
株式会社アップルツリーは、太陽光発電事業から環境配慮型LED照明の製造、環境コンサルティングまで幅広く展開する企業だ。「環境」を軸に据え、持続可能な社会の実現に向けた事業を推進している同社の挑戦について、代表取締役社長の南谷幸男氏に話を聞いた。
震災を機に目覚めた環境への使命感
ーー貴社に入社する前は、どのようなご経験をしましたか?
南谷幸男:
学生時代から放送業界の裏方に興味があり、大学卒業後は、報道番組の編集業務をメインで請けていた映像制作会社に入社し、6年ほど映像編集に携わっていました。主に情報番組のニュース映像の編集を担当していましたが、次第に編集室で画面と向き合い続ける日々に物足りなさを感じるようになりました。
ーー貴社への入社を決めた経緯をお聞かせください。
南谷幸男:
映像編集の仕事を続けながらも、人と直接コミュニケーションをとれる仕事に挑戦したいという思いが強くなっていました。そのような中、2011年に東日本大震災が発生し、日本のエネルギー問題への対応や環境への配慮がより重要になると感じたのです。
環境ビジネスに携わることで社会に貢献できるのではないかと考えていたところ、弊社の求人を見つけました。創業間もない小さな会社でしたが、環境をテーマにした事業内容に共感し、営業職として入社。営業はまったくの未経験でしたが、新しい分野で自分を成長させたいという強い思いをもって入社したことを覚えています。
入社後はテレアポや営業活動に専念し、1年半で名古屋支店の責任者に抜擢されました。名古屋で5年間の経験を積んだ後、太陽光発電事業の本部長として東京に戻り、部門の責任者として事業の成長に尽力した結果、代表取締役に就任することとなりました。
「環境」を軸に展開する4つの事業

ーー貴社の事業内容について教えてください。
南谷幸男:
環境に関する4つの事業を展開しています。1つ目は創業以来行ってきた太陽光発電事業です。直接エンドユーザーに太陽光パネルを販売するのではなく、パートナー会社と協力し、彼らの営業活動を支援する形で取り組んでいます。
2つ目はライティング事業で、福島県喜多方市の自社工場で「メイドインジャパン」の高品質なLED照明をつくっています。
3つ目はGX推進事業です。ここでは中小企業向けの環境コンサルティングを提供しており、企業が環境にやさしい経営をするための支援を行っています。
そして4つ目がバリューソリューション事業で、太陽光パネルやLED照明の設置工事を手がけています。
ーー貴社ならではの強みはどのような点にありますか?
南谷幸男:
弊社の強みは、パートナー企業に寄り添った支援体制です。太陽光パネルの設計やレイアウト作業は専門知識が必要な難しい業務ですが、弊社にはこの部分に特化した20名ほどのチームがあります。専門的な領域を弊社が担うことで、パートナー企業が営業活動に専念できるようにしています。
また、福島県喜多方市の自社工場で製造するリユース可能なLED照明も強みと言えるでしょう。通常のLED照明は寿命を迎えると全体を交換しますが、弊社の製品は電源部分のみの交換が可能で、本体の約80%を再利用することができます。この環境配慮型の製品開発により、価格ではなく、価値という新たな軸で勝負できるようになりました。実際に大手企業からの引き合いも増えています。
国内工場の可能性を追求し、100億円企業へ

ーー今後はどのような部分に注力していく予定ですか?
南谷幸男:
まずは100億円の売上高をつくることに注力していきます。これは単なる数字の目標ではなく、社会的信用を獲得するための通過点と位置づけており、その実現に向けて、国内工場の活用に取り組んでいく予定です。福島県は再生可能エネルギーを推進している地域のため、そこに位置する弊社工場の可能性をさらに広げていきたいですね。現在はLED照明のみを製造していますが、ラインナップの拡充を検討しているところです。
ーー将来のビジョンをお聞かせください。
南谷幸男:
これからは環境配慮型の製品でなければ市場で受け入れられない時代が来ると予測しています。そうした時代では、製品のライフサイクル全体での二酸化炭素排出量を表示することが当たり前になるでしょう。いずれ到来するであろう時代に先駆けて、お客様に環境対応のメリットを実感していただけるサービスを提供することで、持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考えています。
編集後記
「価格ではなく価値で勝負する」という南谷社長の言葉が印象に残った。特にリユース可能なLED照明の開発は、環境を軸に事業を展開する同社の哲学の結晶と言えるだろう。環境配慮を付加価値にとどめず、ビジネスの中核に据えるアップルツリーは環境コンサルの会社として、これからの時代において、より一層の輝きを放つに違いない。

南谷幸男/大学卒業後、映像制作会社で映像編集に従事。2011年に株式会社アップルツリーに入社。名古屋支店の責任者、太陽光発電事業の本部長を経て、代表取締役社長に就任。