時期に弟が加わってくれたことです。小さな体制を支える戦力として、日々本当に精力的に動いてくれたのをよく覚えています。
もう一つの転機は、生協という強力な販路の獲得に成功したことです。定期的に大量注文が入るようになったことで、事業の安定性が飛躍的に高まりました。
こうした転機を通じて私が実感したのは、「訪れたチャンスには必ず向き合い、行動に移すことの大切さ」です。弟の申し出も、生協との出会いも、最初から成功が約束されていたわけではありません。ただ、それぞれの瞬間で真剣に判断し、一歩踏み出す決断をしたからこそ、今のセイトウがあるのだと思います。
ーー貴社を運営するにあたって、鈴木会長が大切にしていることは何でしょうか。
鈴木政義:
私は社員に「この会社に入社してよかった」と思ってもらえるような会社運営に取り組んでいます。
この考えは最初から持っていたわけではなく、会社の成長と共に磨かれてきたものです。創業当時は目の前の仕事に精一杯で、周囲にまで気を配る余裕がありませんでしたが、徐々に社員が増えて周りを見渡す余裕が出てくると、社員たちの人生の一部を背負う立場にあるのだという責任が芽生えてきたのです。
それ以来、会社が成長するほどに、社員たちが人生を楽しめるように、やりがいを感じられる環境をつくろうという思いが強くなっていきました。会社というのは、結局のところ人と人とが築く信頼の上に成り立っています。だからこそ、社員たちとのつながりは今後も変わらず大切にしていきたいですね。
豊富な品揃えと安定した販路で堅実に成長を続ける

ーー貴社の事業内容と独自の強みを教えてください。
鈴木政義:
弊社では主に業務用の食器や調理道具、家庭向けの調理用品や食卓用品、インテリア用品などの卸売・小売を行っています。約2万5000点という豊富な商品を取り扱っており、企業から個人まで幅広く商品を提供しています。
中でも売上の多くを占めているのが「生協」です。ここでは、組合員の暮らしに本当に役立つ商品を見極め、それに応えるオリジナル商品の開発に力を注いでいます。家事を楽にし、食事の時間をより楽しいものにすることを目指し、現場のニーズを反映した商品づくりに取り組んでいます。
また、飲食店や外食産業向けの食器や調理道具、消耗品などの提供も事業の大きな柱です。県内の飲食店を中心に展開しており、ハンバーグの有名チェーン店には、鉄板や食器などを一式納入しています。ほかの業態として、その店舗に必要な商品をワンストップで提案するサービスも行っています。
そして、最近注力しているのがECサイトでの小売り事業です。まだ4年目の新しい事業ですが、3年間で年間売上1億円という目標を立ててスタートし、今年は年間売上高が約1億を超えるまでになりました。ECには今後も成長を続けるポテンシャルがあると見込んでいます。
大切なのは人と人の「絆」仲間たちと力を合わせて目指す未来とは

ーー貴社の社風と活躍している方の特徴をお聞かせください。
鈴木政義:
弊社には人と人との絆を大切にして、社員同士が支え合うことで会社全体が成長していく社風が根付いています。
私もこの社風を大切にしており、悩みを抱えている社員がいれば、一人の人間として相談に乗るよう心がけています。10代で入社してくる社員がいる場合は、本人だけでなくご家族にも挨拶を行い、安心できる環境づくりに努めています。
また、社内には食器や調理器具に強い関心を持つ人材が多く、道具への思い入れを持ち、顧客のニーズとしっかり結びつける提案ができる人が、特に活躍していると感じますね。
弊社は調理関連アイテムを提案していくという業務なので、いかに相手に商品に興味を持ってもらえるかが成功のカギになります。相手の意図をしっかり組みながら商品の魅力を熱く語れる人こそが適した人材と言えるのではないでしょうか。
ーー今後、貴社をどのように成長させていきたいとお考えですか?
鈴木政義:
事業の大きな流れは今まで通り進めていき、それぞれの事業を一層ブラッシュアップしていければと考えています。
たとえば、生協で人気のオリジナル商品を別の通販会社にも提供したり、急成長中のECサイトをさらに強化したり、さらには既存商品を中国を中心とした海外市場へ売り込んだりといったことが考えられます。
また、卸売りに伴う価格競争のリスクを小さくするために、自社ブランド商品の開発にも力を入れ、新たな柱に育てていきたいところです。
このように、弊社は大きく成長する余地を残した状態にあります。そして、このチャンスを逃さず捕まえるには、今いる社員と、これから入社してくる次世代の皆さんの力が欠かせないでしょう。
弊社に興味を持ち、仲間になってくれる方には、一度きりの人生を本気で楽しむつもりで、主体的に仕事に取り組んでほしいと願っています。
「自分自身が会社の主人公だ」という意識を持って、日々の業務に向き合える方なら、きっとここで胸を張って働けるはずです。そんな思いに共感した方は、ぜひ一緒に新しい未来を築いていきましょう。
編集後記
鈴木会長が幼いころに志した挑戦は、見事に成長を遂げ、自社ブランド商品の開発という新たなフェーズに進もうとしている。生協やBtoB、そしてECと、顧客の声を得られる複数のチャネルを持つセイトウであれば、本当に必要とされる商品を生み出せるに違いない。その新たな一歩が同社をどんな未来へ導くのか、鈴木会長ならば訪れるチャンスをしっかりとつかむことだろう。

鈴木政義/1948年生まれ。静岡県磐田市出身。静岡県立袋井商業高等学校を卒業後、名古屋の商社に入社し修行を積む。その後、1973年に食器販売の会社を創業し、1981年に株式会社セイトウを設立する。